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約束と契約4  作者: オボロ
32/59

#32 歓楽街で発見された変死体




夜はネオンが眩しい賑わいのある歓楽街も、朝になれば、様変わりして平和なものだ。

子供の声も聞こえるし、学生の笑い声や話し声も聞こえる。

お昼が近くなると、定食屋や喫茶店に向かう社会人や、世間話をしている主婦たちもいる。

実に平和的な光景だ。


いつもならば……


この日、平和であるはずの歓楽街の通りに、何台ものパトカーが入って来た。


サイレンを聞きつけ、何事かと集まって来たたくさんの野次馬達。

どこから聞きつけて来たのか、報道関係者の姿もある。

駆り出されたたくさんの警察官たちが、立ち入り禁止のテープを周囲に貼り巡らせ、規制をかけている。


平和とは程遠い状態になった。



現場は、路地裏のごみ置き場だった。

ごみの中、まるで捨てられたように男は倒れていた。

顔半分がえぐれ、左腕は肩から無くなっていた。


パシャッ、パシャッ、パシャッ


鑑識官が何枚も写真を撮っている。

指紋採取をしている人。

残留物を探している人。

あちらこちらに、鑑識官はいた。



「どう思いますか?」


スーツ姿の刑事が、先輩刑事に聞いた。


遺体発見は、今から30分ほど前のこと。

ごみの収集員が、死体だと気付いて通報した。

初めは、酔っ払いだと思い、うんざりしたらしいが、よくよく見れば、顔はえぐれてぐちゃぐちゃになっているし、腕は無いしで、驚きのあまり、絶叫した後、腰を抜かして動けなくなったらしい。

通報した際にも、声は震え、上手く言葉が出て来なくて、説明するのに、ずいぶんと時間が掛かったそうだ。



「どう思うも何も、これは他殺だ。」


先輩刑事が答えた。

問題は、『誰が、何の目的で、ったか?』だ。


男は、ごみの上にうつ伏せなって、何も着ていない素っ裸のまま、倒れていた。

男の衣服はなく、男の身元がわかるような物は、何も残されていなかった。

負っていた怪我のわりに、血痕も少ないように見えた。


別の場所で殺して、ここに捨てた?

しかし、こんな殺し方をして、すぐに見つかるような場所に捨てるだろうか?

いや、こんな殺し方をしたから、すぐに見つかる場所に捨てた?


「普通は、余程の恨みがなければ、できねぇよなぁ?」


先輩刑事は、シートに覆われ、運び出される遺体を見詰めながら、続けた。


「もっとも、まともな神経のヤツには、そもそもできねぇだろうな。って、ことで、まずは、付近の防犯カメラからあたるぞ。」

「はい。」


二人の刑事は、捜査に向かった。








—————————








「室長、これ見てください。」


警察庁総務部情報管理課庶務室の柿坂亘壱かきさかこういちは、届いたメールに目を通し、急ぎ、室長である桧山総一朗ひやまそういちろうに報告した。


メールの内容は、本日12時18分、出雲町歓楽街のごみ置き場で遺体が発見された件についてのことだった。


遺体は、20代後半から30代前半、身長178cm、血液型A型、中肉中背、男。

遺体の欠損箇所は二つ。

左肩から左腕の損失。

左顔面の損失。

肩も顔面も、鋭利な刃物で切られたのではなく、引き裂かれて、千切ちぎれたかのように、細胞が裂かれていた。

断面には、生活反応あり。

また、遺体の喉は炎症しており、相当の大声を出して叫んでいたと考えられるが、男の声を聞いた者は、まだ現れていない。

遺体が発見されたごみ置き場は、周辺の飲食店が合同で使用しているごみ置き場で、最後にごみを出したと思われる蕎麦屋の店主は、午前3時すぎにごみを出した時、男の遺体はなかったと話している。

なお、ごみ置き場に残された血痕の量から、殺害現場は別の場所である可能性が高い。





「……これって、内容が内容だし、黒石神社の次期宮司には、ちょっとキツくないかい?」

「しかし、遺体の状態を考えると、身元が判明したら、すぐに火葬するでは?その前に一度、確認してもらった方が良いのではないでしょうか?」


あちら側が関わっているのであれば、遺体に何かしらの痕跡が残っている可能性は高い。

焼かれてしまった後も、痕跡が残っている場合もあるらしいが、それは極めてまれなケースであるらしかった。



「そうだな……。とりあえず、依頼はかけておくか…。」

「はい。すぐに準備します。」


桧山室長は、黒石神社の次期宮司に依頼を掛けることを決定した。

そして、依頼書の作成を始めた柿坂ではなく、柿坂の向かいの席に座る榊原一秀さかきばらがずひでと、その隣の席に座る小松傑こまつすぐるを見て、言った。




「念のために、榊原と小松、黒石神社の次期宮司に同行しろ。」



「はい。」


返事をしたのは、榊原だけ。


「………。」


小松は、驚きのあまり、桧山室長を見詰めたまま言葉を失い、固まっていた。





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