51話 八紘、時の果て③
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「羨ましいわグランガイザス…種族が違っても同じ言葉を使うだなんて、私の世界じゃ考えられない」
「ふん!言葉が同じだろうが違かろうが種族の壁はどうしようもない!余が上で貴様らは下よ!」
「わかり合う努力もしないケダモノ…平和のためにあなたを討つわ!」
ジャスティスの先制攻撃!必殺・烈風聖拳突き!グランガイザスの懐に疾風のように潜り込み、腰だめに構えた拳をグランガイザスの顎に打ち上げる!そのまま天井を打ち破り上空へと浮き上がるグランガイザスは、そのまま背中の肩甲骨を変形させ翼を展開!空中で姿勢を整え、地面のジャスティスを睨む。
「空を飛ぶなんてずるいわね」
「お姉さま!これを!」
ジャスティスの仲間たちは五十人衆との戦いの最中ではあるが、サンは後衛で戦況を観察しているためジャスティスへの支援を実行する余裕がある。サンがランドセルから取り出したのは、空を飛ぶことを可能にする靴。五十人衆の一人テキサーヌと戦った際に入手したもので、航空魔術ヒューボトンが織り込まれた一品だ。装着した者に雄大な空へはばたく力を与える。この靴は素肌と密着していなければ効果が表れないので、履く際は靴下を脱がなければならない。
「お姉さまはやく靴下を脱いで!はやくちょうだい」
「わかってるわよ!急かさないで!」
剣幕なサンに急かされ、三つ折りのソックス(白)を脱いだジャスティスは、空飛ぶ靴を装着する。靴ひもを結び終えたジャスティスは、今まで履いていた靴下が見当たらないのを不思議に思うが、今はそれどころじゃない。すかさず空へと飛び立つ。
「よし…!これで私も生きて帰る理由ができたわ…!お姉さまの靴下…うふふ」
「おいサン!こっちば手伝えって!」
ステイツは全員が健在ではないが、それでも半数近くが残っている。数の力は圧倒的だ。グレゴリオは回復魔術を要求する。しかし回復魔術を使うと敵からのヘイトが集まるため、使える状況は限られている。乱戦のヘイト管理は重要なのである。サンは周囲を確認する。黒騎士アッシュと戦士グレゴリオがタンクとなり、ギャミ(と名乗っているトッシュ。以降ギャミと表記)が一人敵の中央で暴れてヘイトを集めているため十分と判断。自分から半径5mの範囲にいる者の体力を回復させる魔術ヒール・オブ・ドーミーインを発動する。このヒールは一流のホテルのベッドでぐっすり眠ったかのような疲労回復効果を発揮する上級回復魔術だ!
「ギャミくん!君もこちらに来たまえ!」
敵集団とボコスカウォーズを繰り広げるギャミのダメージを気遣い、アッシュはギャミを呼ぶ。が、来ない。聞こえていないのだろうか。いや、こちらの様子も確認しながら戦っている。聞こえていないわけではないようだ。
「ギャミくん!無理するな!こっちで回復するんだ!ギャミくん!」
何度も呼ばれてトッシュはハッとした。
「あっ、俺ギャミだったか!すぐ行く!」
(こいつ絶対偽名だろ…)
(この子絶対偽名よね…)
(辛子蓮根食べたか)
トッシュの言動で、もう偽名使っているのはバレバレであった。