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レールを叩くと

 気動車の走るレールをなにか硬いもので叩く。今回は手近にあった瓶の底の角で叩いてみる。しばらく時間が経ってから、山よりも向こう、僕の行ったことのないくらい遠くで、透明な音が鳴る。

 カァーーーーーーンッ。

「なにをしてるんですか?」

「これは……なんだろうね。音が鳴るんだ」

「それは聞いていればわかりましたけど」

「きれいな音だ。僕がだした音じゃないみたいに」

「わたしもやってみていいですか?」

 後輩は僕の手から瓶を借りてレールを叩いた。

 カァーーーーーーーーーーンッ。

「僕のよりも伸びがいい」

「それに和音……DM7でしたね」

 僕も後輩みたいな音がだせないかなんども試してみたけど、だめみたいだった。音は生まれもったものなのか。すこしだけざんねんだった。

 後輩は僕の丸まった背中を双子のようにさすってくれた。さすがだ。

 もう帰ろうかと後輩といっていると、山のほうから数えきれないくらいの茶色い影が地面をすべるようにしてやってきた。

「イタチだ!」

 彼らはめいめいにおしゃべりをしながら、歴史的な速さで僕と後輩のもとに向かってきた。

 僕たちはつま先立ちになって、イタチが足元をすぎ去るのを唖然としながらバイバイした。

「わたしたちのだす音に驚いて山からでてきてしまったのでしょうか」

「こんど会ったときに聞いてみればいい。彼らはしゃべるのと走るのが大好きだから」

「イタチさーん! どうして山からやってきたんですかーっ!」

 後輩の大声はイタチたちに届いただろうけど、彼らはもう姿がみえないところまで走り去ってしまっていた。

 僕たちは楽しくなってしまって、大人なのに全力疾走で無人駅まで帰った。なにかをしゃべった気がしたけど、どれも聞こえなかった。音は置き去りになったのだろう。

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少女に、芸術と人生について語る小説、『さよならを云って』も連載しています。
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