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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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92話 家庭、幸せになるために③

 冬の景色が好きだ。夏の青々とした溌溂な空も元気になれるが、冬の灰色がかった静かな空は見ていて気持ちが落ち着いてくる。皮膚に軽く刺さってくるひんやりとした空気は高ぶる気持ちを冷却してくれる。静かな雰囲気になるとどうしてもいやなことも思い出してしまうが、冷静な思考でその過去を静かに受け入れることができる。


「寒くない?」

「大丈夫。ごめんね、そっちこそ寒いよね?」

「いや、こっちは自力で発熱できるから」


 車椅子を押してくれる彼氏に申し訳ない気持ちはあるが、かといって我慢してると逆に彼氏が大丈夫?大丈夫?とちょっとうっとおしくなるので少しはわがままを言う様にしている。義手義足が壊れたため、どうしても一人で散歩もできないから、わがまま消化に活用している。


「うぅっ…ぐすっ…」


 橋の端っこで、河を見ながら泣いている男性の姿があった。


(うわ…)

(うわ…)


 ちらっと後ろの彼氏の目を見る。彼氏もちょうどこっちを見ていた。全く同じ思考に至ったのがわかる。そそくさと静かに通り過ぎようとちょっと車椅子が微妙に加速する。


「ちょっとぉ!無視しないでよぉ!」

(うわ…)

(うわ…)

 ・

 ・

 ・

「彼女が僕と違う男と寝てたんだよ!めっさつら味!彼女と一緒になるために数年間出張に出て稼いでるってのに!メール届いたと思ったらNTRビデオレターよ!めっさつら味!」

「はぁ…まぁ…」

(興味ないよぉ…)


 泣いてた男の身の上話。よくある仕事でのすれ違いからの別れ話。いや彼氏はそういうよくある話をよくあることだとわかってるかはわからないけど。まぁ興味なさそうな返事で相槌を打っている。


「それに引き換え君たちはいいなぁ…実は僕は君たちのファンなんだよね!」

「え…」

(ちょっと何気持ちわる…)


 突然の言葉に二人はドン引きである。今まであなた達を観察してました、とか言われたらもうナイトポリスに通報しないとと焦る気持ちも出てくる。


「愛があれば、壁は乗り越えられるんだ!僕の彼女は僕を愛していなかった。僕がいなくなったら別の男に股を開いてあひんあひんだよ!はぁまじはぁ」

「それよりあなたって僕らの何なんです…?」

「言ったじゃないか、ファンだって。なんでファンなのかって?君たち二人の間にある愛!それが僕の意識を変えたんだ!」

(…こんな姿でちょいちょい散歩してたら目立つか)


 彼氏に申し訳ない気持ちになる。たしかに普通ではない、手も足も失い、お腹も大きくなっている。介護を要する女を孕ませた男と奇異の眼で見られてしまったという可能性。孕ませたのは彼氏じゃないのに…。


「愛があれば距離なんて関係ないんだ!障害があっても関係ないんだ!」


 この男の人は、遠距離でも数年間会えなくても愛があれば不倫などしないと。愛があれば介護を必要な女の子を支えていこうと覚悟できると言いたいわけだ。その言い方が気に入らない。まるで負担にしかならない女の子だって言われてるみたいで、それが否定できなくて、彼氏はそんなことないよって言ってくれるのが申し訳なくて。


「愛があれば、たとえ血の繋がらない子供がいても、家族になれる…そうなんでしょ?」

「!!」

 {!?」


 ぞあっと寒気が走る。冬のちょっと刺すような冷たい空気からではない。とても気色悪い、獲物を品定めするような男の人のその目線。


「アルくん!」

「お前…!誰だ!?」

「宇宙海賊ネオデビルクロス四天王筆頭、ゼスです。さぁ茜さん、君の愛を僕のモノにするために、君の彼氏を超えて見せるから見ていてください!僕が勝ったら幸せな家庭を作りましょう!」

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