第一章:新たな秩序 セカイカイヘン
「タダイマヨリセカイノカイヘンガオコナワレマス」
「おい、 今の聞こえたか?晦冥」
と隣の誠吾が焦ったように問いかけてくるがそれに構わず俺は思考を開始する。
(……今のはなんだ? 光は兎も角、あの揺れで校舎が全く被害を受けていないのは明らかにおかしい。他にも誠吾の言動や周りの反応を見る限り、あれは俺だけに聞こえたのではなくクラス全員、はては全世界の人間に聞こえている可能性がある。それにあの頭の中に直接話しかけられたような感覚はなんだ? 国の実験と考えるにはあまりに場違いであるし、あの感じはまるでテレパシーだ……これはもしかするのか?いやまだ判断材料が足りていないな。)
「お、おい。 校庭のあれはなんだ? 冗談だよな……?」
クラスの男子、そして委員長でもある早坂 悟の一言が困惑するクラス内に響き渡る。
それを皮切りに、1人、また1人と席を立ち窓からグラウンドを見に行く。そして”それ”を目にしたものは洩れなく全員が青ざめた表情と悲鳴を奏でた。
「きゃーー、 首が、首が……」
「なんだよあれ…… あの化け物はなんなんだよ!!!」
阿鼻叫喚の嵐に包まれるさなか、俺も校庭の”あれ”を確認する。
緑色で奇怪な形、生物的嫌悪感を漂わせるその怪物はまるでアニメで語られるゴブリンのようであった……。
(なるほど……国の実験という線は消えたな。先の声といい、目下のグロテスクな被害、奇怪な化け物。正直まるで信じられないが、これだけの判断材料があるならばそうとしか考えられない。これは小説・アニメで見たようなことが現実で起こってしまったのだと……。)
となれば……
「ウィンドウオープン、……違うのか。ならステータス」
Status: Lv. 1 黒神 晦冥(human)
HP:140
MP:108
STR :18
INT :29
VIT :8
MEN:28
DEX:25
固有スキル
【遊戯神の寵愛】
【明晰な頭脳】
【冥闇魔法】
スキル
『剣術Ⅲ』
残りSP『0』
(……なるほど? 言葉に出さなくても念じるだけで表示を切り替えられると。さて、問題は固有スキルか。遊戯神ってなんだ、そもそも神が実在しているだと……? それで寵愛を何故受けているんだ。加えて魔法だと? 使い方すら分からないのでは今のところ役に立ちそうはないな。剣術は恐らく幼少期から習っていた剣道が起因しているのだろう。ということは、他にも地に由来したスキル持ちがいるはずだな。)
ここまで考えて、晦冥は顔を上げると未だに先ほどの光景と殆ど変わっていないことに気付く。
(これが2つ目の固有スキル、【明晰な頭脳】の効能なのかもな……。)
「な、なにが起こっている!? 私は一度職員室に戻って支持を仰いでくる。君らは落ち着いてここで待っているんだ!!!」
その言葉を残し、教室にいた唯一の大人である教師は顔面蒼白といった様相でドアの向こうへ走り去っていく。
頼りとなるはずの教師が居なくなったことにより、クラス内に緊迫と暗雲が立ち込む。
それに耐えかねたのか、先から口を閉ざしていた誠吾が感情を発露させる。
「おい、晦冥!! どうするんだよこれ!! 俺らはただ待つだけで大丈夫なのか⁉」
「一先ず落ち着くんだ、誠吾。恐らくもうすぐ……」
「この状況でどうやって落ち着けっていうん『晦冥!!!』」
「やっと来たか、剛。行動を開始しよう」
誠吾の声をかき分けて入ってきたのは隣のクラスにいる親友、齋藤 剛であった。