第111話 コンビネーション
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目の前の双子は、戦うには幼い容姿をしていた。
小学生と言われても納得できる姿と戦うことに躊躇いが生まれる清水。
「やっちゃっていいかな?ミル。」「まだ待とうよキク。」
横の小原は戦うことに積極的ではない。
宮武から借りている魔導具を使ってなんとか戦闘に参加できるくらいにはなっているが、戦力としては乏しい。
かと言って、清水本人も戦うスキルをようやく入手したばかりだ。
使い慣れていないことがどれだけの影響を与えるか言うまでもない。
「もう我慢できないから行くよミル。」「あの人達弱そうだねキク。」
双子はこちらが攻撃を仕掛けてこないことを見て、自分達の方から攻撃を開始した。
全くズレがなく並走して走る様子からコンビネーションの良さが窺える。
「「やっちゃえ!【双撃】!」」
上野と宮武が使っていた2人で1つの技を放つスキル。
2つの生命は完全な1つの個となる。
まだ何も準備ができていない清水達は、双子の連撃を喰らう以外に選択肢はなかった。
開始数秒にして全身はボロボロ。
戦いに不向きな2人で戦うのはまずかったかと反省している。
すぐさま小原に【回復魔法】を使い、傷を癒す。
「ほら、立って!あの双子に勝つよ!」
「で、でも、私戦うの向いてないし。」
「任せてよ!私が何とかして見せるから!」
清水にはまだ1つの策も思いついてはいなかった。
言葉に出して大丈夫だと言わないと不安が勝ってしまうと思ったから、自分にも小原にも言い聞かせるしかなかった。
その言葉を聞いて次に口を開いたのは小原ではなかった。
双子は清水の発言で舐められると確信して、憤りを感じていた。
「勝てると思ってるのかな?」「ありえないね!ありえないね!」
「ありえないってことはない!今度はこっちから攻撃するよ!【魔弾】!」
こちら側の数少ない攻撃手段の1つ。
エルフから受け継いだ意志を魔力に込めて放った。
大きさは直径1メートルにも及ぶ魔力の弾。
これがかなりの速さで襲ってくるのだから当たれば一撃で撃破も可能かもしれない。
「とろいね。」「遅いね。」
容姿から忘れてしまっていいたが、相手はA級冒険者。
数々の戦闘をこなしてきた双子にこれくらいの攻撃は簡単に避けられた。
「まだ!これでどうだぁーー!!!」
今度は闇雲に魔弾を連射する。
自分でも制御不可能な数多の攻撃が雨のように降り注ぐ。
それでも双子の表情に動揺は見られない。
「飽きてくるね。」「弱すぎるかもね。」
まるで、どこに攻撃が当たるのか分かっているかのように数ミリ単位で避けられる。
【魔弾】はこちらの主戦力になるスキルなのに避けられてしまっては打つ手がない。
「そろそろ終わりかな?」「そろそろ終わりだね!」
「「【水魔法】”アクアランス”」」
空に浮かぶ2本の槍。
透き通る水で出来た槍は、柔らかそうな見た目をしているが突き刺されば死は免れないだろう。
全てを投げ出してここから逃げるという選択肢が頭を過る。
時間を稼げば、他の5人のうち誰か1人が援護に駆けつけるかもしれない。
それまで生き延びれば勝ちは約束されたも同然と言える。
「わ、私だっていますから!えい!吹き飛ばしの札!」
誰もが双子に近付く小原の存在に気付いていなかった。
それは清水も例外じゃなかった。
いきなりの背後からの衝撃に魔法の維持が不安定になり、結果的に不発に終わる。
ピンチを救った大きな功績は意外な人物によるものだった。
彼女は戦う意志がない思い、戦力に数えていなかった。
私、1人で全て解決させるしかないと思っていた。
大きな間違いだったと認識させられる。
できれば戦いたくないのは本当かもしれない。
しかし、仲間のピンチを黙ってみるほど臆病でもなかった。
仲間が傷つくのは見たくないという気持ちが彼女を成長させる。
「ありがとう小原ちゃん!私、目が覚めた。勝とう2人で。」
1度頰を目一杯力を込めて叩く。
音で気付いて双子も小原も驚きの表情でこちらを見ている。
ヒリヒリと痛む。
この痛みは、迷いを振り解くためのもの。
戦うんだ。私もみんなの仲間として胸を張って歩けるように。
やっと出来た居場所を失わないように。
「気でも狂ったかな?」「元からかな?」
「「でも、飽きちゃったから終わらせちゃうね!【水魔法】”ポセイドン”」」
先程の攻撃とは比にならないほどの速さと威力の攻撃が清水を襲う。
当然、逃げることも防御する手段も持ち合わせていない清水は正面から魔法を受けてしまう。
お腹からは見えてはいけないはずの向こうの景色が見える。
「・・・【悪心】!【回復魔法】”リザレクト”」
優しさの奥に見える狂気。
彼女の悪は何を物語るのか。
「し、死んだはずだよね。」「い、生きてるよ。」
通常の【回復魔法】ではありえない芸当に戸惑いが隠せない。
そして、1番双子を困惑させるのは上野の表情だった。
死を体験したのにも関わらず、恍惚とした表情から動かない。
あの瞬間の余韻に浸っているようにも見える。
「幼いのにこんな力を持ってるなんてすごいね。次は、右手を捥ぐとか?左足を使えないようにするとか?ねぇねぇ?」
徐々に距離を詰める清水に双子は恐怖を覚える。
圧倒的に有利な立場に立っているのは、彼女達の方であるのに何故こうも恐れてしまうのか。
「近寄らないで!【水魔法】”アクアランス”」「嫌だ!来るな!【水魔法】”ウォーターウォール”」
双子のアイデンティティであるはずの息ぴったりな攻撃もままならない様子。
「痛い、痛いよ!でも、これが本気?もっともっと出来るよね!」
どれだけ傷を負おうとも回復量と速さが上回る。
それでも痛みを感じているので、常人であれば気が狂い阿鼻叫喚しているだろう。
攻撃を絶え間なく続けている双子の方が怯えているという異様な光景。
小原もこの空気に割って入る勇気はない。
「・・・恐怖は寝たら無くなるから。【愛の劇薬】」
覚醒した清水のスキルによって、簡単には目覚めない眠りにつく。
最後まで攻撃することなく無力化に成功する清水は、小原へ話かける。
「・・・ねぇ、私怖いかな。歪かな。」
「えっっと。あの。」
言葉に詰まる小原。
返事は貰えなかったがそれが答えなのだ。
自分でも自分の中に秘めている感情の異様さに気付いている。
けれど、それを他人に見せてまでここは勝たないといけなかった。
「こんなことを言うのは変かもしれませんが、綺麗でした。清水さんの心理が全面に表れていて。それでー、あの。うまくまとめられませんけど、とにかく私怖いとか思ってません!」
普段は大きな声など出したことがない小原がここまで大声で怖くないと主張している。
これを疑うことは小原を知っている人なら出来ないだろう。
気付けば小原の側へ駆け寄って何度も泣いていた。
この勝利の安堵からなのか、受け入れてもらって喜びなのかは分からない。
けれど、今はそんなこと考えてはいられないほど涙を流した。
時間にすればどれだけ泣いたのか分からない・
ただ覚えているのは、そっと近付いて寄り添ってくれる小原の体温が温かくて心地の良かったことだけは覚えている。
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