5 初登校?
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これからも頑張りますので完結まで見てくれると嬉しいです。
小鳥がさえずり、窓からは水色の空が見える。目が覚めて時計を確認すると、六時でまだ余裕がある。支度をして、なれない制服に顔をしかめているところだ。
鏡を何度確認しても女のまま。男物じゃない制服。あと数時間で始まる学校に気が重くなる。九ヶ月以上も過ごした学校に新入生として入るなんて。
朝食を食べ、テレビを眺める。だいぶ時間があるので家でくつろいでいる。ソファの上で危うく二度寝しようとしていた千夏の耳にチャイムの音が届いた。
「はいはい」
ドアを開けると、京花が待っていた。何故だろうか。まだ遅刻するような時間でもないのに。訳を聞こうとしたが急いでと言われ、外に飛び出した。どうしたんだろう、まだまだ時間はあるはずだが。
学校まであと半分くらいまで歩いたところで、ようやく理由を聞けた。
「待て待て、何でこんな急ぐんだ?」
「千夏のことで学校から呼ばれたの。あなたにも連絡が来てると思ったのだけど、見てなかったのね」
京花の話によると、俺の体のことについて学校で話し合うから普通の生徒より早めに来てくださいということだった。何もこんなに早くなくても。
学校についたのは六時五十分。連絡によると七時開始らしいので間に合ったようだ。昇降口で上履きに履き替え、職員室へと急いだ。
コンコン、ガラガラ
「「失礼します」」
先に来ていた光樹に手招きされて、席につく。先生たちが目を開いて千夏を凝視するのは大変異様な光景だろう。席につき、数分後に校長先生が来て、会議が始められた。
「暁さんはいつからその状態に?」
「一昨日の朝です。チョコを食べたらこんな感じに」
「そのチョコは誰が送ったのか分かりますか?」
「いえ、わかりません」
「前日、暁のお母様から連絡があったのですが、新入生という設定でいいですか?」
「はい。事情があるので。」
「では、着替えの時はその、職員室の個室でお願いします」
「はい、もちろんです」
注意事項やその他諸々を決めて会議が終わったのは八時だった。会議から解放され、教室に戻った。新しい生徒とあって好奇の目線が一気に向けられる。しんとなった教室はすぐにがやがやと騒ぎ始めた。
HRが始まるまでまだ時間があるので、三人で話して時間を潰していく。クラスの人達は千夏に話しかけようとしているが、三人で話しているので入り込めずにただ眺めていた。
ガラガラ
「おーい、皆席につけ~」
先生の一言で皆が自分の席へと戻る。先程の騒がしかった教室と一変し、静かになった。先生は後ろを向き、黒板に俺の名前を書き始めた。そこには千夏ではなく知世の名前になっていた。
「皆聞いてくれ。この休みに千夏が事情があり転校した。それと入れ替わりに転入生がやって来た。こっちにこい」
「は、はい」
ガラッと椅子を引き、教卓の前まで来る。視線が体に突き刺さる。今まで以上に緊張し、手足の震えが止まらない。顔が引きっていないか心配だ。
「初めまして、暁知世と言います。これからよろしくお願いします」
「えー、同じ暁だが関係ないからな~。じゃみんな仲良くしてやれよ。席は千夏のところで構わない」
上手くやれた方、だと思う。
暁は頬に手を当てながら席に着く。先生の話を聞き流していると、朝のHRが終わったようだ。次の時間の用意をしようとすると、クラスメイト達に囲まれて出来なかった。
それからは自己紹介、質問攻めにあった。何が好きとか趣味はなんだの色々と。昼休みにお弁当を一緒に食べようと誘われた。緊張して何も喋れなくなりそう。心が豆腐メンタルだから。
その他は特に何事もなく時間が過ぎていった。授業がまあ大変。結構な確率で当てられるから、分からないところはこっそり教えてもらったりしたよ。ありがとう皆。
お昼休み。四時間目に死にそうになったが何とかこらえ、約束した三人組と机をくっつけて弁当を食べる。
一番最初に話し始めたのは活発な、ショートヘアーの福屋さん。名前は知っているけどあんまり話したことが無い人だった。
彼女は机をバンと両手で叩き、席から立ち上がって話し始める。
「まずは自己紹介からね! 私は福屋あこ。好きなことは走ること、嫌いなことは勉強! これからよろしくね知世ちゃん!」
「よろしく、えっとあこちゃん?」
「あこでもあこちゃんでも、呼びやすい名前でいいよ」
このあこちゃんは勉強が嫌いなせいで補習の常習犯だ。いつかの数学のテストではゼロ点という数字を叩き出したことがある。
だが好きなことには真剣に取り組み、陸上部の彼女は三年生の記録を軽々と越えて、次期部長になるのではと言われている。
