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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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53話 流麗、花鳥風月③

「うぐううう…っ!」


 アッシュの7つに割れた腹筋に炸裂するマグナムブローの威力は、夕食どころか、3日前の朝食まで戻してしまいそうな威力!


「おおおああああああ!」


 トッシュはそのまま拳を打ち抜き、さらに体を回転させる!マグナムブローの勢いをそのままに、さらにもう一撃!暗黒真拳の浴びせ蹴り・「スパイラルシュート」がアッシュの警部を叩き、そのまま顔面を地面に熱くベロチューさせる!生きとし生けるすべての者の母、大地!禁断のヴェーゼ!


 まるで車に轢かれたイボガエルのごとくうつ伏せに倒れるアッシュ。ダメージは大きいが、まだ彼は諦めない。泥に汚れた顔を拭いながら、立ち上がる!


(くっ…!僕の剣は白刃取りのために手放したし、ブラックソード・ゼロは今ので落とした…。無手か…)


 顔をごしごししているアッシュを見下ろし、トッシュは尋ねた。


「アンタ、一番得意な間合いはどれくらいだ?」

「…?。…二間(4m弱)くらいかな?」

「そっか」


 トッシュはアッシュの剣とブラックソード・ゼロを手に後方へ跳ねる。トッシュが持って行った剣をどうにか取り戻さなければ、と考えているアッシュであったが、その足元にアッシュの剣が飛んできた。そしてトッシュが取った距離は4m弱。


「…何の真似だい?」

「いや。剣が無かったから負けたなんて言い訳されたくないだけさ」

「…見くびられたな。剣を放すという判断ミスをしたのは僕だってわかっているのさ」

「それでもだ。判断ミスしたから負けたなんて言い訳されたくない。全力の何の間違いもないアンタに勝たないとね」


 そうでもしないとこの黒騎士アッシュは諦めないから。そう直感が告げている。


「さっきの技でも、アンタが一番得意な技でも、俺が見たことない技でも、何でもいい。アンタが一番だと思う技を真っ向から打ち破る!この拳で!」


 トッシュの言葉に、アッシュは無言だ。それは無回答というわけではない。彼は構えを取ることで答えを示した。


「その構え…浮橋か?いや…」

「これはさっきの裏暗黒新陰流超伝・花鳥風月とは違…」

「それ以上言わなくていい」

「…説明をしたから負けたと言い訳されたくない、ってことかい?」

「そゆこと」

「そんな悲しいこと言わないでよ。知らない技だから負けたなんて言い訳されてもいやだしね。これは裏暗黒新陰流外伝・花鳥風月。さっきの超伝・花鳥風月とは違う、もう一つの花鳥風月さ」

「ほう…」

「超速の4連撃。見事躱してみなよ」

「いいぜ、勝つのは俺だ」


 トッシュは剣を上段に構える。連続攻撃なら、初撃さえ潰せばいい。そのために全力でこの一振りに打ち込む。


(上段…剣で僕を打ち落とすつもりか。しかし、僕はその上を往く!)


 裏暗黒新陰流外伝・花鳥風月は一から作った全く新しい技だ。雪月花を見せつけた暗黒新陰流の使い手相手なら、その不意を打てる超伝・花鳥風月の方が刺さりやすい。超伝・花鳥風月は所謂初見殺しという奴である。対して、外伝・花鳥風月は真っ向勝負に全力で挑む技。そのパワー・スピードは超伝・花鳥風月を優に上回る。


「…雷花閃」


 小声で技を告げ、身を落とし、力を両足に込め、そして、爆ぜた。その速度はまるで爆発。居合の構えを取っていたことから、速い踏み込みが来るだろうとは思っていたが、想像以上の速さ。蹴った地面が爆発したかのようなその衝撃。得意な距離がけっこう遠いなと思ったが、こういうことかとトッシュは納得した。この速度、近い距離だと抜刀が間に合わない。


 トッシュの目前で抜き放たれた超速の剣!トッシュは咄嗟に剣を振り降ろすが間に合わない!胴体を裂かれてしまった!と思った直後、その抜刀の勢いのまま回転したアッシュの二撃目!


「雷鳥舞い」


 さきほどのトッシュが魅せたスパイラルシュートのようなものだ。くるりと周り、その勢いのまま切り上げる!…が、その剣が斬ったのは空!トッシュの姿がない!


(まさか!)


 先ほどのトッシュの振り下ろした剣。あの技は風雪の太刀だった。ということは。


 雪月花を『見るの』はじめてだ。


 トッシュが言っていた言葉を思い出す。見るのは初めて。つまり今トッシュが魅せる技は極伝・雪月花!


 アッシュが背を見せている間に、トッシュは宙を舞っていた。暗黒新陰流極伝・雪月花の月。ムーンサルトで宙を舞いながら相手を斬る古月斬り。


(斬らずに舞ったのか!こちらの速さに対応するために!)


 と来れば、トッシュは着地と同時に雪月花の花、散花閃を放つに違いない。何をするかわかっているなら対応はいくらでも可能!トッシュの散花閃を、花鳥風月の風・雷風剣で迎撃する!いかに散花閃が速かろうと、風雷剣も負けていない。突風の勢いの如く、雷撃を落とす如く、剣を叩きつけるこの技なら!


(なっ!?)


 雷鳥舞いで振り上げた剣を、今度は風雷剣で振り下ろそうとしたとき、アッシュの頭上に黒い剣が降ってきた!危ない!刃物がこのまま落ちてきたらケガしてしまう!すぐに雷風剣の構を解き、その黒い剣、ブラックソード・ゼロを軽く弾き、すかさず風雷剣をまた構える。その隙を。トッシュは狙った。


「三花仙!」


 風雷剣が出る前に、トッシュは手刀で雪月花の花、暗黒新陰流奥伝・三花仙をアッシュにぶちかました!」


「グハァ!」


 ドス!ドス!とブラックソード・ゼロとアッシュの剣が地面に刺さる。そして一瞬の間を置き、アッシュの身体がドスン!と落下してきた。


「ふう…勝った」

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