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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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47話 死線①

 バッキン!バッキン!ギャミとランが交える剣戟は周囲の魔物たちすらも近づくことができない、まるで激しい剣の嵐。ギャミの暗黒新陰流の技に対し、正確に防御し、反撃を繰り出すランの技の冴えはトッシュを凌いでいる。そもそもランが身に纏うスクラムハルバードのメイン武装はその名の通りハルバードなのだが、そのハルバードではなく隠し武器の剣を使っている。これはトッシュには考えられないことだ。トッシュは使える者は何でも使うという姿勢で新しい技に手を出してはすぐまた別の技に浮気をする。自らの流派に誇りを持つギャミにとって本当に気に食わない子なのだ、トッシュは。


(こいつ、口ではふざけたことしか言わないが…暗黒新陰流の技に対する姿勢は本物だ。自らの剣に命を賭けるまさに正しき剣士の姿…!)


 全身に仕込まれている隠し武器を使う気配もない。もしかしたらそう思わせているだけで、油断した隙にファング手裏剣を投げてくるかもしれないが、その時は評価を改めればいい。


 ガキィン!くるくるくる、ザク!ギャミの手から弾かれた剣が宙を舞い床に突き刺さる。なおも剣を構えるランの残心にギャミは感心するばかりだ。


「勝負ありだね。降参はなしだよ、これは最早死合いなんだから」

「…そう思うなら、何も言わずに斬ればいいだろう」

「嫌味だね。死体に勝ち誇っても寂しいじゃない。生きているからこそ屈辱を体験させられるんだし」


 本当に口はよろしくない。せっかくの技の冴えだというのに。ランの正確に確実に着実にギャミを抉る剣嵐に、剣士として勝ち目を見失ったギャミは・・・・・・いや待て、まだ勝ちの目が無いわけではないとギャミは気付いた。正確。そう、正確なその技、言い換えるなら基本に忠実なのだ。最も相手の守りにくい場所を確実に狙うある意味わかりやすい剣。わかっているけど避けられるというわけではないが。だがしかし、わかっているからこそ、そこに勝機があるかもしれない。


「フッ、フフ…ッ!俺はまだ勝負を投げていない。貴様も暗黒新陰流を知っているならこの状況でも負けが決まったわけではないことはわかっているだろう?」


 暗黒新陰流極伝・無刀取り。トッシュが得意としていたその技。トッシュの再現であるランが知らないわけがないだろう。あえてそれを今からやるという挑発。ギャミが悟ったランの弱点を狙うには、まずは精神面への揺さぶり、口撃が必要だ。


「ふぅん…?君はそれを狙っているというわけだね。いいさ、やってみなよ。僕は暗黒新陰流最速の剣、浮橋で行くよ」


 ランは腰に剣を構える。所謂一つの居合というやつだ。疾風のように奔り一気に相手を切り伏せる弐の太刀不要の必殺剣。圧倒的な優位に立っていたランは気付かない。ギャミの口車に乗せられて五分の条件に陥ったことを。ギャミの無刀取りに対して優位に立てる技は他にいくつもある。それをするとわかっているのならば、たとえ極伝と言えども対処は容易なのだ。そう、つまりランもまた、ギャミにとって対処が容易な土俵に引きずり込まれた。


 しかし前提条件としてギャミが不利なことには変わりない。元々の剣技の差、剣と無手。ジャンケンで例えるならギャミはパーを出すと宣言し、ランはチョキを出すと言っているようなものである。ギャミはこのままパーで決戦に臨むのか。それともグーに切り替えるか。


 本来はここでグーに切り替えるのが普通だろう。しかしギャミはパーから変えない。ランの心にも迷いが生じている。自分は本当にチョキで言っていいのだろうか。直前でグーに変えられやしないのか。しかしいくら考えても相手の心の中はわからないものである。もし相手の心を自在に読める者がいたとしたら、とんでもなく破廉恥な奴だとランは思っている。絶対に犯してはならない領域というものが誰にもあるのだから。


(くっ、うっかり宣言したのは間違いだったかもしれない…!アイツはグーに変えるかもしれない…!でも、ここは予定通りチョキで行く!僕は逃げない!)

(お前がチョキで来ようがグーで来ようが関係ない!俺は俺の信じるままパーで行く!)


「いくぞおおおおおお!」


 二人が同時に叫び、そして…技がぶつかる!

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