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序 赤は青へ
一人だということを知っている。
サヨナラを言う相手を、僕はまだ知らない。
一人だということを知っている。
残す未練や後悔も、ここには無い。
◯ ◯ ◯
3月の東京はまだ肌寒さが残っていた。
信号待ちをしている常葉優勝は、両手をジャケットのポケットに突っ込んで冷たい風に耐えている。
これから自分がどこへ向かうのか、それを知っている者はこの世に誰としていないだろう。そう考える優勝の心は軽やかだ。
雲が流れ、背中に太陽が照りつける。
信号の色は変わった。