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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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93話 お散歩 ~愛に全てを~①

 愛の戦士ゼスとアルがやっとぶつかるかという寸前、二人に上空から二人の間に割って振ってきた影が!


「そこまでだ二人とも!貴様の相手はこの俺よ!」

「うわ…オーラくんかよ…」

「え…なんで?」


 その影の主は四天王の一角を務めていたオーラ!


「なんか嫌なぞわぞわした感じがしてさー。これは宇宙海賊ネオデビルクロスの電磁波攻撃の一種かと

 思ってよ。ドンのピシャのぴったんこカンカンだったわけだ」


 このぞわぞわは、ゼスが人を離れさせるために起動したヒトコナーズの影響によるものである。何も知らなければなんかヤな感じと無意識に避けていくが、オーラは当然四天王の一角だった男、宇宙海賊のやりかたもご存知なのである。


「話聞いてたんだけどアルよー、お前はこんなの相手にしてる場合じゃねーだろ。茜ちゃんがもううんざりした顔してんぞ」


 くいっと顎で茜を指すオーラ。茜の視線はもうあっちのほうで水浴びをしているスズメの方に向かっていた。


「それはまぁそうなんだけど…だってあいつが」

「だから俺が来た!ほらさっさと茜ちゅんとお散歩に戻りなって」

「…」


 アルはヒートした自分の思考を落ち着かせ、冷静さを取り戻し、そして0.2秒ほど思考し、結論を出す。


「じゃあ、任せます。行こうか茜さん」

「あっ、終わったの?もういいの?」

「うん、ごめんね待たせて」


 ゼスに背を向け、お散歩へと戻るアル。ゼスは当然黙ってはいない。


「ちょっと待ってよア…!」

「待てやって」


 すぐに追いかけようとするゼスの前にオーラが通せんぼする。


「…邪魔しないでくれるかなぁ?オーラくん」

「そんな寂しいこと言わないで。元同僚のよしみってやつで…」


 オーラが喋り終わる前に、ドゴォとすごい衝撃がオーラのお腹に炸裂する。ゼスのボデーブローがオーラに炸裂したのだ。


「んごっふ!てめ…」


 咄嗟に顔を上げるとゼスは既にオーラの腋をすり抜けてアルへと向かうが、その瞬間。


「おわ!?」


 ズボっ!とゼスの足がまるで底なし沼にハマったように沈む。いや、足だけではない。バランスを崩し両手を地面に付こうとすると、その両腕すらも、そして残った方の足も、ずぶずぶと沈んでいく。背中から迫るゼスの気配に、迎撃態勢を取るアルの耳に馴染みのある声が届く。


「ほら、さっさと行きなさいや」


 誰もいないのにどこから?と疑問に思ってたアルだったが、原因はすぐにわかった。ゼスの体が沈むのと同じペースで、ゼスとアルの間にまた新たしい影が、今度は地面から生えてくる。その姿はオーラもゼスも知らない男、そしてアルと茜のお友達。


「誰?」


 ゼスが不機嫌そうに尋ねる。


「トッシュくんだよ。けんちゃんって呼んでね」


 沈むゼスと浮かぶトッシュ。トッシュは地面をやーらかくし、ゼスをひっぱることで沈ませ、自身を持ち上げ浮上する。八卦龍拳・ディノディロスと、ガロウィンのちょっとした応用である。


「ゲギョ、親分相手は四天王の最強だデギョ」

「もんだいないぞゲギョよ。このトッシュ今日び絶好調よ」


 遅れて生えてきたドブネズミ怪人のゲギョがゼスの正体にびびったが、トッシュはそれを聞いて逆に闘志が燃えあがる。全身を露出させたトッシュは振り返らず、アルへ話し出す。


