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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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91話 練習!暗黒新陰流無刀取り!③

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 その頃、さっちゃんは冬休み最終日に向かえるてっちゃんとの婚約決闘に向けて、一所懸命にお洋服とかを選んでいる。どれが可愛いかな、どれがてっちゃんの好みかな、どれが動きやすいかな、優先すべきは可愛さか美しさか防御力か機動力か攻撃力か華やかさか、どれが愛刀「疾風迅雷」に似合うかな、と。この決闘こそさっちゃんの人生の晴れ舞台。全力でおしゃれしてこそ女の子。しかしやはり主観だけではダメだ。客観的な評価も欲しい。そしてさっちゃんは、てっちゃんの好みをわかっているであろうてっちゃんの手下たちに相談するのだった。


「それなら任せて!あいつの好みならだいたいわかるから!」

「でもさ、あいつの好みとさ、さっちゃんって似ても似つかないっていうかー」

「ていうかー、決闘に勝てば結婚だっけ?それってさっちゃんのこと好きなのかな…?」

「何を言うか、好きじゃないとそもそもそんな約束しねぇだろ」

「それもそっかー」

「じゃあお洋服!見に行こう!予算は?」

「行くならこの国で一番おしゃれな服揃えてるあの店!」

「国南一の品ぞろえを謳う衣類の老舗」


『いしづか!!』


 というわけで、事情を詳しく把握したてっちゃんの手下の皆さんと一緒にいしづかにおしゃれをしにいくさっちゃん。決闘に向けての覚悟は十分だ!

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 ばちこーん!人間の頭の割れる音が響く!さっちゃんのお婿さん内定のてっちゃんことテッサイ、現在さっちゃんとの決闘に向けて暗黒新陰流無刀取りの練習中だ。さきほどの音はギラビィの木刀がてっちゃんの額を割る音である。出血が止まらない。


「ぺろぺろぺろぺろ!甘い!おいしい!うまい!役得!」


 すかさず血液を舐めとるのは吸血鬼のネネちゃん。彼女の唾液には消毒と沈痛と治療促進と利尿作用と催淫効果と増血効果が備わっているのだ。なんでそんな効果があるのか?それは進化の結果である。木の葉の形に擬態する虫さんが生き残ったのは、狙ってその形を獲得した結果…ではない。生き物は生まれてきたときに個性があり、それが生き残りやすい性質もあれば、天敵に狙われやすくすぐに連れていかれるものもいる。イエネコの原種と言われるのはリビアヤマネコと言われているが、あの子たちはみんな同じ柄をしている。所謂キジトラに似た柄であるが、それがリビアヤマネコの生きる環境において最も生存性の高い性質であり、故人間(下僕)がお世話をすることで生存がしやすくなった人間社会においては、様々な猫の柄が産まれ、増えている。


 それと同じように、人間に有益な性質を獲得することができた吸血鬼は人間に討伐されることなく逆に依存され、夜の王となっているのだ。無論夜の王たる吸血鬼である以上、ネネさんも吸血鬼特有の弱点を持っている。ニンニクを食べすぎれば腸内細菌が死滅してお腹を壊すし、日差しに当たったら皮膚が赤くなって皮が剥がれてしまう。


「いやそれ人間も同じですけどね…」

「へーそうなんだ気が合うね、てっちゃんかわいいね」

「はいそこぉ、練習中だからね!」


 ギラビィの無刀取りの練習は実にスパルタである。テッサイは素手で木刀を持つギラビィと立ち合い、ギラビィの持つ木刀を奪いに行かなければならない。当然、ギラビィはテッサイが奪いにくることが分かっているため、ただ取りに行ってもカウンターで頭を割られてしまう。この練習において必要なのは、相手の呼吸を読むこと、『後の先』である。


(後の先はタイシャー流でもさんざん聞いているけど…いざやるとなるとかなりむずいなこれ)


 ギラビィの動きだしを刹那で見切り最適最短な体さばきでギラビィの剣をいなし、または直に奪いに行かなければならない。


 ばちこーん!と再びテッサイのデコが割れる。ネネさんが舐める。ギラビィの怒号が飛ぶ。この練習が夜まで続いた。


「明日のメニューはだいたい今日と同じ!いや午前中があるから午前中ランニング!昼から無刀取りの実戦練習だ!今日はこれで終い!休め!」

「うす…」


 木刀を肩に乗せ、のしのしとギラビィが帰っていく。四肢を広げ大の字で倒れてるテッサイがなんとか聞こえる程度の声を振り絞って返事をした。ギラビィのしごきを見ていたトッシュ、ちょっと震えが止まらない。一応部下になるギラビィに、次から敬語を使ってしまいそうだ。


「ギラビィってあんなんだっけ…こわ…今日は大の字だけど下手したら明日は太の字になってるかもね」

「太って…『、』はなんだよ、ちんちんかよ…」

「んー、ちんちんが千切れてるかもしれないし、もしくは頭が落ちてるかもねって」

「洒落になんねぇって…お前は見てるだけでいいなぁ…」

「はっはっは、俺はもう無刀取りできるもんね。でもせっかくネネさんいるし、俺も練習するかな」


 ギラビィとテッサイにあてられて、トッシュも無性に練習がしたくなる。今やってみたい技とかがあるのだ。ちょっとここんとこ敗けが続いている故、このままじゃいかん、と。


「ん?なになに?夜伽?」

「違うって…ネネさんなら不死身だから手加減いらないでしょ。俺の新技の練習に付き合ってよ」

「んー、その言い方、本気で来るってことね」

「うん」

「…いいわよ、そのかわり、私も本気で行くからね」

「えっ?いや、そうじゃなくて生サンドバッグになってほしくて…」

「だーめ。それじゃ私はトシちゃんを本気で犯しに行くから。嫌なら抵抗してみせな」

「ちょ、ちょっと!なんでそうなるの!?ネネさん!?」

「初めてじゃないんだからいちいち慌てないの。はいあと30秒でネネ動きますから、速く隠れるなり準備するなりしな」

「あーもう、まじかよもうー!」


 慌てて逃げるトッシュ。そのトッシュの影が、ネネさんの足元から動かない。


「君はそこで留守番ね、トシちゃんのボディーガードさん」

「不覚…!」


 トッシュの影に潜むライゾウくん、ネネさんの影縫いに縛られ動けなくなってしまう。いかにライゾウくんが魔王軍最強のニンジャと言えども、夜の王に影の扱いでは敵わない。ライゾウくんらナイトストーカーという種族は人間と全くの同種。日の者なのだから。

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