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瓶詰め世界のこと

書けたら投稿する。

 瓶詰めのものはすべて買うことができる。この世界ではなんでも瓶詰めになっている。

 手紙、小説、概念、夕暮れ、屋上、無人駅、音楽、発狂、神、後輩。

 あなたがこの文章を読んでいるとすれば、あなたはこの世界から出ていってしまったのだろう。

 そういうひとは多い。すべてが瓶詰めになっていることに耐えられないひとのほうが多いのだ。

 さいしょは、すべてが買えることに喜ぶ。望んでも手に入らなかったものすら、この世界では瓶詰めになっている。

 だいたいのひとは愛を手に入れた。

 自分の小屋に戻り、窓辺に飾ってみる。瓶詰めの西日が照らす。ぴかぴか光る。

 そのうち愛は特別さを失い、ぶよぶよの皺に蛆虫が集り、他のなにかと変わらなくなってしまう。あなたはそうやってこの世界を去ってしまった。

 瓶詰めはいいことだ。紛い物であっても永遠を見せてくれる。僕は永遠が好きだ。でも死は嫌い。

 瓶詰めは消費期限が遠い。永遠のように。

 だからこの文章も瓶詰めにしてどこか遠くにやってしまうことにした。ちゃんと最後まで書けたらの話だけど。

 この瓶詰めの世界は手のひらのなかに収まってしまう。ひやっこく、ときに震える。僕の知らないことがたくさん詰まっている。

 一日の終わりに僕は話を書く。僕は生活に必要な物だけでなく、小説家という概念も買った。だからこのお話は小説だ。小説家が書いたから。

 でも詩人という概念も買ってしまった。これは大きな失敗だ。

 大きな失敗は苦い味がする。苦い味は忘れない。

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少女に、芸術と人生について語る小説、『さよならを云って』も連載しています。
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