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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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94話 矜持、自分が自分であるために⑤

 トッシュの思考を読んで、ゼスは知った。トッシュが得た勝利への道筋を。トッシュの口からそれを聞いてもまず信用しなかっただろう。ただのハッタリと判断して、「そう」なっていたかもしれない。そして、なぜ「それ」を実行せずにあえて開示したのかを。


「まぁ…100パー勝てるとは思ってないけどね。でもタダじゃ済まんでしょ」


 トッシュは自らの思考を晒したので、わざわざ言う必要も無いというのはわかってはいるのだが。


「オーケーオーケー、わかった帰るよ」

「それは良かった。後味悪いのは嫌だからさ。君めっさ固いからもうこれしかなかったんだよね」


 ゼスの表皮はすごぶる堅い。地面に空いた穴の内部で炸裂した聖拳の衝撃と熱は、開けた空間で炸裂した場合と比較してその威力が集中するため10倍の威力になる。だのに、ゼスはこれほどにも平然としているのだ。


「…決着は、いつごろになるかな?」


 その言葉で、トッシュは自らの思考がほぼ完全に読まれてることを確信した。しかしこれでいい。トッシュ

 の目的はゼスを殺すことではない。勝つことだ。そのために手段は選ばない。嘘もつくし、脅迫もする。が、殺しはしない。


「んー、一ヶ月以内かなぁ。準備もいるし、マリアちゃんの事件の犯人も見つけんとだし」

「そっか、じゃあ待ってるよ」


 そのときだ。トッシュは気付く。頭上に何かががスイ~っと降りてきた。はっ、と上を見るが、空が見えるだけ。あと穴の淵からこっちを心配そうに見てるマリアちゃんの頭骨も。しかし確かにそこに「ある」。


 ゼスの方へ目を向けると、ゼスの体が浮遊している。そのままスイ~っと浮いて行き、そしてその姿が消えた。が。そこにゼスがいるのは「わかった」。おそらくそれはゼスが呼んだ見えない乗り物なのだろう。


 キュン、とその存在感がすごい速さで消えた。転移ではない。まるで新幹線以上の、モノレールめいた速さだった。


「ふう…つかれた」


 トッシュはその場に仰向けに倒れる。気を使い体の傷を癒すが、疲れはとれない。霊気をすこしずつ回収して体力回復に努めるが、だいたい1ターンに5%の回復ってくらいのゆっくりペースなのですぐには動けない。そんなトッシュの元に降りてくる人影。


「おい、アイツがいなくなったから人が来るぞ。さっさと起きろ」


 オーラくんだ。殴られて気絶はしたが、体力はまだ十分に残ってる。体も大きいし、トッシュは彼に泣きついた。


「動けないから抱えてちょ」

「えー…まぁいいけど。なんでアイツ帰ったんか?」

「それは…あっ、ちょいま。マリアちゃーん」


 ゼスを追い払った方法を説明しようとするトッシュだったが、ここでマリアちゃんをそのままにしたらやばいと気付いて彼女を呼ぶ。すると動く人骨がやってきてオーラは腰が抜けた。


「うわあああああああ!!!!!」


 そう、トッシュは死体に慣れてるけど、普通はこうなるのだ。オーラからドンと地面に落とされたトッシュ。に駆け寄るマリアちゃん。


「あいてて。そのままだとみんなオーラみたいになっちゃうから、こうこうしてっと」


 トッシュがちょいちょいと気でマリアちゃんを包み込むと、その姿はスケルトンからヒューマンへと変化をする。その顔はさっちゃん。パッと思いついた女の子がつい最近までイベントこなしてたさっちゃんだったので、ついついそうなっちゃっただけで他意はありませんと自分に言い聞かせる。


「なんかもうよくわからんけど…行こうか?」

「あっ、ゲギョ忘れてた」

「あの怪人ならさっさとマンホールから逃げてったぞ」

「おー、さすが。でもあいつの能力がいるからあとで合流しないと」

「?」

「あとで説明するよ、ゼスのことも、マリアちゃんのことも」


 トッシュは穴の中でさらに穴をあける。この穴を通じて、3人はその場からそそくさと逃げて行った。

 ゴキン、と甲高くも鈍い音が響く。ジャスティス(小)のソードドラゴンVが、ジャスティス(大)の最後の機械鎧を砕く。ジャスティス(大)の皮をかぶった何者かの正体を暴くために。尋問は最初からすでに拷問になっていた。


「ほらほら、とりま余計なモン省いたけど、まだトチ狂ったままなのかしら?」

「くっ…あたしは正気よ!宇宙海賊に忍び込むために操られたフリを…」


ドスッ、とソードドラゴンⅤの峰うちがジャスティス(大)の肩を抉る。両刃の剣だったのをジャスティス(小)は忘れていた。


「うっ…」

「うっ…じゃあないのよ!人間こんな一撃くらったらもっと痛そうな顔するのよ!」


 バキッとジャスティス(小)の追撃のローキックが決まる。


「ううううう~…」


 ジャスティス(大)の居たそうな表情。それを見たジャスティス(小)は…。


「わざとらしいのよ!ていうか私はそんないちいちそんな無様見せないわよ!」


 ゴッ!とジャスティス(大)の鼻に膝をぶちかました。


「はぁ、もういいか。約束覚えてるよね?」

「約束…?」


 ジャスティス(大)は、約束で検索する。最近の事例でジャスティス(小)と約束したことが一個出てきた。


「あたしらのすべてはトッシュのために…」

「それが即答できない時点で偽物なのは確定的なのよね。あたしの顔であたしじゃないから不快なのよ!もう死になさい」


 ジャスティス(小)のソードドラゴンVによる斬首攻撃!もはやこれまでか!?


 ガキンと甲高い音が響く。もうジャスティス(大)に機械鎧は残っていない。第三者が二人の間に立ちはだかったのだ。


「それ以上はいけない、いけないよ」

「アンタ、たしか…誰だっけ?」

「…ゼファー。いちおアンタの息子さんだよ」


 ゼファー。勇者量産計画で生み出されたジャスティスの子供たちの一人。ジャスティス(小)にその記憶は無い。まぁレイプで産まされたなんて記憶は無いに越したことはない。


「産んだ覚えのないのに息子だよとか言われるのはなかなか恐怖なのよね。邪魔しないでくれる?」


 ジャスティス(小)はソードドラゴンVに力を込める。ゼファーが持つ剣が押し込まれ、じりじりと姿勢が崩れていく。


「待て待て待て!今でかいジャスティスをやったらマジやばいんだって!」

「何がやばいの!?説明しなさいよ!」

「わかったから力入れるのやめてって!」


 そんな二人の様子にジャスティス(大)は逃げていいのかなと思案してると…・


「アタシなら逃げないの、わかれよね」


 と、ジャスティスにドスドスと手とか足に物理的に釘をさされて動けなくなってしまった。

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