プロローグ
戦争も突飛な出来事も起こらない、そんな当たり前で味気ない、ただあるがままに平和を享受する毎日に吐き気がする。
いや吐き気は流石に言い過ぎただろうか? まぁ何にせよ、将来役に立つでもない勉強を強制される現状はつまらないという他ない。
陽射しが差し込む教室の窓辺で俺はそんなことを考えながらこの日何度目か分からないため息をついた。
俺の名前は黒神 晦冥、高校2年生、サッカー部に所属していてクラスではムードメーカにはならないものの中心的存在、所謂リーダー格といって差し支えないだろう。
表面上は模範生として大衆の目に映っているはずだ。
なんて、誰に向けてこんなありきたりな紹介文のようなものを考えているのやら…… これではあいつらに頭でもおかしくなったかと言われてしまいそうだな。
あいつらとは主に小中を共に過ごしてきた親友二人のことだ。
その内の1人は同じサッカー部、クラスに所属している清宮 誠吾 であり、もう1人は残念ながら別のクラスになってしまったバスケ部に所属している齋藤 剛 だ。
言語化すると恥ずかしいものだがこの2人は数少ない俺の秘密、内情を知っているような何にも代えがたい友だ。
「また俺は誰に向けて……」
とつい声に出すと
「おい、どうした? また何か考えてんのか」
と誠吾が笑いながら語り掛けてきた。
「誠吾に彼女はいつになったらできるのかなってね」
「おま、自分だってそうだろ!!!!」
などといつもの軽口を交わしている時のことだった。
突然、目も開けられないほどの光と耳を劈くような雷鳴のごとき音が響き渡る。
それに加え、マグニチュード10に届くか否かというほどの大規模な揺れが世界を襲う。
その最中、
「タダイマヨリセカイノカイヘンガオコナワレマス」と頭の中に機械的な音声が流れ込んできた。
そうこの時から退屈な日常が、生活が、全てが終わりをつげたのだ。