第110話 大人の在り方
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「おっさん、お前仲間指揮しているように見えたが強くないだろ。」
「あぁ。そうだな。実力が伴っていないのは確かだ。」
「じゃあ、でしゃばらないで欲しいけどな。いいや、どうせ数分も持たねぇーよ。廻る死・進化刀 五式 【紫毒蛇々】!」
生き物のように柔軟な動きを見せる刃。
その刃は柔を持って剛も制する。
剣で受けようものなら押し潰されそうになるほどの力でねじ伏せられる。
「距離にして10メートル前後が攻撃範囲か。」
「なかなか良い眼を持ってるみたいだな。大正解!でも、分かったからと言って倒せないぜ?」
相手は、俺よりも長くこっちの世界で命懸けの戦いを経験しているはずだ。
経験の差というのは簡単に埋まらない。
相手の攻撃をどう防ぐか考えるだけで精一杯だ。
距離を詰められないと後退してきたが、もうこの先はエルフの森。
約束を交わしてきた以上、ここから先に足を進めさせるわけにはいかない。
「使い慣れない剣を使うのはやめだ。俺も出し惜しみはしていられないな。」
腰のホルダーから一丁の拳銃を取り出す。
「それが俺の邪魔をした武器か。射撃隊はもっとでかいのを使っていたが、案外小さいんだな。」
「これを作るのにどれだけ労力を費やしたことか。オリジナル、つまりこれは世界に1つしかないもんだ。フェイクベレッタってところだな。」
「ところで銃だろうが、剣だろうが勝てるってことじゃねぇーんだぞ?」
「今は集中したい気分なんだ。少し喋りかけないでもらって良いか。」
「なら一生声が届かないところまで連れていってやるよ。【剣豪】”抜刀・蛇龍”」
進化刀をゆっくりと納刀する。
そこには無防備であるはずなのに誰も近付くことも出来ない威圧感がある。
次の瞬間に納刀されたはずの刀が刃の見える状態になっている。
誰も視認することは出来ない速さ。
人間が出来る芸当を優に超えている。
「この技はお前を喰らうまでどこまで追いかけるぞ。」
俺の予想していた攻撃範囲を軽く超えても迫り来る蛇の魂を宿した斬撃。
シャクの放った言葉が嘘だったのか真実だったのかは分からないが、どこへ逃げても追尾してくる。
ついに逃げられなくなった大城と激しい衝突音を鳴らす斬撃。
立ちこめる煙で何も情報は得られない。
「こんな虚しい勝利はいらないな。せめて攻撃の意思を見せて欲しかったもんだ。早くエイジオの助けに行ってやるか。」
確信した勝利があっけなさを覚えながらも仲間の援護へ行くために歩みを進める。
誰が見てもこの場の勝者は明らかなはずだった。
甲高い発砲音が3発。絶え間ないリズムで聞こえる。
何事かと思い振り返るシャクの肩に命中する。
痛みよりも先に誰が発砲したのかが気になった。
「ありえない。あれを喰らってまだ元気にしていられるとはな。」
「強者は強いが故の弱さを持っている。慢心、危機への疎さ、侮り。その痛みをもって知れ、強者の座を引きずり下される恐怖を。」
大城の周りを観察すると砕け散った氷の破片が散開しているが見える。
あの時に見えていた煙も氷を造りだした際に発生した冷気だったのか。
「その様子だと完全には防ぎきれていない様子だが、どうやって勝つつもりだ?」
シャクも肩にダメージを負ったが大城の被害はそれを上回る。
完全には斬撃を受け止めることができなったのか、左腕は複雑骨折。まともに何かを握ることもできない。
それどころか、激痛が走っているはずなので気絶せずに立っているのも精一杯なはずだ。
「痛みには慣れているからな。これくらいはハンデだ。」
「ハンデ?そういうのは圧倒的な力の差を持った者がやるもんだ。」
「圧倒的なまでの力か。これで満足か?【悪心】」
上野が使っていたスキル。
禍々しい邪気が全身を覆う。
何かを感じ取ったシャクが進化刀に手を掛ける。
銃を使っているということは、距離が必要であることをシャクは知っている。
だからこそ、自分の得意な距離を保たないと瞬時に決着が着くだろう。
「不正解だ。俺の得意な距離は0。拳と拳を交えることができる距離だ。」
攻撃のモーションに入る頃には大城が近付いている。
拳銃を持った拳が殴り掛かってくるのは見えたが、銃で撃たれた左側からの攻撃で反応が遅れる。
見事なまでのストレートがシャクの脳天を揺らす。
(何故だッ!スキルを使った攻撃じゃないはずなのに重く響く。ありえない!俺がこんな攻撃で!)
「痛いか?これで多くの犯罪者を気絶させてきたからな。意識があるのがすごいくらいだ。」
殴られた衝撃からか言葉を発するのも躊躇われる。
これ以上余計なことにリソースは割けない。
シャクは、非常まで残しているスキルをここタイミングで使う。
口から発射される細い針。当たれば刺さった箇所で爆発が起こり肉を抉る。
今まで使ったことなどなかったが、これを耐えられるはずがない。
音もなく近付く針。
「相手の観察は怠らない。反撃の隙はないと思った方が良いぞ。【狙撃】”レインショット”」
肉眼で捉えるのは常人が不可な領域。
大城はその常人という枠には捉われない。
至近距離、たった1秒にも満たない間に起こった出来事も確実に狙いを定めて撃ち落とす。
それもただ撃ち落とすだけにあらず、既に負傷している左肩にもう1度銃弾をのめり込めせる。
「ぐぁあああーーー!!!クソッ!」
痛みで声を抑えることが出来ない。
負傷の具合であれば明らかに大城の方が重体だ。
「なぜ動ける、なぜお前の方が立っている。」
「これが当たり前の世界に今は立っているんだ、痛みぐらいどうってことはない。死ってのは、常に自分の真横で待っている。足掻きたければ座り込むことは許されないぞ。」
「おっさん言ってたな。強者が故に弱いことがあるって。アンタは強者側の人間。つまり、弱さを持っているってことだろ?」
何かを企んでいるのが顔にまで出ている。
右手に持っていたはずの進化刀がどこにもない。
「惜しいが俺の勝ちだ!【リターン】」
背後から凄まじい勢いで大城を狙う進化刀。
大城は1度も後ろを振り返っていない。
勝ちを確信しながらもそれが何故だか分からない。
大城ほどの相手がこれに気付かないことがあるだろうか。
「俺は強者であるが、弱くない。弱さを知った強さもあるということだ。」
後ろを見ることすらせずに発砲した弾丸に進化刀が止めらる。
それもたった1発に。
弾け飛び地面に突き刺さる進化刀を見て絶望する。
攻撃自体は誰でも使えるスキルによるものだったが、武器は正真正銘の進化刀。
あらゆる自体を予測しても負けることなど想定はできない。
「・・・なんだよそれ、狡いじゃねーか。」
気力を振り絞った最後の言葉。
限界など既に超えていたシャクはそのまま倒れ込んだ。
聞こえていないことを分かったうえで、大城が言葉を返した。
「それが大人ってやつだ。」
回復魔法が使えるエルフがいないかと思い森の方へ歩き出す。
途中で木に寄りかかって寝ている上野を見つけたので、一緒に運ぶ。
意識も朦朧となっているがなんとか辿り着くと、血だらけのになった大城を見てすぐさま回復魔法を使えるエルフが集まる。
【悪心】が切れていたらここまで耐えられなかった。
後は大城に出来ることは仲間の勝利を待つのみ。
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