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学校の瓶詰め

 学校の瓶詰めを買ったひとがだれなのか、僕は知らない。そのひとはいまでも学校にかよっているのだろうか?

 学校に行くと、生徒や先生がたくさんいる。このひとたちは学校の瓶詰めの付属のものだから、かならず学校にいるのだ。

 遠くからでもひとがたくさんいるのがわかったが、近くまで来ると、制服がどんどんと学校に吸いこまれていくので不思議だった。

 校門には体育教師が立っているけど、ろくすっぽ挨拶を返さない。

「おはようございますっ」後輩はいう。

「……………………」体育教師はいう。

 体育教師が興味を示すのは、体育でも教育でもなくて、自分の嫌いな人間だけだ。

 僕は他人に嫌われたくはないけど、たまに体育教師の興味をひいてしまうことがあった。自分ではよく理由がわからない。そのころは小説家でも詩人でもなかったのに。

「それでは先輩、またお昼に会いましょうね」

 後輩とは昇降口で別れた。不思議なことに、学生のときはこの場所を昇降口と呼んだことはなかった。この場所を昇降口と呼ぶようになったのは、小説家になってからだ。

 昇降口という言葉があらわすように、学校とは乗り物に近い。乗れば決まった駅に連れていってくれる。ちゃんと最後まで乗っていれば、終点に到着する。

 方向幕はこのように表示されている。

――「普通:お墓行」

 僕は車窓から眺める景色が好きだ。学校の窓から外を眺めるのも好きだった。もっとたくさんの景色が見たい。

 だから途中で乗り換えてしまったのかもしれない。そしてほかのひとはもう先に行ってしまっているから、ちゃんと目的地に向かう列車に乗り直すことも必要だ。

――「特急:お墓行」

 特急は、あとから出発しても、だいたいは普通より先に到着してしまう。だから僕は、たくさんの景色を見たあと、ほかのひとより先に終点に到着するだろう。

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少女に、芸術と人生について語る小説、『さよならを云って』も連載しています。
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