次に自己紹介したのは、ポニーテールの河西さん。彼女もあまり話したことが無い。たしか話したのは図書室だったか。自分の好きなマイナーな本を読んでいてつい喋りかけた。まさかあの本を俺以外が読むなんて思っていなかった。本当に誰も借りていなかったから。
三十分もこの本について話し合った。自分とは違う解釈、感じかた、考察。全てが新鮮で楽しかった。でも話したのはこれっきり、あとは全然話さなかった。
「次は私。私は河西桜、好きなことはゲーム、読書。嫌いなことは整理整頓。これからよろしく、知世」
「よろしく、桜…さん。」
「さんつけなくても良いのに」
「あはは…つい癖で」
「名前で呼ばれるよう頑張るね」
初対面でさん付け無しは厳しい。親友の光樹だって呼ぶのに一年はかけたかな。謎の気恥ずかしさがあってなかなか難しい。
最後に自己紹介するのは、赤い眼鏡をかけた日比野さん。ロングヘアーで、委員長みたいな見た目をしている。
「初めまして、日比野蒼葉です。好きなことは絵を描くこと、嫌いなことは運動。これからよろしくね、知世ちゃん」
「よろしく、蒼葉ちゃん」
「よろしく、あっそうだ知世」
「何でしょう?」
彼女は俺の耳に近づき、そっと囁いた。突然のことで肩がビクッとした。
「放課後、二人っきりで話したいことあるから来てくれる?」
「は、はい」
一体、何を話して何をするのだろう。新入生と二人っきりで。ひょっとしてばれたのか? それともここで話しづらい何かがあるのか。弁当を食べながら話している時も授業の時も、頭のなかはその事で一杯だった。だってあんなこと言われたことあるか?
断言しよう。十何年生きていてあんなこと一度もない。
□ □ □ □ □
問題の放課後。恐る恐る場所に行くと、彼女はいた。壁に寄りかかる彼女の姿はとても綺麗だった。彼女に見とれていると、俺に気づいたのか歩み寄ってきた。
「ちゃんと来てくれてありがとう、知世」
「どういたしまして…? えっと話したいことって」
「あのね、暁千夏って知ってる?」
「私が来る前に転校した人だよね……それがどうかしたの?」
まさか本当にばれたんじゃ。内心冷や汗どばどば出ている。初日にして何かやらかしたのか俺は。蒼葉は何か考える様な仕草をしたあと、何かを探るように次々と質問した。
「京花とはどんな関係?」
「と、友だちです」
「そうなんだ。いつから?」
「え~っとに、二年くらい前かな」
「そう、わかった。ありがとう」
突然の質問攻めに驚きつつ対応していると、また考え込み、こう告げた。
「知世。あなたは千夏ですね?」
「えっ? な、何を言っているの?」
「実は職員室の会話を聞いちゃって。チョコ食べたらそうなったんでしょう?」
「…………はい。そうです。」
本当にばれていたなんて。初日で身バレ、学校で。やっぱり防音室でやるべきだったか。やばい脅される。女装野郎って。姿も声も何もかも変わっているのに、何故わかったのか問い詰める。
するとさっきまでじっと目を合わせてきたのに、そーっと視線がずらされる。同時に彼女の掌が、俺との間に壁を作る。
「そ、それは……」
「言えないこと?」
「うっ……だ、誰にも言わないでくれる?」
彼女はしつこいくらい確認を取ると、おずおずと話し出す。
「そ、その元々人間観察が好きだったんだけれど、半年前くらいに佐倉さんに一目惚れして、それから毎日見ていたんだけれど」
「ま、毎日」
「佐倉さんのことを知っていくうちに、何時も隣にいる暁さんの仕草の癖とか覚えちゃって、昼休みの時確信したの」
「えっまじか」
彼女、光樹が好きだったらしい。確かに言われてみれば見かける機会がたくさんあった。外で食べていた時も、買い物をしていたときも偶然会っていたのはそういう事だったのか。
呆然としている俺を置いてけぼりにして、彼女はそれに続きあのことについてを告げる。
「実は私、弥生と友だちなんだけど、あなた二つチョコもらったでしょ? 一つは弥生の」
「え、そうなのか」
「そう、別れた日に自分のしたことを反省して、あなたと決別するために手紙と一緒に送ったみたい。だから、その、あなたが女体化したのは弥生のせいじゃないことは分かって欲しい。信じられないかもしれないけど」
「……手紙?」
「…知らないの?」
「う、うん。見たこと無い」
俺が見たのは"あなたのせいです"みたいな注意書きだったし、今の話を聞く限り、弥生はやっていない。となると女体化したのはもしかして京花が? まさか、そんなはずは。
この日はチョコの箱をもう一度調べに、急いで家に帰った。出されたはずの手紙、あの説明紙、謎の薬。気になることがありすぎる。
絶対に犯人を見つけて見せる。
読んでいただきありがとうございます。次話も読んでくれたらとても嬉しく思います。
誤字が凄くありました。指摘してくれた方、本当にありがとうございます。
編集いたしました。




