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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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54話 猛獣!ブラスターアームオオカミ!②

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「猛獣って…誰が言ったんだよ」

「そうね…この子たち…」


 四国大陸最大の肉食獣、ブラスターアームオオカミを周囲に取り囲まれたトッシュたち一行。彼らの目に入る猛獣の姿は予想外なものだった。


「ハッハッハッ」

「かわいい…」


 ジャスティスにおなかを見せて尻尾をばたつかせる子、サンの周囲をせわしなく飛び跳ねながら尻尾をぶん回す子、アッシュになでられながら尻尾を振り回す子、そしてトッシュに抱っこされながら尻尾をうれしょんで濡らす子。もはや犬である。人家の家畜を襲撃するような猛獣には到底見えない。完全に安全な生き物にしか見えない予想外の姿。


「しかしあいつは尻尾を振らないのな」


 ブラスターアームオオカミの群れを率いているボスらしき狼は、高台から彼らを一望するのみである。手下を人間に懐柔された嫉妬の眼差しではない。その瞳には、明確な目的が感じられる力強さがあった。


「しかしあの姿…お姉さま…」

「ええ…予想外ね。おそらくこの子たちは森の縄張りを追いだされたに違いないわ」


 ブラスターアームオオカミたちにはまだ言えぬ傷があった。それは人の罠によるものではない。明らかに大型の何かに受けたものだ。


 ふとボスオオカミが高台から飛び降りる。トッシュたちを睨むのとは違う、何かを訴えるような眼差し。そして彼は背を向け、森の奥へと歩みを進める。ゆっくり、ゆっくりと。逃走とは違うその歩みが物語っている、彼の目的。


「ついてこい、ってことかしらね」


 ジャスティスが呟くと、ボスオオカミは歩みを止め、またも一行を見つめる。


「行くわよ」


 ジャスティスが、そして一行から外れたグレゴリオを除く3名が前進する。その動きを確認し、ボスオオカミは前へゆっくり歩きだす。


「たぶん、魔族か魔獣でもいるのだろう。グランガイザスの手下の五十人衆ステイツの一人を討つほどのブラスターアームオオカミの群れをここまで痛めつけて縄張りから追い出すほどの、何かが」


 アッシュは腰に差す魔剣ブラックソード・ゼロの柄を握りしめる。この魔剣は先日の決闘後にトッシュから譲り受けた。トッシュと交した約束を守ために。

 ・

 ・

 ・

「アッシュさん、アンタに頼みたいことがある」

「なんだギャミくん、藪から棒に」

「俺は、いつまでここにいられるかわからないからな。アンタにこれを渡しときたい」


 トッシュは魔剣ブラックソード・ゼロをギャミに差し出す。その行為の意味は、この魔界でソードドラゴンVに匹敵する名声を誇る魔剣をやる代わりに何かを頼みたい、ということに他ならない。


「…何を、頼みたいんだい?」

「…ジャスティスは、人類に裏切られる」

「!」

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 ・

(ジャスティスを裏切る人類の背後に存在するグライガイザスの影。そしてその先陣に立つグレゴリオ。グレゴリオの様子がおかしかったのも、もしかしたらそのためかもしれない。ギャミは…いや、トッシュと名乗る少年は、こう言ってた)


「俺は未来から来た。だから俺の話したことは誰にも言わないでほしい」

「未来…!?魔王グランガイザスの時術ですらも未来や過去に干渉するのは不可能だというのに!?」

「ちなみに俺のいた未来で、アンタの存在は全く語られていなかったからな。多分死んでるかもしれない。まぁ自分の身を護るためにもこのブラックソード・ゼロを持って行ってくれ。あ、ちなみにこれ魔剣ブラックソード・ゼロの偽モンだからね。俺がこないだ作ったやつだから」

「えー!?偽物で僕を懐柔するのかい!せめて本物をくれよ!」

「大丈夫たぶん本物より強いからこれ。使い方は…」

 ・

 ・・

 ・・・トッシュがこの時代に飛んできた一週間前の、18年後の未来


「な、なんだこれは!」


 手を差し伸べた魔王イクスの腹部を貫いたランの姿に、一番驚いているのはラン自身だった。脳内に直接語り掛けられるその声の主により、自らの意思に反し凶行に及ばされた。声の主は、間違いない。先ほどまでこの声を聞いていた。先ほど果てた、グランガイザスのものだ。


(ブヘヘ!俺はランゲルハンス島の聖石に宿るグランガイザス!パルパレオスのエイリアスボディはこの聖石の力によるもの!故に貴様はもう消えて俺になるのだ!本当はイクスのボディに移りたかったがどうやら適合しないみたいだからな。お前でいいや)


 腕を引き抜き、魔王イクスが倒れる。ほぼ同時に、一斉にランに向かってくるイクスの配下たち。を追い越して、何かがランに飛び込んでくる。それはランの身体に埋まり、根を張っていく。最後にイクスが破壊したグランガイザスの脳から飛び出したソレが、ランの頭を貫いた。


「あれは!?グランガイザスの破片か!」


 グランガイザスと戦ったジャスティスはすぐに察した。今まで戦っていたグランガイザスの分身たち。あれらはグランガイザスから別れた力の化身。それらが一つに集まるとき、グランガイザスは真の力を取り戻す。あのランという少年を器に、グランガイザスの力を再現したかつての魔王が。


(イクスさんをやるためにこんな回りくどいことをしたっていうの!クソ!)


 ランから迸る力が、グランガイザスの手下と英雄を吹き飛ばす。その力はかつてのグランガイザスの力の8割ほどに感じられるが、全盛期の力を取り戻す前のジャスティスの力はかつての5割程度に過ぎない。


「ワハハハハ!ふむ、筋肉と骨と肝臓と膵臓の力をなくしているが、まぁ十分だな。あとの脅威はジャスティスか…来い!案内人アストレイ!」


 グランガイザスの合図三人、グランガイザスの手下がやってきた。天空要塞グランガイザスの瓦礫に潜んでいたのだろう。そのうちの一人は、イクスシェイドに見覚えがあった。


「あれは…いかん!ジャスティス!貴様の力を再現したという奴の手下だ!」

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