第一章:新たな秩序 持つ者持たざる者
「さて剛、そっちのクラスはどうなっていた?」
「良く分からないアナウンスが頭の中に流れた後、一旦静まったんだが、校庭の惨状を目にしてここと同様に恐慌状態になってたよ」
「まぁ、そうなるのが当然か。他のクラス、学年も同様に考えてよさそうだな。それに加え、あの化け物が校舎に侵入してくる可能性が高い。そもそも既に入り込んでいる可能性も視野に入れたほうがいい。」
「こんな状況でも落ち着きすぎだろ……晦冥さんよ。兎も角早めに合流出来て良かったぜ!」
「いや、これでも遅いくらいだ。取り合えず今は時間が惜しい。今から俺が行うことのサポートをお願いしていいか? 手始めにさくらから頼む」
了解っ、とハンドサインで返してきた剛を確認し、悲鳴が止まないクラスの奴らに対してアクションを起こそうと席を立つ。
そのまま足を振り上げ、机を蹴り倒し、一瞬息を吸った後大声と共にそれを吐き出す。
「ダンッッッ!!! 落ち着けッッ!!!」
その行為一つでクラス全体に異様な静けさが再び蘇る。
「今何が起きているか分からないやつが大半だろう。だがそのまま騒いでいるだけだとおまえらは全員”死ぬぞ”? それをお望みとあらば自由にしてくれて構わない。 だが生きたいと願うならば今から言うことを早急に確認しろ」
「おいっ、何で晦冥が仕切っているんだ。委員長である俺の話をま『分かった!!!何をすればいいんだ?』」
早坂が口を挟んできた瞬間、剛が役割を十全に果たそうと晦冥に賛同を告げる。
これによりクラスの注目は自然と俺に集まってくることとなる。
いい仕事だ、流石だな剛!!! と感心しつつ、続きを述べる。
「いいか、余計な御託は並べずにまずステータスと全員唱えてみてくれ」
「『ステータス!!!』」
「おぉ、なんだこれは!? 半透明上の板が出てきた? それにこの項目、数値はなんなんだ⁉」
一同は狼狽えながらもこの怪奇な現象に目を奪われる。
騒ぎが大きくなる前に晦冥は更に話を続ける。
『そこに固有スキル又はスキルの記載があったものは手を挙げて俺のところまですぐに来てくれ』
「お、おれ、あるぞ!!! 」
「わ、私も書いてあるみたい!!!」
困惑しながらも幾ばくかの声が上がり、流れるままに晦冥のところに集まっていく。
(……固有スキル持ちは俺と剛の他には一人だけか。少ないとみるか多いと見るかの判断が難しいな。スキル持ちは思っているより多いようだが、地の能力によって左右されているわけではないらしいな。)
「な、なぁその良く分からないのがない俺たちは大丈夫なのか?」
「私もない……ど、どうすればいいの!?!?」
それを筆頭に静まっていたクラスに動揺が伝播し始める。
(くそっ、時間がないとはいえ、不安を煽る行為はするべきではなかったか。取りあえずは……)
手を一度大きく叩き、再度注目を集める。
「こんな良く分からないものが記載されていなかったところで何も変わりはしないだろう? 目先の目標はこのいかれた現状を生き残ることだ。落ち着いて行動しよう」
と思ってもいない言葉を投げかけるが、それにより一時的にだが不安感はなりを潜めた。