「ほらさっさと行った行った。ここは俺に任せて先に行けーってな」

「大丈夫なの?アンタけっこう負けるって聞くけど」

「ぐぬぬ…誰がそんなことを…」」

「ギャミくん」

「あいつ今度絶対わからせてやる…とにかくさっさと行けって」

「まぁオーラもいるから大丈夫かな…じゃあ行こうか茜さん」


 話してる間にゼスは沼から抜け出したが、オーラとトッシュに挟まれ動けずにいた。そんな金縛り状態のゼスを置いて、トッシュはその場を後にした。

 ・

 ・

 ・

「大丈夫かな二人とも」

「大丈夫だよ。二人とも強いからさ。それより、どっかでおいしいの食べに行こうか」

「…ねぇ、アルくん」

「ん?」


 問いかける茜だったが、アルの相槌を聞いてしばらく黙ってしまう。その数秒の間、茜は勇気を振り絞る。


「…やっぱり…したいよね…」

「え…」


 茜の顔がものすごく赤くなる。後ろから車いすを押すアルから表情が見えないのが茜にとって救いだった。


「えっち、したいよね…」

「あ…」


 アルは、そんなことないよ、と言おうと思った。が、それは明確に嘘だ。そして咄嗟に嘘をつけるほどアルは人間性が歪んでいない。そして先ほどのゼスとの性癖語り合いバトル、アルは自身の気持ちを茜に聞かれている。


「……………………うん」

「…ごめんね、お腹の子に悪い影響があるといけないから…」

「いや!そんなの気にしてないよ…!」


 これも嘘。本当はしたい。ただ、お腹の子を気遣ってできないというのもアルも同じ気持ちだ。


「…だからさ…他の…口とか…お、しり…なら…」

「えっ…?」

「…ホテル、行こっか…」

「………!!!」

 ・

 ・

 ・

「なんて会話してそーじゃねあいつら!?」

「あーありそうありそう。間に男が生えて来たから燃えてそうだよねー」

「残念だったなゼスよー!ワーハハハ!NTR!NTR!」

「寝てから言わなきゃ」


 すっかり意気投合したトッシュとオーラが、アルと茜がこんな会話してんじゃねとゼスをおちょくる。もうゼスは腹に据えかねている。


「お前ら…いい加減怒ったぞー!」

「お?やるか?トッシュくんよここは俺がやるぜー」

「おっけーがんばれがんばれ」

「まず君から殺して良いんだなオーラくんよ」

「やれるもんならやってみろやハゲが」


 気合十分の二人からトッシュとゲギョは距離を取る。二人はそれを合図に構え、じりじりと間合いをはかる。二人の様子からトッシュは、ゼスは打撃主体、オーラは組み技が主体だと予想する。


「ゲギョよ、どっちが勝つかな?」

「ゲギョゲギョ、怪人にインストールされた宇宙海賊データベースによるとゼスくんは四天王筆頭、大してオーラは四天王5席ゲギョ。ランク付けはゼスの方が上ゲギョ。

「でもオーラは自信満々だな。ん?」


 ふと、オーラが構えを解いて懐から何かを出す。銀色に光るギラギラした紙?なんだろうアレは?


「いかんいかん、お前とやるならこれをつけとかないとな」


 オーラはその銀色の巻物のようなそれを広げ、頭にぐるぐると巻き始めた


「チッ」


 その動作にゼスは苦虫を噛みしめたような表情を見せる。ゼスが頭部に巻いたそれは、トッシュが住むこの世界にはまだ存在しえない物体。当然、宇宙海賊ゼスはそれを知っている。


「アルミホイルか…この星ではまだ発明されてないはずなんだけどなぁ…」

「宇宙海賊の秘密兵器は持ち出せんが、こういった日用品にまで発信機の類はついていまい。少しばかり持ってきてたのだ。これで思考盗聴はできまい」


 宇宙海賊はターゲットに定めた星の情報を集める際に用いる手段の一つが思考盗聴である。そして、思考盗聴ができるということは、思考盗聴を防ぐこともできるということ。このアルミホイルを頭部にまきつけることで電磁波が脳に侵入することができなくなるシールドになるのだ。


「さぁ、やろうかゼスよ!貴様の必殺のゼロを見せてみろ!」


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