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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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92話 家庭、幸せになるために④

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 宇宙海賊の四天王筆頭。その地位に就く資格のある者は知力体力共に優れた成績を収めた者に限られる。数年働けば一般人の生涯年収の5割を稼ぐことができるというその仕事を欲する者は多く、その高い競争率を勝ち抜いたただ一人の男、ゼス。勝利の鍵は、それはひとえに、愛。


 ゼスが付き合ってい彼女はただただ、普通の女の子だった。精神を安定させる薬を朝昼夕寝る前に服用し、毎日20時に就寝し、突発的に泣いたり、町を歩いてると急に気を失ったり、自分が正しいと思ったら絶対に意見を曲げない、心細くなると夜中の3時とかに電話をかけてくるような、どこにでもいる普通の女の子だった。そんな彼女と幸せになりたいと決意し、普通の仕事ではなかなか幸せにたどり着けないと考慮し、自らの高いスペックを活かしてこの高給の宇宙海賊ネオデビルクロス四天王筆頭の地位に就いた。本来なら幹部候補生として採用され実務経験を最速でも5年ほど努めなければならないこの仕事の求人が出たのは人手不足からである。


 そうして突如として4人の四天王を纏めるリーダーに就任したゼスは果てしない宇宙という大海へと出航する。これまでに多くの星で財宝を得、その2割を給料として得てきた。あと2,3年働けば一般人の生涯年収を稼げるレベルで稼いできた。


 だのに彼女は…!間男くんのじゃないともうダメなのぉ!と完全に落とされてしまった…!不意に精神が不安定になる彼女の傍を離れるべきではなかったのか!?しかし共働きをするのは難しい彼女の収入は年金のみ。不景気の現代で年々減額される年金、病院への受診も欠かせない彼女を一馬力で支えて行けただろうか?いくら考えても最早後の祭りである。そう自分に言い聞かせても、悶々と憎しみが募っていく…。


 そんな折、四天王から二人の離反が出た。ザグマーとオーラである。離職の理由は、ひとえに、愛。


「愛…?あの星に愛を見つけたのか、あの二人は」


 ゼスは興味を持った。そしてザグマーが怪人たちを使って集めた情報を確認する。興味深いデータがあった。ラファエルという男に付き添っていた怪人の思考盗聴の内容だ。この男、山賊として女の子を攫ってはそれはもうひどいことをしていた。ラファエルはその山賊の下っ端のさらに手下、底辺の下のさらに下、縁の下の力持ちだったため、先輩山賊に陵辱された女の子を最後に抱くような、そんな小物だった。


 そんな小物が最後におこぼれをもらって抱いたりした山賊のボスのお気に入り。炎の様な赤い髪をした茜ちゃんという女の子。処女を奪われ、手足を奪われ、そのお返しに子種をもらって孕んだ女の子がいた。


「えぇ…!ひどい…!なんてかわそうなんだ…!」


 さすがのゼスも心が痛んだ。彼らネオデビルクロスは宇宙海賊と言えども完全に略奪はしない。ほどほどに奪い、また財宝を作る余力を残す。そうすることでまた、財宝を収穫することができるから。でもこの蛮族どもは加減を知らない。加速する暴力が、女の子の肉体と人生を破壊する。ゼスはこの女の子のことを考えると股間が熱くなった。そうして、さらにデータを深堀りすると、なんとこの茜ちゃん、今じゃ彼氏と幸せに暮らしてるそうな。その瞬間、ゼスは愛に目覚めた。


「あぁ…僕は茜ちゃんに恋をした…。この子を人生を賭して支えようとしている彼氏の気持ちもよくわかっる…」


 美しさとは、不可逆の中にある。若さが時間で失われるように、二度と得られぬものにこそ美がある。失われるその儚さこそが美しさ。今の茜ちゃんは正に不可逆の化身。二度と取り戻せない四肢と処女、そして妊娠。もう傷物にされたからこその美しさ。


「彼氏の名前はアルくん…君の愛に僕は憧れる。なればこそ、いずれ君と愛をぶつけ合おう、そして君に勝って僕の愛を証明しよう」


 彼女の心を間男に奪われた。しかし金、地位、顔、賢さ。ペニスのサイズ以外はこちらが勝っている。彼女を取り戻そうと思えば取り戻せるわけだ。つまりこの彼女の心は不可逆ではない。今ゼスの心から彼女の存在は完全に消え去った。憧れのアルくんをこの手で殺る。そして茜ちゃんの心に深い傷を残し、その傷を愛でよう。四天王筆頭ゼスは今自分の肩書を変更した。


「愛魔将ゼス…!いざ往かん!」

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