56話 伏兵、タイフーンファイター③
(わからない!あいつは何をした!?)
急に顎がガチンと閉まって舌を噛んだダブルガイザス。この現象は目の前にいる本来いない人間、まだ生まれていないジャスティスの子トッシュの仕業だとすぐに察しはついたが、わからない。なぜこの子が『18年前』の世界にいるのか。ではない。委員会の秘密基地でのファーストコンタクトの頃からそうだった。トッシュの思考が読めていないのだ。
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ガイザスセンチネルで読むトッシュの思考は相変わらずわけがわからない。わかるのは一つだけ。おそらくジャスティスが脳内で使っている言語と同じだということだ。ジャスティスは我が子にこの未知の言語を伝えていたのだろう。心を読む余という強敵の再来のために。さすがは勇者、油断ならぬ女よ!
余談であるが、ジャスティスが日本語をトッシュに教えていたのはただ、ただ故郷へ思いを馳せるジャスティスが故郷の言葉を話したかっただけ、ではあるが。結果オーライなのでヨシだ。
(おそらくは奴も余と同じく未来から来たのだろう。そして余の口を塞いだタイミング。体は動くことを考えると、奴はじっくり余の体を支配するつもりだったが、正体を知られることをよしとしない奴は焦って顎だけ閉じたということか)
ほぼ正解である。あとはどうやって顎を塞いだのか、どうやってそれを可能としたのか。グランガイザスは知らないが、ダブルガイザスは少しだけ知っている。筋肉の聖石を持つグランガイザス(コピー)に襲撃させた八卦の、その天の力。敵の肉体のエネルギーをわが物とする八卦の奥義。それをトッシュは1ヶ月ちょいで身に付けたということだろう。
これもほぼ正解。一つ異なるのは、これは八卦の奥義『天』ではなく、トッシュオリジナル八卦の『烈』である。自分の闘気を混ぜ込むことで、自らの支配に置くこの技を応用し、霊脈に混ぜ込んだ闘気をダブルガイザスに吸い取らせることで体を支配する。八卦の天をちらっと見せてもらったトッシュは烈で天を再現したのだ。
(野郎に感じた違和感を調べるために、霊脈に自分の闘気を流して奴の体を調べた結果、奴の内部に存在するもう一人のグランガイザス。そしてその副産物として、奴の闘気や肉体をある程度支配できる。しかし、決定打が無い。霊脈に自分の闘気を流して、奴に少しずつ吸わせている緻密な闘気コントロールを必要としているせいで攻撃に闘気コントロールをまわすことができない。)
そして、ダブルガイザスが動く。繰り出す技はガイザススターバーストスクリーム。ジャスティス相手にも見せた超出力ビーム。どんな卑劣な手段であろうとも、純粋なパワーの前には無力!これで小さな塵になってこの世からお別れ!リトルアディオス!
ブリリリリィ!とごん太ガイザス交戦はトッシュの目前で不快な音を立てながら避けるチーズの如く割れる。
「何ィ!」
グランガイザスもびっくりして声を上げる…声?
「あっ!喋れるぞ!お前の正体は…!」
またもガチンと顎を塞ぐ。また勢いよく舌を噛む。なんてひどい男だ。これでは戦いの後に舌に口内炎ができてしまう。口内炎はとても痛いのだ。
「安心しろ。口内炎になる前に死ねば口内炎はできないからな」
「ほざけ!」
トッシュとダブルガイザスのやり取りを聞いていた、当然ジャスティスはトッシュの正体になにか秘密が隠されていることを確信する。トッシュのことを言おうとすると顎が急に塞がれているのだ。トッシュがダブルガイザスの敵なのは間違いないようだが。
(気になるわねあの子のこと。私と似た闘気だし…)
ジャスティスがそんな疑念を抱いている様子を、トッシュも悟る。さらにはこの世界から引っ張り出そうとしてくる謎の力も徐々に強くなってきている。嫌が応にも焦りが出て来る。ダブルガイザスの闘気に自分の闘気も交じっている関係上、ダブルガイザスから発せられる闘気技を当たらないように操作することはできるが、攻撃がうまくできない以上、このままではじり貧だ。本当の天なら、グランガイザスの闘気を完全に支配して奪えるのに。ないものねだりはしてもしょうがない。配られたカードで戦うしかできないのが、人生だ。
(ジャスティスたちを捨て石にして得た情報だが、ジャスティスたちの攻撃が無いとどうしようもない。なんというアンチノミー…いや、俺はそんなに弱くない!俺の持つカードで一番信頼できるものを!)
ダブルガイザスの肉体を一瞬、ほんの一瞬支配する。その支配に体が硬直した一瞬のスキを狙って、トッシュのもっと信頼できるカード…暗黒真拳を切る!無限とも思える再生力を持つ相手に使う技は打撃ではなく、極め技!選んだのは卍・サブミッション!ダブルガイザスの体にまるでタコのようにトッシュは絡みつき、その体を締め上げる。この状態ならば、再生力は意味を為さない。ただ関節を極めるその痛みが続くだけ。再生力はあっても痛みは無くなっていないのだ!
「このまま俺の闘気でお前を内側から爆裂させる!」
「何ィ!そんなことしたらお前も死ぬぞォ!」
「じゃあどうしろっていうんだよこのハゲ!」
「うるさい大人しく殺されろ!俺はハゲじゃねぇ!」
ぎゃーぎゃー言い合いながら絡む合う二人。このグランガイザスの動きが止まった瞬間を、彼らは見逃さなかった。
「風…?」
ジャスティスが、不意に感じたその風。不自然な方向から吹いてきたその風は、直上から降り注ぐ空気のメテオ!そして風は運ぶ。烈風、疾風、そして強風!嵐の三兄弟!
『大!刃刕釼ソード!』
3つの風が一つになり生まれた100万パワーの嵐が、ダブルガイザスをズタズタに引き裂いた!