表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束と契約4  作者: オボロ
7/59

#7 ひっそりとした山奥の川辺






警察から依頼される黒石神社の担当範囲の中には、避暑地と呼ばれれている場所がある。

そこには、可愛らしいお菓子屋さんや喫茶店があったり、近くには動物園や遊園地、温泉やスキー場もあるので、別荘を持っていない人もたくさん訪れていて、一年中、賑わっているような場所だった。


今回の事故が多発している三四子川の河川敷は、その場所からは、少し外れたところにあった。

人の手があまり入っていないような山の奥の、何もないひっそりとした場所だ。

家も店も何もない。

自動販売機も見当たらないし、街灯らしきものも見当たらない。


夜になったら真っ暗になるのではないだろうか?


「………。」


マリアは 最初の事故現場となった河川敷に立ち、周囲を見渡しながら、思った。


マリア達は、茶の間で話をした後、すぐに空を翔けて現場に向かった。

マリアは、白い大きな狐の姿になった凪の背に乗り、ドドはカエルの姿になり、イヌワシの姿になったB・Bの背に乗った。

クロはカラスなので、自分で飛んだ。


「誰も居ないし、何もないじゃん。」


クロが言った。


今日は、平日なので、誰も来ていなかっただけなのかもしれない。

だが、お陰でマリア達は、人目を避け、森の奥に着地しなくて済んだ。


「誰も居なくて良かったね。」


マリアは、自分の腕に止まった、カラスのままのクロの頭に、ポンポンっと、軽く二回、手を置いた。


そこは、本当に何もなかった。

車どころか、人っ子一人、全く通らない。


本当に家族連れが来るのだろうか?


広い河川敷は、車を止めることも出来るし、バーベキューも出来る。

川の水は、濁っていない綺麗な水で、流れも穏やかだった。


危険要素は感じられない。


家族で来るにはもってこいの場所だろう。

今現在、誰も居ないことが不思議なくらいだ。

穴場であることに、間違いはなさそうだった。


「知る人ぞ知る———って感じなのかなぁ。」


マリアは不思議に思いながら呟いた。


ここは、公営のキャンプ場ではないし、私営のキャンプ場でもない。

看板が立って居る訳ではないし、どこかで宣伝しているとも思えなかった。

では、ここに来たことのある人たちは、どうやって、ここを知ったのだろうか?



「亡くなった子の家族って、どうしてここに来ようと思ったのかなぁ。」



警察から受け取った書類の中には、現場となった三四子川の河川敷に関して、書かれていたものもあった。


事件現場となった三四子川の河川敷は、三の上村の所有地であるが、関係者以外の立入りを禁止している場所ではない為、常識の範囲内であれば、自由に使用することが許されている。


つまり、キャンプや川釣りは、自由に出来るというわけだ。


「ここに来た家族の子供が、必ずしも溺死しているわけではないなら、口伝くちづてで知った者が居ても、おかしくは無いだろうな。」


B・Bが言った。


「でも、亡くなった子が居ることは、ニュースとかで知ったりするでしょう?」


子供が川で溺れたなら、注意喚起の意味も含めて、何かしらの方法で報じられているはずだと、マリアは思った。


どんなに良い場所だったと聞かされても、子供が溺れた場所に、家族で来ようと思うだろうか?


B・Bは、続けて答えた。


「事故扱いなら、そんなに掘り下げて報道はしないだろう。自分達は大丈夫だと思ったのかもしれない。実際、無事だった子供は居るわけだからな。」


「………。」


マリアは、何とも複雑な気持ちになった。



自分達は大丈夫だと思って来たのに、実際は大丈夫ではなかったなら、どんなに後悔しただろうか?

来なければよかったと、自分を責めていないだろうか?

誰かを責めていないだろうか?

場所を教えた友人は?

教えなければよかったと、思って後悔しているだろうか?

それぞれの家族が思いを巡らし、バラバラになっていないだろうか?



亡くなってしまった子の家族もその友人も、ただ“悲しい”という気持ちだけではないだろうことを思って、マリアの胸は締め付けられた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