52話 未来、終わりの始まり②
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ボトリ。1mほどの大きさの肉片が落ちた。場所は生物の気配無きヴァイスランドの奥地。氷と岩の世界。其れはは、四肢を失い、頭部を失い、多臓器不全により生命活動を維持できなくなるもはや命ではなくなる肉の塊。
だが、その肉は生きていた。生命活動を失おうとも、その自我は失われず。不死と謳われるもの、魔王グランガイザスだから生きていた。
(ギリギリだった…咄嗟に本体を収めるこの胴体を光の中から脱出させ…余は生きている!しかし、この損傷…このままでは復活できぬ…栄養を…この生命の気配なき地では栄養を摂れぬ…ぬ?)
グランガイザスは、この地に侵入してくる気配を探知する。それは人間。僥倖だ、この人間を巣に力を蓄えられれば…18年後に復活できる。ロイコクロリディウムが蝸牛を操るが如く意のままに都合よく使わせてもらうとしよう!
(人間…人間…聞こえますか…?)
「な…なんだ…!?脳内に直接…!」
(はい…いま貴方の脳に直接語り掛けています。こちらへ来るのです…)
グランガイザスナビにより人間を自らのいる場所まで案内するグランガイザス。ナビと同時に、体内で作り出した小さな小さな脳の素に『本体』を封入し、寄生の準備を整える。この脳の素…脳の聖石と名付けよう。これを植え込めば、その子はあっという間にグランガイザスになるのだ。
「こ…これは…!グロい…!」
グランガイザスナビにより連れて来られた人間は、まるで雪山から1kmほど滑落してきたような肉片に絶句する。驚きなのは、その肉片が語り掛けてきていることだ。
(人間…力が欲しいのでしょう?受け取りなさい)
体内で作り上げた脳の聖石。それはグランガイザスの脳に他ならない。故にグランガイザス脳の力、読心が可能。この人間が世に絶望し、死に場所を求めてここまで来たことは一目瞭然。絶望した人間こそ操りやすい。希望をちらつかせれば、ロイコクロリディウムに寄生された蝸牛を食べる鳥の様に、すぐ食らいつくのだ。
「力…そうだ俺は力を…」
そこまで言って、人間は息絶えた。
(…!?…何奴!?)
魔王グランガイザスの肉片は、突然その空間にやってきた存在を認識し、警戒する。子の存在は人間ではない。しかも強い。強さなら万全のグランガイザスと互角以上の魔力を持っている!
「そう警戒するな…余よ」
「何ィ!?」
「余はお前だ…未来のお前…魔王を超えた闇の帝…暗君パーフェクトガイザスよ」