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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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27話 触手!純潔を散らす性の魔獣③

 所詮、毒剣ヴェスピナエは昔の人(魔族?)が作った遺物に過ぎない。人類の知識技術科学は日々進歩しており、スズメバチ程度の毒しか持たないヴェスピナエなど魔獣相手に決定打には成りえない。刺した相手に刺されたような激痛を与える毒を注入するってバカかよとすら思う。今から見せるのはビィが発見した毒、扱いに注意しなければ自らの命すらも秒殺する、科学兵器。ふところから小瓶を取り出し、その液体を”取り出す”


 ビィには魔術の才能が無かった。彼もまた、ゼファーと同じ”持たざる者”であった。しかしゼファーと違い齢0.5歳にして割り算を完璧にマスターする知を誇ることから、彼は別の方面での活躍を期待された。


 化学。これこそ人類最大の武器。自然の理を支配し、牙無き人々ですらも魔を駆る狩人と化す武器を生み出す禁断の力。そしてビィが得た、天然自然には存在しない化学の刃。これこそ支配を超えた、自然の理を超越した最強の刃。


 その自然には存在しない化学の刃をコントロールするのに、簡単な魔術が必要だったりするのだが。ビィは小瓶の中に人差し指と中指を入れ、その日本の指で中の液体を”摘み”、一気に振る。反動で液体は指先から飛び散るが、途中でその自然の法則による運動は不自然に制止する。飛沫を一切出さず、その液体は粘度を持っているかのように約10cm程度の長さに伸びていた。


 簡単な水分制御の魔術。覆水を盆に還らせるための生活魔術。この程度の魔術ならば才能が無くとも可能である。ゼファーは生活魔術すらもできないから失敗作の烙印を押されたが。この魔術により小瓶の毒を皮膚に浸透させずに触れることができるわけである。


「さて、と…まぁ効くでしょう、たぶん」


 その伸びた毒をまるで刃物のように前方に構え、魔獣ウニヒトデにゆっくり近づく。ある程度接近したところでウニヒトデが一気に飛びかかったと同時に、ビィもひゅっ…と駆ける。すれ違ったとたん、ウニヒトデは倒れ、ビクンビクンを痙攣を起こしながら、すぐに絶命した。ビィの指先にはさきほどの液体が無い。今の一瞬で打ち込んだのだろう。


「アンタ…なんて毒を持ってるんだい…」

「さて、先に行きますよ。話はあとにしましょう」


 先を急ぐ二人は、バァン!と奥で響く轟音を耳にする。急いで轟音の方へ向かうと、そこにいたのはトッシュ。衣服は靴下以外ズタズタに溶かされ、トッシュは気色悪い液体にまみれてその場にうつ伏せに倒れている。そして周囲には、粉々に砕け散った肉片が散乱。その破片の特徴からウニヒトデの破片だとすぐにわかった。マユはトッシュに駆け寄り、抱きかかえる。


「…大丈夫かい、トッシュ」

「俺…汚された…」


 そのままトッシュは意識を失う。密着しているマユはトッシュの生命の鼓動が弱っているのがわかった。どうやら生命エネルギーを全身から放射してウニヒトデを爆殺したらしい。全身が麻痺した状態では闘気を練るのは困難であり、闘気に変換せず生命エネルギーのまま放出したのだろう。これは威力は申し分ないが加減を間違えるとそのまま死にかねない、というか普通の人間はしない…というよりはできない芸当である。


 トッシュは全身を濡らしている。そのトッシュがまみれたぬめぬめした液体は、不快な生臭さを放っている。良く見ると、トッシュの口の周り、そして臀部には全身に纏わりついている液体とは違う、白濁した液体が…。


「ウニヒトデはオスがメスに精子を送ったあと、メスが卵を他の生物に植え込むと聞いてます。この爆散したウニヒトデはメスだったのでしょう。さっきのオスは妻を守るために自ら盾になったというわけですか、泣かせますね」

「言ってる場合かい、さっさと洗って治療するよ。どっか集落でもないのかい?」

「ちょっと離れてますが村はありますよ。そこに行きましょう。僕もそこに用事がありますしね」

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