7 ゆ、愉快犯…
誤字報告、誠にありがとうございます。
前回に続き、大変申し訳ございません。今回はしっかりと確認しましたので恐らくないかと思います。すみません。
布団から出られないような、寒い朝。二度寝をしようと丸くなる体を起こして、朝の支度を済ましていく。窓の外は清々しいほどに快晴。だが千夏の心は憂鬱で気分が曇り空だ。
(薬を入れた犯人は、おそらくあの人なんだろうけど、会いたくないなあ)
千夏達が疑っているのは、京花の兄の裕貴。彼は重度のシスコンであり、千夏の苦手とする人だ。その理由は幼稚園時代まで遡る。
千夏が初めて京花の家に遊びに行った時。千夏と京花と裕貴で遊んでいたのだが、京花が親に呼ばれ二人きりになってしまった時事件は起こる。
「ねぇ、千夏君」
「? なにー?」
「君はうちの妹とどんな関係なのかな?」
「ともだち!」
「そうか、じゃあ妹を大事にすると誓ってくれ、あと恋人になろうとかそんなこと考えるんじゃないぞ。それと、妹が嫌がることをさせるんじゃないぞ。さて、君のことも聞こう、何が好きかな、何が嫌い、好きなことは、他に仲の良い友だちはー」
「う、うわぁぁぁん!!! おにいちゃんこわいー!」
目に光のないシスコンの質問攻めに、恐怖し千夏は泣き出した。泣き声に親の紗由理は千夏にかけより、慰める。裕貴の母も何があったか問い詰めるも、へらへらとお話ししただけと言い、理由は分からず。
小さい子供を泣かせた裕貴、後に一部始終を見ていた京花に、「おにいちゃんきらい!!」と言われることになる。小学二年生ガチ泣き事件、発生である。
それ以来、千夏は裕貴に苦手意識を持つようになったのである。それは高校生となった今でも拭えないものだった。
「はぁー、約束まであと…六時間もある。ゲームしよ」
定位置のソファに座り、ゲーム機の電源を入れる。一週間前、ゲームを買ったばっかりなのだ。朝からゲームかよと思うかもしれないが、朝のイベントとかあるから許してくれ。
カチャカチャとコントローラーの音とゲーム音だけが響くリビングに、別の音が混じり初め、美味しそうな香りがリビングを満たした。
その音や香りを合図に、千夏はゲームをやめ、母を手伝いにいく。朝御飯は焼きたてのパンに目玉焼きとウインナー、サラダがついている、よく見たことのあるものだった。
パンにバターを塗りながら、ニュースを流し見る。何気ない朝の時間を過ごし、朝食を食べ終わると、千夏は暇すぎるが故に嫌いな教科の勉強を始めた。
カチカチカチ……
秒針が進む。勉強を開始してから、一時間以上経過したため、勉強を終了した。時計を見ると、もう十二時。そういえばお腹が減っていたと思いだし、またリビングへ。
昼御飯をペロリと平らげ、だらだらと過ごし、約束の二時まで十分前。京花の家に集合なので、歩いても余裕で間に合う。ということで重い腰を上げた。
ピンポーン
扉が開かれる。開けたのは約束した相手、京花だった。他の家族が出てこなくて少し安心した。
「上がって、話はつけてあるから部屋に来て」
裕貴さんの部屋の前に来た。ノックをする。…ノックをする。
「早くしなさいよ」
「わ、分かってるって。いくぞ」
呆れる京花にせかされて、俺は覚悟の出来ないままドアをノックする。
コンコン
「失礼します」
「ち、ちょっと待って、一瞬、一瞬だけだから!」
焦ったような声がして、千夏はドアを開く手を止めた。バタバタと騒がしい音がして、勢いよくドアが開かれる。
「どうぞ」
「し、失礼します」
部屋の中は意外と片付いていて、本棚をちらっと見てみたら、料理関係の本がズラーッと並んでおり、丁寧に付箋までついている。料理好きなのか。確かにあのチョコは薬のことを抜きにすれば、欠点は何一つなかった。
部屋を案内する裕貴さんの背中を見る。一見優しそうな彼は、本当に薬を盛ったのだろうか。だとしたら何故?
