表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐、始めました。  作者: 中島(大)
217/236

93話 お散歩 ~愛に全てを~③

 ・

 ・

 ・

 ズオーは気付いた。目の前にいるフォーゲルだけであるが、他にも隠れている存在がいることに。魔王軍の猛将たち相手に一人では不利である。


「貴様が何をやったのかわかってる。なぜ捕虜を逃がした?特に王子だ、また担がれて戦争の要因になるかもしれんというのに」

「…戦争ヲ、止メルタメダヨ将軍」


 そう言いながら、ズオーはその重たい頭部を外す。ズオーの正体はデュラハンか!?と驚くフォーゲルだったが、その頭部が外れた結果はそれ以上の驚愕であった。


「…貴様は、ジャスティス?」


 魔王軍に身を寄せている幼女verのジャスティスの面影を残すそのお顔。ズオーの正体は死んだと思われた邪聖拳ネクロマンサーこと、トッシュの母ジャスティス(大)だった。


「戦争をやめてってお願いしたのよ、きっかけは人類に復讐してやるって息巻いてた私だし。あの王子もわかってくれたわ」

「…ではなぜそのような恰好を?」

「これ、私が黒森峰高でやりあった宇宙海賊四天王ズオーの皮よ。これを被ってズオーのフリをしてね、宇宙海賊に潜入するの。ただ宇宙海賊の拠点の場所がわからないからまずあの黒森峰襲撃した捕虜を逃がしたってわけ。ギャラもらいに行くだろうし」

「むむむ…」

「信じてもらわなくても構わないわ。ただ、今の私はトッシュのために全力を尽くすの。邪魔するならトッシュの世話になった魔王軍のあなた達でも容赦しないわよ」


 信じていいのだろうか、と迷う。ただ彼女が今は息子トッシュのことを一番に考えているにということは、ジャスティス(小)からも聞いている。彼女も確かにトッシュの母なのだ。大小二人存在しているジャスティス。彼女らが本当の母親か、オリジナルから複製された存在か、それは定かではないが、彼女らの中に今確かに存在する息子への思い。それだけは真実だ、と。だからこそジャスティス(小)もジャスティス(大)を信じた、と。


「ふーん、おかしいわね。私だったら息子から離れないけどねぇ。アンタ本当に私なのかな?」

「えっ…?ジャスティス?」

「ギクッ…!」


 なるほどなるほどと呻るフォーゲルだったが、そうフォーゲルに思わせるに至った理由であるジャスティスが疑いの眼差しを持って二人のもとへやってくる。そして自称ジャスティス(大)は突然の来訪者にびっくりする。なるほどなるほど、隠れてた気配は彼女だったのか。


「今、ちょっとビクってしたよねアンタ。四天王ズオーだっけ、何が気になったのかな?」


 ちょっとお揃いた自称ジャスティス(大)の反応を、ジャスティス(小)は見逃さなかった。今彼女(?)の目線は、確かにジャスティス(小)に向いていなかった。


「ねぇ、アンタ答えてよ。私なら息子のことを思うなら息子から離れないわ。なんでアンタ学校に戻らないでそんな恰好してんの?」


 ただでさえ今息子が高校に通うために魔王軍から離れてジャスティス(小)には耐えがたい苦痛だとういうのに、なぜ平然としてるのか。ジャスティス(小)はその理由を尋問する。


「カンニングは無しよ、アンタの気持ちで答えなさい」


 カンニング。そう、ジャスティス(小)はカンニングを防止する対策をちゃんとしている。宇宙海賊が持つ究極のカンニング兵器、思考盗聴器。宇宙海賊から寝返ったザグマー、オーラの二人は魔王軍に思考盗聴対策を貰たしている。それはアルミホイル。ある程度の品質を持つアルミホイルならば、それを頭部に巻きつけることで思考盗聴電磁波を弾き、未然に防ぐことができるのだ。ただ、問題はこの現在の四国大陸にアルミホイルを精製する技術が無いことである。


 ではなぜジャスティス(小)はアルミホイルを用意しているのか。答えは簡単。ジャスティスの後の勇者、伊集院英雄が持つ異能から取り寄せたのだ。その異能、現金魔術。伊集院の預金通帳残高を消費することで伊集院の世界から同じ値段のものを取り寄せる禁断の魔術。通帳口座の残高なのに現金というネーミングもちょっと違う感はあるのだが、わかりやすさを優先した結果らしい。何はともあれ、伊集院の世界ではそう高価な代物でもないアルミホイルである。簡単に取り寄せをしてもらうことができた。


「わかってんのよ、アンタはその思考盗聴で相手が一番納得する回答を探り当ててるだけ。正体を現しな。この偽物」

「ぬぬぬ…」

「まだ白状しないなら、実力行使よ。さぁ、お外を一緒にお散歩しましょう」


 ジャスティスの拳が聖拳の光を放つ。王城にでかい風穴を開け、自称ジャスティス(大)が宙を舞う。


「ジャスティス…あれは、偽物なのか?」

「…さぁ?」

「え?」

「カマかけるって実際うまくいかないわね。まぁ、わからないから徹底的にやってくるわ。あの穴の後始末よろしくね」


 そしてジャスティス(小)も穴から飛び出す。すべては息子のために。怪しい者は徹底的に取り除く。あの自称ジャスティス(大)が本物なら納得するはずだから。それが二人の約束だったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