第106話 進行
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鉱石の依頼を終わらせて、街に戻ると何やら騒がしい様子。
民衆は、ギルドの近くを囲むようにして人だかりが出来ている。
これでは、ギルドの中に入ろうにも前に進むことができない。
「どうなっているんだ。あの先で何か起こっているのは確かだろうけど。」
「なんだあんたら。今何が起こっているのか知らないのか?」
「今、依頼を終えて帰ってきたところだ。ギルドにはいつ入れる。」
「なら、当分は諦めた方がいいぜ。ギルドの中で人質を取って立てこもりだとよ。なんでも、前回の反乱で取り逃がしたエルフの奴隷がやってんだと。でも、運がないよなそいつも。」
前の反乱とは、早朝から起こった奴隷達がハイエリアに攻め込んだ事件のことだろう。
あの時取り逃がしがあったというのは、聞き込みの中でも無かった話だ。
何より、あの時の奴隷達は全員が自分の意思を失っているように興奮していた。
冒険者が即座に来て状況が一変したからと言って、冷静に逃げるとは思えない。
「本当に取り逃がした奴なのか?」
「自分からそう語りやがった。でも、人質は銀狼の牙のヒーラーだ。もうすぐ、エイジオが来て解決だろうな。」
運がないとはそういうことか。人質がいるとはいえ相手がA級冒険者なら勝ち目は少ないだろう。
エルフの奴隷か。銀狼の牙に捕まっているエルフ以外にも奴隷になっている奴がいたのか。
確かに人数までは把握するのを忘れていて、彼女1人だと思っていたが違うらしい。
ここぞとばかりに群がる人々の束を掻き分けて、やっと状況が把握できる位置まで来る事が出来る。
エルフが声を上げて何かを伝えようとしている最中だったようだ。
「い、いいかぁー!我々、高貴なるエルフ族を捕らえ奴隷として扱う愚行に耐えかねた。俺は自由を求める!ここにいる女の処刑こそがその第一歩だ!」
大胆な言動とは裏腹に身体は僅かながらの震えが見える。
それに声が時折上擦っているように感じた。
勇敢なのか臆病なのかよく分からない奴だ。
「人質になっているヒーラーの人なんで反撃しないんでしょうね。いくら後衛の回復を担当する冒険者だからと言って、ナイフ1本のエルフに負けるでしょうか。」
「それはエルフだって近距戦を得意としている奴もいるだろうし、下手に動けないだろ。それに首にナイフを突きつけられてる。あれじゃ、動いた瞬間に切られて終わりだ。って、上野はいつの間にここへ来たんだ。」
目の前の状況に気を取られて一切気付くことがなかった。
「井村さんの【反転】でここまで来ましたけど。」
どこの誰だか知らないが上野と入れ替わった奴がいるのは確定したな。
他の奴がいないのは大方人混みを嫌ってのことだろう。
「そこまでにしろよ。エルフ。」
「き、来たな!エイジオ!動くなよ、少しでも動けばこの女の命はないぞ!」
なぜ、あのエルフは処刑すると言った人質を殺さないでいる。
状況が悪化してしまっているのは本人なら言うまでもなく理解していないとおかしい。
何か目的があるならエイジオが来た時点で諦めて、次の行動を考えた方が良いだろうがその様子も見受けられないな。
「何か要望があるなら聞いてやる。だけどな、俺の仲間に手を出すのは絶対に許さない。」
「動くなって!言っただろ!」
明らかな興奮と共に持っていたナイフを振りかざして女を斬りつける。
飛び散った血は悲惨さを物語っている。
女性は咄嗟にもがき首筋を斬られることだけは防いだが、それでもこの出血量が続けば死に至る。
「お前、自分のやったことの罪深さを知れ。」
あれほど距離が空いているにも関わらず、それを感じさせないほどの速さ、
エルフも想定していなかったのか動揺が手に取ったように分かる。
もちろん、エイジオの攻撃をナイフ1本で防げるわけもなく斬り裂かれる。
それもかなり深くまで傷を負うことになったようだ。
仲間1人が重度の怪我を負わされたのだから怒るのも無理はない。
彼女自身が【回復魔法】を使えなければ、手遅れになっていたことも考えられるからな。
「は「もう喋るな外道が。」
もはや、虫の息だったエルフに完全にトドメを刺した。
心臓に深く突き刺さった剣を引き抜き、一振りして血を払う。
エルフが死んだのを見て、観衆は安堵したのか割れんばかりの拍手が送られる。
「どう思った?この一連の流れを見て。」
「エルフがあんな野蛮な行動をするとは思えないですね。仲間を助けようとしたとしてもあれだけ目立つ行動は避けるのではないか思いますね。」
「同感だ。とにかくあのエルフの身元から調べるぞ。」
「意外と探偵の助手するのノリノリだったんじゃないですか!」
目を輝かせながらこっちを見てくる探偵オタクは放っておいて死体に近付いていく。
後少しで死体を見れるというところでギルド職員が立ちはだかる。
「これ以上の立ち入りを禁止します!」
これだけの観衆がいるので、好き勝手に行動を取らせないのは正しい選択肢と言える。
妙に対応が早いことだけが気になるけれど、ギルドが優秀な組織というだけかもしれない。
「もう騒ぎは終わったんだろ?依頼の達成を報告しにギルドの中に入るだけだ。」
「鉱石を取る依頼です。こちらとしても明日を生きるのにも精一杯なので報酬の受け渡しをしてほしいです。」
少しでも近付けば【鑑定】の範囲に入るかも知れない。
適当な理由を並べてギルド内に入ろうとすれば、自ずと死体に近付ける。
「そういうことでしたら特別に対応しますので、くれぐれも死体等に触れないように。」
「分かった。こっちも生活が掛かっているからな、悪いが頼む。」
名前:ルビック・キューテン
称号:エルフに模した奴隷
ギルドに入る数秒ではスキルまで確認することはできなかったが、あれが本物のエルフでないのは確か。
チラッとこちらを見ているエイジオと目が合った。
恐らく、エイジオは俺達がギルドとエイジオを疑っているのを感じ取っている。
互いの監視が厳しくなる一方で、どちらが出し抜くかの攻防が始まるな。
「こちらは報酬の10万ゴールドです。今回は特別に対応しましたが、今後はこのようなことがないように貯金はしっかりとしてください。」
受け渡しはスムーズに終了した。
これだけの時間で終わったなら死体を【鑑定】出来るかもしれない。
あわよくば、持ち物も調べられると良いが回収されている可能性も高い。
扉を開けて少しだけ死体のあった場所を見るが、この時間で処理されてしまっている。
「気になるか?あのエルフのことが。俺の仲間をあんな目に合わせたんだから、仕方がない。」
「あれが本当に自分からしたことだったらな。」
「おいおい、あれが自作自演だったって言うのかよ。俺が仲間にそんなことするのを許すと思われているのは心外だ。それ以上言うとここが戦地に変わるぞ。」
「それは得策じゃないな。仲間への非礼は詫びよう。」
何も策のない状況で戦うのは、俺達が一方的にやられてしまうだろう。
俺にプライドも何も持ち合わせていないので、頭1つ下げるだけで解決するならそれでいい。
今はまだ戦う時間ではなかっただけのこと。
その時が来れば、嫌でも刃を交えるのだから。
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