92話 家庭、幸せになるために①
特訓中、トッシュら一行はローシャ市のグッナイ温泉の旅館に宿泊している。旅費はもちろん魔王軍の予算…なんてことはなく、一行がお金を出し合ってのお泊りだ。といっても、ギラビィもライゾウくんも経費として請求する予定ではあるが。そんな旅館の一室、ネネさんがお泊りしているお部屋に来客がやってくる。
「こんばんみー」
「ん?トシちゃんどしたの?」
さっきまで割とガチでやりあった二人ではあるが、二人は敵同士ではない。久々の再開に積もる話もあるのだろう、トッシュは…いや、それだけが目的ではなかった。
「あらあら」
何も言わずにトッシュはネネさんに抱き着いちゃった。催淫作用が抜けきっていないのだろうか。明らかにトッシュはネネさんを求めていた。
「そんなにえっちしたいならあんなやり合う必要なかったのに」
「負けてやられるのは癪じゃん。勝ってこっちから攻めたいの」
「子供なんだからー」
「ネネさんと比べたらそりゃ子供でしょ」
すっかりタメ口になっているトッシュ。もう壁はないなとネネさんも安堵して、もはや言葉はいらないと二人のその唇が接触する。言葉を紡ぐ舌は、お互いの舌を求めあう。数十秒の接吻の後、ようやく言葉が紡がれる。
「どれだけ上手になったか見てあげようじゃん」
「ご期待には沿えないわ。ネネさん以外知らないし」
「あらあらまぁまぁ、もうトシちゃんてほんともう」
トッシュの影にライゾウくんの存在はなかった。さすがのライゾウくんもそこまで野暮ではなかった。
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「ネネさんって、マジ妖怪っすねー。ベロ伸びるし切れた腕くっつくし」
「君がネネさん気になってたのも彼女のチャームの効果だろう。眼は見えなくとも漏れ出す魔力の影響は受けるものだ」
「ライゾウさんは平気なんすか?」
「鍛えてますから」
「だからトッシュはあっち行ったんかな」
「あんだけガチでやり合えば影響は受けるだろうね。ま、発散すれば後悔しながら戻って来るさ」
「スね、じゃあお休みなさいー」
「おやすみ…」
就寝するテッサイ。ここでライゾウくんに奔る邪な思考。テッサイを…抱き…。
(いかんいかん、これはトシさんの任務。変に影響を与えることはしてはいかん)
ライゾウくんにネネさんのチャームが効かないのは、こういうわけである。
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私は汚れている。
今日も体を汚されている。
もうこんな行為に慣れてしまって、心も汚れてしまったのだろう。
「幸…おまえは本当に母さんに似てるなぁ…」
まだ中学に入る前だった。私は、父に求められた。
初めては痛かった。血が出た。一週間ほど、血が止まらなかった。生理用品の数でバレたくなかったから、パンツにテイッシュを入れてパンツに血が付かないようにした。その間、異物感がずっととれなかった。ずっと父がそこにいるように、ずっと犯され続けているように思てて、とても嫌だった。
あれから数年。今日も父はその白い欲望を私の中に吐き出す。まぁ薄いゴムに遮られ私の奥には届かないのだが。
私は汚れている。こんな私を、てっちゃんはどう思うだろうか。きっといずれ必ず近いうちに間違いなくバレるだろう。そしたら捨てられるかもしれない。
(そんなの嫌だ!)
だから、てっちゃんに勝たなきゃいけない。勝って、てっちゃんを私のモノにする。汚いって思われて逃げたくなっても、私が勝って『契約』を結べば逃げることは絶対にできなくなる。
さっちゃんは自らが憧れる幸せな家族のため、決意を新たに、そのまま眠るのであった。