#37 運動会の種目
不気味な遺体と対面してから二日後、マリアは、体育祭で行われる種目の内容を、一つ一つ、説明を受けた。
イギリスの学校にも、運動会と銘打つ行事はあった。
だが、日本の運動会のように、チーム分けはされなかったし、勿論、得点性でもなかった。
幾つかある競技は、それぞれエリアごとに分かれていて、生徒達は自分で好きなエリアに好きな時に行って、その時に来ていた人と競技をするのだ。
朝9時から始まり、お昼の12時には終わるという、とてもお手軽な運動会だった。
ところが、日本の高校ではどうだろう。
たくさんのチームに分かれ、たくさんの競技で競い合い、得点を付けて、勝敗を決める。
その上、数日前から練習して、当日を迎えるらしい。
一日がかりの騒ぎではなかった。
競技の種類も多かった。
ただの短距離走や長距離走は無い。
玉入れと綱引きは、マリアが知っているものと同じだった。
ハードル競争は、50mのコース上にハードルが並べられ、そのハードルを飛びながら進み、ゴールする。
借り物競争は、借りるモノが書いてあるメモの入った封筒が、コースの上にばらまかれていて、拾った封筒の中のメモに書かれているモノを、会場内にいる生徒や教師から受け取って、ゴールをするものだという。
マリアが出る障害物競走は、4人で出場するリレー式で、マリアの他に3人が出場することになっていた。
それぞれが違う障害物を、一人50mやるのがルールで、4人が襷を繋いで、校庭を一周するのだという。
障害物は4つ。
・缶倒し・・・30m先に三つの空き缶が並んでいる。15m走ったところで玉入れの球を拾う。そこから10m走ったところから投げて、すべての缶を倒す。玉が足らなくなったら、戻って拾う。
・瓶釣り・・・20m走ったところに空の瓶が置いてあり、そばには短い棒が結んである紐がある。瓶には触れず、紐だけを使って、瓶を持ち上げたら、そこから10m先にある台の上に瓶を立てる。
・CD入れ・・・20m走ったところにバラまいてあるCDを拾う。さらに10m走り、その先にあるカゴへ投げ入れる。一枚でも入ればOK。入らなければ入るまで、戻って拾って投げるを繰り返す。
・豆移し・・・10m走ったところで、紙に包まれた菜箸を掴み、更に10m走ったところに置いてある空のお椀を取る。そして、さらに10m走ったとことに置いてある豆の入ったお椀から、持って来た空のお椀に、紙に包まれた菜箸を出して、全部の豆を移すことが出来たら終了。
誰が、どの障害をやるのか、決めるのは、マリア達、出場する生徒で———とのことだった。
一緒に出場するのは、菅原桔梗、田中睦美、山形鈴。
マリアは、自分に出来そうもないものを、まずは考えた。
豆を菜箸で掴むのは、多分、苦手だ。
物を投げるコントロールも、あるとは思えない。
残ったのは、瓶釣り。
コツさえ分かれば、何とかなるかもしれない。
「わたし。瓶釣りでもいいかな?」
マリアは、三人に頼み、瓶釣りになった。
残る三つもあっという間だった。
「あたし、缶倒し。」
「じゃ、あたしCD」
「えー⁈…まぁ、豆移しでもいいけどね。」
結局、早い者勝ちで決まってしまった。
応援合戦の応援団は、やりたい人が集まることになった。
人数は多い方が華やかになるので、みんなでやりましょう、ということだった。
一年生から三年生までの男女が参加して、自分達のチームを鼓舞し、相手チームも激励するパフォーマンスをするらしい。
放課後に残って練習する必要があるとのことだったので、マリアは参加しないことにした。
沢井萌々は、チアガールになりたいので、参加を決めた。
「だって、かわいいじゃん、チアガール。絶対、写真撮ってね。」
練習は苦にならないらしい。
津谷美羽は、驚いたことに、混合リレーの選手に選ばれていた。
「足だけは速いのよ。目立つのは嫌だけど、仕方ないわ。そのかわり、他の種目には、絶対に何も出ないわ。」
クラス副委員長とは思えない発言だったが、反論できる生徒はいなかった。




