第098話 失敗の代償
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その日はエルフの村に滞在させてもらうことになった。
人間や魔族のせいで他種族の接触を嫌うエルフ族だが、仲間内だけに見せる姿は他の人間と全く変わらない。
歴史が違えば人間と魔族やエルフが手を取り合って生活する未来もあったのだろうか。
翌日になるとすぐに帰宅することになる。
時間が経過すればするほど、俺達がエルフの村を見つけたのではないかという疑問が深まるばかりだからだ。
「色々とお世話になりました。このことは本当に感謝しても仕切れません。」
「良いんですよ。魔王の討伐出来ると良いですね。」
俺達が村から出ていく際にも深々を頭を下げて見送りをしてくれる。
もう背中も小さくなったであろう距離でもずっとずっと。
たった1日にも満たない時間で見せられたエルフ達の生き様は簡単には真似できるようなものではなく、種族の差を見ることになった。
「エルフさん達、良い人が多かったですね。初めて勇者で良かったかもって思えましたもん。」
勇者というのは、なったことで何のメリットがある訳でもない。
むしろ、プレッシャーと使命で押し潰されてしまいそうになるのが大半なはず。
今回のように肩書きが好転したの珍しいケースとも言える。
他の5人が清水のように思っている可能性も少なくはない。
「それよりも最後の秘宝のことだ。天叢雲剣がなぜこの世界に存在する。」
「なんだ?知ってたのか秘宝のこと。エルフ族は長寿の生態だから知っていてもおかしくはないけど、お前らはどこで。」
「ここで赤の他人に話すことはない。そんなことぐらい、冒険者として生きているなら分かりきっていることだろ。」
素性を完全に掴み切れた訳ではないので、深く踏み込んでくるフウライを冷たく突き放しておく。
フウライがいる状況であの発言をしてしまう大城もらしからぬミスだ。
「興味本位で聞いただけだっての。そこまで言いたくないことなら言わなくていいぜ。それと、もちろん俺もエルフの村のことは他言しないようにするから。」
「貴方の目的は、エルフの生態を知ることでしたしね。運良く僕らの仲間だったと思われているでしょうからわざわざエルフに被害が及ぶ可能性を広げることはしないですよね。」
何故、フウライがエルフのことを話さないと言い切れるのかを言葉に出して説明することで、関節的に他のメンバーに安心感を与える。
加えて、フウライに対しての牽制としても効果を少しは発揮する。
「そんな頭を使った言葉遊びしなくても問題ないっての。俺ってそんなに信用ないかな。」
自分の顔を指差しておどけた感じを出す。
信頼というのは時として不利に働くことがあるからこそ、慎重になっているということは理解しているだろうな。
「信頼はないだろ。そもそも、エルフのことが気になるなら、なんであの時の奴隷オークションで落札しよとしなかったんだよ。」
「それは俺の美学に反するからな。奴隷になったエルフから無理矢理情報を聞き出すなんて酷いことできないぜ。」
「そうじゃなくて、奴隷になったエルフを買って解放する気はなかったのかってことだ。」
「ん?あ!そういうことか!確かにそうだ。あの時奴隷を解放でもしれおけば、お前らがいなくてもエルフの村に入れたかもしれなかったのかぁ。余計にお前らに借りを作ってしまったな。」
どうやら、エルフの村に入れたことを借りだと思っていたようだが、探せばいくらでも手段はあったに違いない。
今まで見たどのA級冒険者よりも活躍している様子を見たことがないけど、本当にソロでA級になったのだろうか。
ギルマスもフウライのことをA級と認識していたことから詐称しているとは考えにくい。
だとすると、本来の実力を隠して抜けているところがあるフリをしているのかもしれない。
ギルドにつくとすぐにギルドマスターからの呼び出しが掛かる。
エルフの情報は簡単には手に入らない物なので吉報を今か今かと待ち望んでいるのだろう。
ギルドに入って俺達を呼び止めた職員が前回も連れて行かれた応接室まで案内してくれるが、ギルマスから直接呼び出される人間は少ないのか物珍しそうな顔でこちらを見ていた。
「君達の帰りを待っていました。まずは、無事に戻って来れたことを喜びましょう。」
椅子に座りながら歓迎の言葉で迎入れる。
そして、催促するように目の前のソファーへ座るように指示をした。
「率直に聞きます。エルフの村は発見できましたか?」
何の捻りもないシンプルな質問を問いかけられる。
しかし、どれだけ問い詰められようとも今回の依頼の件に関しては答えが決まっている。
「すみません。見つけることは出来ませんでした。」
「それは本当ですか?一夜が明けてからギルドに戻ってきたということは、何かしらの情報は掴めたのではないかと思いましたが。どうだったフウライ。」
このタイミングでギルマスはフウライに話を聞こうとする。
俺を含めた7人とギルマスは、フウライの発言に注目している。
何を言うのかによって、今後の立ち回り方は大きく変化するだろうからな。
「一夜明けたのは、また別の理由だ。森の中はかなり危険で迂闊には歩くことが出来なかったけど、それでもエルフの村がないか調査していたら、夜になっただけのこと。」
ハッキリとして物言いに嘘だと知っている俺達までも信じてしまいそうになる。
フウライの言葉を聞いて数秒間の沈黙が続いた。
誰であろうとギルマスの顔を見なくともその態度でショックを受けているのが分かるな。
「ちなみに、成功報酬は10億ゴールドでしたが次回の同じ依頼を冒険者に出す時のために残しておくことにしましょう。」
一瞬聞こえたありえないほどの報酬金額に、つい全てを話してしまいそうになるが必死に堪える。
金は魅力的だが、それ以上に大事な物を見てきたからな。
少し鎌をかけたつもりのようだが、それでもエルフのことを話さない様子を見てやっと諦めがついたみたいだ。
「どうやら、皆さん本当のことを言っているようなので、今回は失敗したということで処理をしておきます。」
やっとことが丸く収まったのだと安堵していると、次の言葉で状況は一変する。
「仕方がないので、今度は”銀狼の牙”に依頼を出すことにしましょう。あそこには、エルフの奴隷もいるはずだから、エルフの村を探すのも造作のないことでしょうし。」
1番合理的で1番最悪な選択肢を聞かされる。
清水はそれを聞いて身を乗り出してやめさせようとするが、隣にいた小原が制止する。
何故、止められたのか分からないようだっが、小原の表情を見て何かを感じ取ったのか大人しくなる。
「それでは、お疲れ様でした。本日の話は以上となります。」
依頼が失敗に終わったと聞いたからなのか、急に興味を失ったようだ。
こちらとしても、これ以上追求されないほうがボロが出なくて済むので好都合だろう。
ギルドを出るまで職員全員が敵に見えて気を張っていたので、1歩外へ出た瞬間に開放感がやってくる。
ここまで同行してくれたフウライは用事があるからとだけ言い残して姿を消してしまった。
今回のエルフの村で聞いた秘宝の情報についての会議は、かなり長いことになるだろうな。
それほど、俺達はこの世界の真理に近づいている気がする。
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