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約束と契約4  作者: オボロ
18/61

#18 B・Bと使い魔達の結界術






マリアは、『さと』を浄化するにあたり、『さと』と話がしたいと思った。

生前の『さと』の環境と、死に際を体験したマリアには、”ヒトならざるモノの悪行”で、片づけてしまうことが出来なかった。


マリアにとって、『さと』は、死んでも尚、子を授かりたいと願い続けた悲しい娘。

でも、その願いを叶える為に選んだ方法が良くなかった。


人間の子供を食べる。


三の上村がある辺りでは大昔、”アユの稚魚を食べると子を授かる”と言う言い伝えがあったらしい。

『さと』は、その頃の娘なのだろう。

だから、子供を食べると言う考えが浮かんだのだろう。

死んでしまった『さと』には、人間の肉を食べることはできないので、死んだ子供の魂を食べていたに違いない。

何人も何人も、殺しては魂を食べていたのだろう。

いつの日か、子供が授かると信じて……




「クロは、ここ。バトは、ここ。ノラは、ここで、ヴィゼは、ここ。で、ドドは、ここね。」


マリアは、使い魔達と一緒に凪の背に乗り、大きな地図を広げて、上空から地上を見下ろし、地図と地上を見比べながら、それぞれの配置を教えた。

マリアが伝えた五人の配置は、三四子川の『さと』が棲み付いていると思われる、『さと』の髪の毛があった場所を中心にして、五角形を作った。


決行は夜。


なので、昼間の明るいうちに行って、使い魔達の配置を確認することにした。

それぞれの配置場所には、夜中でも分かるように、光るテープを巻いた棒を突き刺した。


「獣が倒したりしない?」

「倒しても、場所が分かれば問題ないでしょ?」

「月明かりだけでも、結構、明るいかもよ。」

「楽しみだなぁ。」

「こんな大きさの結界、久しぶりだもんね。」

「そうか。頼んだわよ。」


使い魔達は、ちょっとしたイベント前の雰囲気だ。

マリアは少し緊張しているように、凪には見えた。






「………。」


マリア達を再び背に乗せ、黒石神社に戻る途中、凪は、マリアが考えた作戦を聞いた時のことを思い出していた。





『わたしも、『さと』が大人しくわたしの話を素聞いてくれるとは思っていない。でも、逃がさなければ、話を聞くしかなくなると思うの。強制的にでも話を聞けば、『さと』は理解できるはず。憎くて子供を殺していたわけじゃなくて、自分の子供が欲しかっただけなんだから…。だから、B・Bたちに手伝ってもらう。きっと上手くいくわ。』




いやにはっきりと言い切っていたマリアに、凪は訝しく思った。


『さと』を逃がさないようにするといっても、どうするつもりだ?

結界を張るのか?

しかし、マリアが結界を張る時は、七曜神楽を舞った時。

結界を張り終えた時には、もう『さと』は祓われているだろう。

では、どうするつもりだ?

B・Bたちに手伝ってもらうと、言ったことも気になった。


『わたし、思い出したの。ノラと初めて会った時、ノラは別の空間を作っていたでしょ?それに、ルイーザが、ヴィゼと一緒に居たって、ずっと言っていたのに、誰も一緒に居るのを見ていなくて、ルイーザの妄想なんじゃないかって、噂になった。あれも、そうなんでしょ?』


マリアは、使い魔達とB・Bを呼んで、琴音と凪の前で言った。


『B・Bもそう。日本庭園で、そういうの使っていたわよね?あなた達、そういう術が使えるんでしょ?今も使えるの?空間を閉じるっていうか、別空間を作るみたいなの。もしも使えるのなら、三四子川で、それを使ってもらえない?『さと』を閉じ込めたいの。』


『はぁ?』


琴音が、今まで聞いたことも無いような声を出した。


『そんな大掛かりなことをしてまで、話がしたいの?そんなこと繰り返していたら、身が持たないわよ?』


その時の琴音の驚いた顔を、凪は一生忘れないだろう。







「B・Bは、空から彼らの援護をして。きちんと均等の力で結界が出来ているか、空から見て、指示を出して欲しいの。」


ともあれ、琴音は、マリアに任せることにした。

決行の時を迎え、マリアは、自分で考えて、B・Bたちに指示を出した。


「あなた達は、B・Bから自分達の場所がわかるように、配置に着いたら、まず初めにすることは、棒に巻きつけたテープを、自分の腕に巻くことよ。いいわね。」


「うん。」

「わかった。」

「了解。」

「まかせて。」

「わかったよ。」


五人は皆、すぐに返事をした。



三四子川周辺に到着すると、凪は、使い魔達を、それぞれの配置場所に降ろして回った。

全員を降ろし終わると、再び上空に上がり、使い魔達の位置を確認した。


「初めて。」


マリアも、使い魔達が全員配置に着いたことを確認すると、声に出して、使い魔達に念を送った。

上空から見た森は、ただただ暗くて、結界が張られていく様子を、肉眼で見ることは出来なかったが、結界の内と外では、空気が変わっていくように、マリアは感じた。


凪は、少しずつ高度を低くして、地上に向かった。

地上に近付くと、結界が空気の幕のようになっているのが分かった。

B・Bも凪の後を追い、高度を落としていた。

しかし、B・Bは地上に降りることなく、途中で留まり、使い魔達が作った空気の幕のような結界に向かって、まるで力を加えているみたいに翼を羽ばたかせた。

すると、空気の幕のような結界が上空の一点に集まり出して、ドーム状に天井が閉じていった。


閉じ切った途端、結界内は、しんと静まったように感じた。

やはり、結界の外と中では空気が違っていると、マリアは思った。


結界の外は生暖かく、結界の中は、寒いぐらいに涼しく感じた。


これが、B・Bと使い魔達が張った結界。



結界は完成した。







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