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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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55話 零秒②

 空間に開く黒い孔。その奥に何があるのか誰にもわからない。ただ一人、パーフェクトガイザスを除いて。


「スキッピングキャストォ!」


 ズボっと空間に空いた穴におもむろに右腕をつっこむパーフェクトガイザス。すぐにその腕を引っこ抜く。入れる前には何も持っていなかったその手には、グランガイザスが先日大時間魔術で呼び寄せたまだティーンだった頃の聖女サンが掴まっていた。


「え!?なに!?なに!?」


 突然空間が暗転し、視界にとらえていた景色が一変したため事情が呑み込めず混乱するサン。


「聖女サン一発ゲット!」

「え!?グランガイザス!?」


 サンは自分を掴むその腕がグランガイザスのものだと気付く。グランガイザスが取り寄せた、まだうら若い(しかし既に中古)のサンにとって、グランガイザスとの死闘はつい2年ほど前の出来事だ。あの戦いの記憶が薄れるには短すぎる。グランガイザスを前にサンの闘志に火が付いた。


「グランガイザスではない!パーフェクトガイザスだ!」

「うるさい知らない!死にぞこないのクサレガイザスめ今度こそ成仏させてやる!」

「吠えるな小娘…おっと、もう大人だったな失敬。それよりも、貴様の力を見せてもらう!」


 ドクン!サンの胸に大きな動悸が響く。何かがサンの中に侵入してくるのがわかる。あの日グレゴリオに侵犯を許し、散らされたあの忌まわしい不快感に勝るとも劣らないそれは、グランガイザスの力。グランガイザスの数多ある秘密能力の一つ、神経の力。掴んだ相手の神経を掌握し、グランガイザスの傀儡にしてしまう恐ろしい力だ。自分が自分でなくなる恐怖がサンを脅かす。


「フフフ、さぁ聖女よ!いや、大地に愛されし巫女よ!貴様の開かれたその秘穴を通して、大地と大気の力を我によこせ!」


 これこそ聖女サンを呼び寄せたグランガイザスの狙い!大規模な時術を行使するにはグランガイザス個人の魔力では余裕で足りない。グランガイザス特融の闘気である炎魔気を合わせたところで焼石に目薬。さして効果が無い。ならば大地と大気の自然エネルギーである霊気を使うにしても、大規模な儀式を要する。故にグランガイザスが欲した、自然エネルギーをわが物とする手段。


 …それが八卦・天である。残念ながら八卦・天の奪取は失敗したが、グランガイザスはもう一つ、過去渡りのための手段を講じていた。それがティーン時代の聖女サンの力である。サンは大地に愛された巫女であり、自然エネルギー霊気と100%同調することができる。驚異的な速さで八卦・雷をマスターしたのも、この才能があるからにほかならない。ちなみに現代のアラサーになったサンことマユではもはや力が失われている。やっぱり巫女は若くないといけないと、地球さんも言っているようだ。


 空術の使い手でるイクスシェイドのジャミングのせいで空間転移による呼び出しが使えなかったが、グランガイザスの分身たちが集まり完成したパーフェクトガイザスのガイザスパワーならば、時術の応用で空術を再現することも可能!すなわち、ここに聖女サンを文字通り手中に収めたことで、グランガイザスの大いなる計画、ダブルガイザスプランが発動する!


「来い!来い来い来い来い来い!来た!来た来た来た!来たァ!」


 グランガイザスに集まる超自然エネルギー!これにより時術による時間移動を発動できる!本来時間移動は難しい魔術である。空間的に、地球は常に動いている。地球は太陽の周囲をぐるぐるしており、太陽は太陽系の惑星を手下の様に引き連れ銀河をぐるぐるしており、その銀河もあらゆる星を藪蚊のように内包して宇宙をぐるぐるしている。まるで4歳くらいの子供の様に一か所に落ち着かず常に動いている過去の地球を目指すのは、どれほど難しいか想像するのは難しくない。子供は目を離した隙にいつの間にか消えるのだから。


 空術による空間移動は今この地球の別の場所に移動するだけだが、時術による時間移動はどうか。それは目指す過去の宇宙空間から今地球がどこにあるのか座標を割り出し、目算を付けて移動するという超難易度である。適当に移動したら宇宙空間にほっぽり出されるのがオチだ。


 グランガイザスは長い年月をかけて過去の地球を見つけ出し、その地球からサンを呼び出すことに成功した。この時過去の地球にマーキングをしたグランガイザスは、今の地球の位置と過去の地球の位置からある程度の時間帯における地球の位置を算数により割り出すことが可能となった。今回はグランガイザスがジャスティスに敗れ、人間に寄生し生きながらえたあの日を目指す。あの日あの時あの場所で、グランガイザスに出会えたなら、パーフェクトガイザスはいつまでも最強の二人(ダブルガイザス)のまま…でいられる!


「開け門!タァイムワァープ!」


 上空4mの空に開いた空間を穿つ孔。その穴は先ほどのスキッピングキャストを突っ込んだ孔とは全く異なる闇と光が渦巻くまるで宇宙であった。その宇宙を超え、パーフェクトガイザスは過去へと飛ぶ!その跳躍を阻止戦とする魔王軍の戦士たちを食い止める案内人アストレイたち。パーフェクトガイザスの発したプロトタイプという単語でジャスティスは体が動かない。


「さらばだ諸君!パワーアップした暁には、余が全ての時空を征服してやるから楽しみにしておるが良い!」


 ヌポッと上空4mの孔に姿を消したパーフェクトガイザス。そのつま先が孔に消えたのとほぼ…否!全く同時!タイムラグなしの0秒!空間をバリーンと砕き、パーフェクトガイザスを足蹴に何者かが今までパ^フェクトがイザスがいた場所に降りてきた!


「ぐわああああ!おのれえええええ!邪魔をしおってええええええ!」

「お!?戻ってきたか」


 パーフェクトガイザスを足蹴にするその声を、イクスシェイドは知っている。その姿を、サガは知っている。その志を、伊集院英雄は知る由もないが、今降りてきた男の名。かつての魔王軍・不死の軍団長!そして勇者ジャスティスの長子!


「トッシュ…!」


 我が子(トッシュ)(18歳)を呼ぶ母(10歳)の声。トッシュが18年の時を超えて帰還したことを知る者はここにはパーフェクトガイザスを除いて知る者はいない。

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