表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

制服

「どうしたの、その服」

「これは制服ですよ、先輩」

「うん」

「わたしは後輩ですから学校にかよいます。先輩は先輩ですから学校にかよいます」

「なるほど」

 明りの瓶詰めはすべてその明りを失って、ただの硝子の死骸になって無人駅のそこらじゅうに横たわっていた。

 僕はそれを拾いあつめて無人駅に設えてある回収箱に入れた。この世界に住むひとびとは、空き瓶をこの箱に入れなくてはならない。

 空き瓶は氷河期のような音をだしながら箱に落ちていった。入れられた空き瓶がどこに行ったのかはだれも知らない。

 学校の制服を着た後輩は、僕の掃除をちらと横目で眺めつつ、目玉焼きをつくってくれた。

 僕の朝食は、トースト、目玉焼き、ベーコン、コーヒー。

 後輩の朝食は、トースト、目玉焼き、ベーコン、紅茶。

 世界じゅうの朝食がいまここにあった。すばらしいことだ。

 僕たちはそれを平らげて、学校へ行く準備をした。といっても、鞄を持つだけ。それだけだ。

 後輩は自分の自転車を持っていないから、僕たちは徒歩で学校へ行くことになる。

「登校ですね」

「とっても久しぶりの気分だ」

 学生の朝は早い。こんなに早く起きたのも久しぶりのことだ。こんなに気持ちのいいものだったなんて。

 後輩はなにもいわずに手を差しだしてくれた。僕たちは手をつないで登校する。この世界には手をつなぐことを冷やかす者などひとりもいない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女に、芸術と人生について語る小説、『さよならを云って』も連載しています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