case2 〜食べたことのない「あの食材」を食べたい!〜
基本鬱展開ですが・・・このお話は、少々コメディチックかもしれません
なぁー!?
テレビを見ながら夕食を取っていた俺は、思わず素っ頓狂な声をあげた。
何でって・・・明日地球がなくなるって!?
ちょっと寝過ごしただけで、何であのチャンネルまでニュース流れてんの!?
ノストラダムスのおっさんも真っ青通り越して、心臓マヒ起こしてぶっ倒れますってコレ!
現に俺も今、椅子ごと後ろにぶっ倒れそうだったし!
そんな状態でも、俺は四つ切りにしたトマトを頬張る。
うん、トマトは大事や♪
リコピンパワーで、ダルさ知らずや♪♪
・・・・・・・
あー・・・、俺パニクってる。何かいきなり冷静になった。
我ながらテンションの配分がよろしくない。
さて。
いざどう過ごそうか悩んでいた時・・・。
そういや、友達と話した時にちらっと聞いた話しを思い出した。
ドライトマト。
食べたこと、ないなぁ。
えーと・・・
「輸入食品店にgo」って言ってたっけ。
・・・・・・・・・・・・
PCの電源を入れて、ネットに繋ぐ。
良かった!まだ使える。近場の食品店を探して、地図を印刷。
…意外と結構近くにあったんだなぁ。気付かんかった。
今日はもう閉店してるし・・・。
よぉ〜し。
ドライトマト、待っとれい!
・・・俺は変な気合いを入れたのだった。
***
翌日。
町はいつもと変わらない。
もっとこう、交通機関マヒ!とか、経済大混乱!とかなってると思ってたんだけど…。
いや、期待してたワケじゃないですよ?
地図を見ながら、歩くこと10分程。
お目当ての食品店を見つけましたよ。
ここの食品店、めっさごちゃごちゃしてません?
てか、人員削減しすぎですってば!
場所を聞こうにも、どうにもならんがな!
キョロキョロしながらドライトマトちゃんを探していると。
「何かお探しですか?」
おっさ…ゲフンゲフンお兄さんがご丁寧に声をかけて下さった。
歳なんだか若いんだか、判断に困っただけっす。念の為。
「えと・・・ドライトマト探してます」
「乾燥食品は、右奥のコーナーですよ」
「あ、ホンマや。ありがとうございます!」
よく見たら看板かかってた。
ウミヘビくん、邪魔やねん!
キミが背伸びしてたから、看板が見えんかったわ!
俺はお・・・兄さんにお礼を言うと、早足でコーナーへと向かった。
・・・そして。
念願のごたいめーん♪
へぇ〜・・・。
ドライクランベリーがでっかくなったみたいな形してる。
シチリア産・・・ああ、イタリア産なのね。
うん。お買い上げするに決まってるじゃん♪
4〜5パックを買い物籠に放り込んで、俺はいそいそとレジに向かったのだった・・・。
店を出るときに、おっさ・・・お兄さんが不思議そうな目でこっち見てたのを追記しときます。
***
さて。
買ったはいいけど、どう使うの?
しゃくしゃくとトマトちゃんをツマミながら、俺は考える。
このまま食っても美味しいけど・・・
ポーン♪
あ、メール来た。
コーヒーを飲みながら、来たばかりのメールを開く。
友達からだ。
"そろそろ食材を手に入れた頃でしょう"
・・・って、何でわかるん!?
えーと、何何??
・・・あー。あのおっさ・・・ゲフンお兄さんは、友達の彼氏さんだったんか。
納得納得。
てか、すっげぇ偶然。
友人はご丁寧に、調理方法を教えてくれたのだった。
"調理方法の基本は普通のトマト料理と変わりません"
ふんふん。
"塩気が強いので、味付けにだけ気を付けてください"
うん。確かにしょっぱかった。気を付けます。
"水で戻したあと、あなたの好きな料理を存分に作るがいい!!"
らじゃー!って、めっちゃアバウト!!
あの人らしいっちゃらしいけど・・・。
さて。腕が鳴りますなぁ。
最後の晩餐は、トマト祭りやぁ〜!!
***
ふふんふふんふふーん♪
鼻歌交じりに包丁を動かす。
ミネストローネ、ドライトマト入りミートソースのスパゲッティ、ニース風マッシュポテト・・・。
時間もまだまだあることだし、手の込んだ料理もできるって♪
あー・・・。何だろ。
こんなにのんびりした一日、何ヶ月ぶりかなぁ・・・。
ずっと仕事に追われてて、帰ってくる頃にはもうへとへとで料理する気も起きなかったし。
口を開けば仕事の事ばっか話してたような気がする。
今気がついたけど、俺、結構気持ちに余裕がなかったんとちゃう?
今更って感じだけど、もっと早く気づきたかったなぁ・・・。
PiPiPiPiPi♪
キッチンタイマーの音で、俺は我に返った。
物思いはこのくらいにして、今は料理を楽しみますか♪
俺は茹で上がったスパゲティを、鍋から上げた。
そして。
ディナー完成〜!
ブラッディマリーなんぞを作りつつ、自分の料理に舌鼓を打った。
こんな晩飯、久しぶりだぁ〜。
んで、自分で言うのもなんだけど、結構うまいやん。
ダチがいたらもっとよかったんだけどなぁ。
ひとりは「行きたいところがあるから」って言ってたし。
メールくれた友達は「今アメリカ」って返事が返ってきたし。
そこはちょっと残念だけど、おなかも心も満足満足ですわ。
***
食事を終えて。
ネットラジオをBGMに、のんびりとタンブラーを傾ける。
何にもしないで、ぼーっとしてる。
だんだん地震が強くなってきている。
妙に外が明るい。
カーテンを開けると・・・。
あ・・・ありえん・・・!
お月さんがほとんど空を覆ってるやん!!
クレーターがめっさ見えるで!
やっと事態の深刻さを思い知った。
でも。
今はまだ、どうでもいいけどなぁ♪
こんな終わり方も、有りだと思うし。
俺一人があがいたって、何にもできないし。
終わりの刻を、ゆっくり待とう。
俺は椅子に座り、トマトジュースをタンブラーに注いだ。
finale2に続く