机を挟んで座るやいなや、京花は遠慮なく切り込む。
「ねえ、裕貴。渡すチョコに何か入れたよね?」
「勿論入れたさ」悪びれもなく裕貴は肯定し、口をとがらせる。「だってずるいじゃないか、京花からチョコを貰うなんて羨ましい。なあ千夏君」
「…はい。最初から気づいて?」
「まあね、そろそろ来るだろうと思ったよ。京花、ちょっと席を外してくれない?」
「変な事したら口利かないから」
「分かったよ」
京花が出ていった。行かないでくださいと嘆願したいほど辛い。何をされるか分からない。冷や汗をだらだらと流しながら、視線を合わせないように下げる。
沈黙が数分続き、その空気に耐えかねたのかお茶持ってくると言い残し、出ていってしまった。京花に席を外すよう指示したから何か言われるのかと思ったら全然話してこなかった裕貴に困惑する千夏。今のうちに話したいことをまとめておく。
温かい緑茶を持って帰ってきた裕貴。あんなことがあったから、お茶に何か入れてあるんじゃないかと疑ってしまう。
「別に女体化する薬を入れてる訳じゃないし大丈夫だよ。信じられないかもだけどね」
「いえ…。あの、何で女体化する薬を盛ったんですか?」
「偶然作れてしまったんだ。それで試したくて、つい」
「ついって何だよ! ついって!!」
"つい"で振り回された千夏はそんなことで、と立ち上がって抗議した。この人、やばい。少し落ち着いて床に座り直す。
「いやぁ、いいものを見させてもらったよ」
「まさか見てたんですか!?」
「ちょっと。反応が面白いからまた何か薬を盛りたくなっちゃうね。ああ、やらないから安心してね。妹に嫌われたくないから」
「信じられないです。というか戻してくださいよ、これ」
「どうしようかな~?」
詐欺師のような笑みを浮かばせ、千夏を見る裕貴。絶対にこの状況を楽しんでやがる。手のひらで転がされている気がして、悔しく思う。茶を飲み干し落ち着かせる。
「何か目的でも?」
「あ~。じゃあ妹の事をどう思ってるかだけ聞かせて」
「? はい。大変だったとき助けてくれたり、ふざけあったり、いい幼馴染みです」
「そうかそうか、じゃあはい戻る薬。寝る前に飲んで」
「ありがとうございます」
薬を二錠もらい、部屋を出る。最後の質問は何か意図はあるのだろうか。考えながら京花を探す。とりあえず元に戻れることになったので、報告に。
探しても探してもいない。家で電話をかけるのもと思い、リビングへ。物音がしたので誰かいるみたいだ。
「すみませーん」
「はーい、あなたは?」
「暁知世と申します。京花さんはどこにいるか分かりますでしょうか。」
「うーん、外には出てないと思うんだけど…。まあそのうちここに来るわ。そこに座ってて」
「は、はい」
椅子に座る千夏。落ち着かない様子で座る千夏に京花の母、春花はお菓子をだす。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
厚意に甘えて、お菓子をつまむ。美味しい。そんな千夏をにこにこと見つめる春花。気まずくなって聞いてみた。
「あの、何か?」
「ああ! ごめんなさいね、女の子の友だちがうちに来るなんて珍しいから」
「友だちをあまり呼ばないんですか?」
結構クラスの人と遊んでいる印象があったんだが、女子はそういうものなのか。京花を待っている間、春花さんと話を続けた。少したった頃、京花が帰ってきた。
「知世、母さんに何か言われた?」
「いや、何も」
「よかった。そうだ、外にいこ」
「分かった。ありがとうございました春花さん」
「またおいでね」
外に出て、歩きながら話す。
「どうだったの?」
「薬を貰えたよ。明日にはもう元に戻ってるさ」
「よかったわ。ごめんね、うちの兄が」
「大丈夫」
俺の家まで送ってくれた。申し訳ない。この後は宿題をしたり、夕飯を食べたり風呂入ったりしてだらだらと過ごした。
そして夜。裕貴さんにもらった薬を言いつけ通り、寝る前に飲む。直後に何か起こるのか警戒したが何もないようだ。コップを戻しに部屋から出たら不意に力が抜け、崩れ落ちた。
薬は眠くなる物も入ってるみたいだ。それにしても強すぎだろ。強い眠気に襲われ、瞼が段々と閉じていく。階段をかけ上がる音がし、強い既視感にも襲われながら眠りについた。
裕貴にさんがあったり無かったりしますが、さんがついているのは主人公視点です。
ポイント評価、ブクマ、誤字報告。本当にありがとうございます。モチベに直結します。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




