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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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89話 残虐、いじめっ子②

 授業以外の時間、トッシュはテッサイのクラスを観察している。ちょいちょいさっちゃんをイジメるテッサイの手下の姿。トッシュは一刻も早く目的を解決しなくちゃと気持ちが燃え上がる。


「トシさん、なんでそんなに夢中になってるんです?」


 トッシュの護衛として潜伏するライゾウくんが秘密のメッセージをトッシュの脳内に送って来る。これも八卦のちょっとした応用である。トッシュはライゾウくんのメッセージにアンカーを添えてライゾウくんの脳内にレスを送る。


「俺の仕事は未来の魔王国を支える人材の発掘よ。あのテッサイくんは剣の腕ならクラウスや剣聖Jよりも上だよ。だから魔王軍に入ってもらわなきゃ。その前にあの歪んだ人格は矯正しなくちゃいけないってことよ。ていうかライゾウくん潜伏うまいんだから代わりに調べてくれない?テッサイの過去とか家庭の状況とか交友関係とか」


 なるほど確かにトッシュの仕事はそれである。学生の本分は勉学と言うが、既に社会人となっており学校には任務のために来ているトッシュにとって勉学は必要最低限でいい。主たる目的は人材の発掘、獲得。これは魔王イクスから直接与えられた大事な仕事なのだから。


「それは無理な相談ですな」


 故にライゾウくんも、自身の任務を最優先する。


「私の仕事はトシさん、あなたの護衛…いえ、もう気付いてるでしょうから言いますけど貴方の監視です。先日の王都での巨大ロボバトルでの貴方の不審な動きがありましたからね、絶対に目を離すなと言われてるんですよ。」

「むー」


 わかってはいたことであるが、こうもはっきり言われるとは。ライゾウくんが離れてくれればトッシュの任務以上に大事な宇宙海賊本船殴り込み作戦の会議の調整もやりやすくなるというのに。やはりライゾウくんの目を欺く必要がある。いじめ解決と並行してやるにはあまりにもハードであるが是非も無し。宇宙海賊はこの手でブン殴らなきゃ気が済まない。復讐は自分の手で成してこそ、だ。


「ねー。北の方で戦争あったんだってー?」

「聞いたー、なんかヤバいよねー」


 トッシュの耳に北方で発生した小競り合いの噂話が入って来る。何やら魔王軍も宇宙海賊対策と並行していろいろ忙しそうな雰囲気はあった。案の定教えてもらえなかったが。


(北は確かフォーゲルが行ってたっけか)


 四国大陸一の軍事国家、雪と氷の国ヴァイスランド。またの名を火の国ヴァイスランド。魔力に乏しいその国家は鉄と火を操り強大な戦闘力を保有するという噂だ。


「魔王軍で一番強い将軍が大災害を起こしてやっつけたんだってー」

「土石流起こしたって聞いたーすごいねー魔力」

(えっ…何それ怖い…)


 聞き耳を立ててたトッシュはフォーゲルがそんなことできるの?とちょっと怯える。以前戦ったときは全然本気じゃなかったのか、と。


(ていうかそれよりテッサイだテッサイ。あの野郎が何でいじめるか掴まないと)


 黒森峰学園は今現在昼休み。テッサイは取り巻きと一緒にご飯を食べている。購買のパンとかじゃなく、良い感じに彩りのあるお弁当だ。茶色一色ではなくお野菜で鮮やかに飾られ、上品な奈良漬けに豪華なあか牛のステーキもあってバランスがいい。貴族ではないが裕福なのだろう。王国で何代も続く剣の道場で門下生も少なくないと聞いている。


「テッサイくんそれエビフライじゃないの?すげぇ!」

「マジかよ!さすがに弁当に生は厳しいから湯がいてるけどおいしそ~」

「あー、やらねぇぞ。エビフライは大好きだからな」


 手掛かりになりそうな話は全然出てこない。昼休みも大した収穫はなしになってしまうだろうか。しかし張り込みはすぐに結果は出ないもの。粘り強さが悔過に繋がるのだ。

 ・

 ・

 ・

「はい、今日は皆さんに集まってもらいまして大変うれしいです」


 ちょうどその頃、貴族たちが通う後者の方でとある集会が始まっていた。出席者はクラウスをはじめとする上級貴族のドラ息子たち。その目的は彼らの力。すなわち権力、コネ、情報、技術。貴族が持つありとあらゆる力。それが必要だった。


「何のために俺たちを集めたんだよ…」

「また俺たちをイジメるのかよ!」

「クラウス、お前もなんか言えよ」

「…」

「はいはい静かに!時間がないからさっさと終わらせるよ!君たち貴族が持つ力を貸してほしいわけよ!」

「なんだと!なんでお前にそんなことしなきゃいけないんだよ!」


 ブーイングが止まらない。しかしクラウスは違った。


「宇宙海賊か?」

「はいそう!さすが宇宙海賊とボロボロになるまで戦ったクラウスくん!つまり宇宙海賊をぶっ潰すための力を貸してほしいってわけよ!クラウスくんももちろん協力してくれるよね?」


 クラウスは、少し間を置いて答える。


「勝てるのか?宇宙海賊に?」

「まぁ、お前らには無理だろうけどね。俺なら勝てる。宇宙海賊の根城、空の向こうに行く手段を君たちが持ってないか、もしくはそーゆー手段を知らないか、聞きたいわけ。戦うのは俺一人だけでいいよ」

「…まぁお前が一人で宇宙海賊にカチコミかけて返り討ちにあって死んでほしいから手伝ってやんよ」

「ツンデレかな?」

「うるせぇ!」

「とりあえずクラウスくん。宇宙まで飛ぶ方法なんかない?」

「…本当に一人で行くのか?トッシュさんよ」


 クラウスは、彼に…トッシュに問いかける。


「お前らが一緒に来たいなら一緒に行っても良いけど?」

「ごめんだわ」


 黒森峰学園の昼休み。お弁当を食べながらトッシュと貴族たちの宇宙海賊本船殴り込み会議が始まった。


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