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約束と契約4  作者: オボロ
12/59

#12 子供に絡みつく影






「わたしは、女の正体と目的が知りたいけど、その為に、子供が溺れるのを見ているだけ———なんてことは、したくないの。」


女の霊と話をする為、三四子川へ出向いたが、二度とも空振りとなり、マリア達は、予想される理由を考えた。

そして、獲物となる子供が来ないと現れないのかもしれない———と、予想した。


そうなると、休日が狙い目となる。


幸い、明日は日曜日なので、明日こそは会えるかもしれないと、マリア達は期待した。

そして、マリアは、自分の想いを、みんなに明かした。


ずぶ濡れの怖い女の正体は知りたい。

でも、子供を犠牲にはしたくない。


「まぁ、目の前で子供が溺れているのを、見過ごすわけにもいかないだろうよ。」


琴音が賛同し、マリア達は作戦を考えることになった。


最初に思い付いたのは、B・Bとドドが親子の振りをして、川に入ることだった。

ドドをヒトの子と勘違いをして、姿を現してくれないかと、考えた。

しかし、それは、B・Bに否定された。


「ヒトではないことは、気配で気付かれてしまうはずだ。」


そこで、考えられたのが、溺れている子供を助け出すこと。

流される子供を引き上げることが出来れば、子供を助けることは出来るだろう。

幸い、B・Bはイヌワシで、子供一人、掴んで運ぶのはお手の物だ。

カエルのドドは、川の流れに逆らって泳ぐことは出来ないが、流される子供のようすは、一瞬だけでも確認することが出来るかもしれない。

マリアは、決して無理はしないことを条件にして、ドドには流される子供にしがみ付いてもらうことを決めた。


B・Bと凪、他の使い魔達は、複雑そうな表情をしていたが、ドドは二つ返事で了承した。

ドドは、自分だけにマリアが何かを頼むなんてことは、これが初めてだったし、もう二度とないかもしれないと、思ったからだった。




次の日。

三四子川には誰も居なくて、休日でも、ここには誰も来ないのかもしれないと、落胆した。

しかし、一台の車が入って来た。

車から降りて来たのは、両親と、男の子と女の子の四人家族で、川を眺め、周囲を見渡し、誰も居ない穴場だと、喜んでいた。

そして、バーベキューの準備を始めた。

母親と子供二人は、コンロや鉄板などを、車から運んで来ては、並べていた。

父親は、川に入って釣りを始めた。

釣りを始めた父親の様子に興味を移した男の子が、バーベキューの準備を放棄して、川へ向かった。

異変があったのは、男の子が川に入った直後だった。


「………っ!」


ドドは、それまで川辺でのんびりと過ごしていたカエルたちが、一斉に身を隠すのを目撃した。

カエルたちは皆、口々に、「女が来た。隠れろ。」と言って、仲間や子供達に危険を知らせていた。

ドドも、危険を知らせなければならないと思い、B・Bの足に飛びついた。


「B・B!」

「どうした?」

「カエルたちが、女が来た、隠れろって。カエルたちは、みんな隠れたよ。」

「……え?」


マリアも凪も気付き、足元を見たが、すでにカエルたちは身を隠していた。


「行こう。」


計画が実行に移された。

マリアと凪は、女が住み着いていると思われる、遺体が見つかった場所に向かった。


「………。」


ドドは、B・Bの肩に乗り、その瞬間が来るのを待った。


父親と男の子は、何も知らず、何も気付かず、川の中で笑っている。

母親と女の子も、何も知らず、何も気付かず、河川敷で笑っていた。


川の流れは随分と速くなっているのに……


「…っ!」

「あっ!」


思わず、ドドは声に出してしまった。


男の子が足を滑らせたかのように、体勢を崩し、流され始めた。


「———!」

「————っ!」


父親と母親が叫んでいる。


バサッ!


イヌワシとなったB・Bが、子供に向かって飛び出した。


「しょーお!!」


母親の叫び声が聞こえる。

父親は川の中を泳いで、流される子供を追いかけるも、到底、追いつける速さではないと悟り、岸に向かった。


すべし———とは、まさにこのことだと、ドドは思った。


B・Bは、子供の頭上に来ると、まるで餌を見つけたかのように、子供に向かって降下した。


「いやぁ———!やめてぇー!!」


気が触れたのではないかと思うような、母親の絶叫が響いた。


B・Bは、子供の肩を掴もうとしたが、子供はがむしゃらに暴れていて、B・Bに掴む隙を与えなかった。

ドドは、子供めがけて飛び降りた。


ドボンッ!


暴れる子供の腕にぶつかり、子供から離れた場所に落ちる。


「………。」


川の中に沈みながらも、ドドは子供の姿を見た。


川の中で、少しでも水面に出ようと、足をばたつかせて、もがいている。

子供の体と足に、何か黒いモノが絡みついているのが見えた。


「………。」


ドドは、岸に向かった。

マリアに伝えなくてはいけないと思った。


強い流れの中、逆らうことも出来ず、ドドは流れていった。



成す術無し———



今、自分もまさにそれだと、ふと思った。



マリア…



伝えなければいけないことがあった。



マリア…



その役目を、自分は与えられたのだから…



マリア…

子供に影が絡みついていたよ……



マリア…

影が、子供を溺れさせているよ…



マリア…




マリア…





マリア…






………








ドドの意識は遠退いていった。






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