88話 相談、次の戦に備えて②
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ぶーん、と空を駆ける鉄の箱。宇宙海賊のロボットの中に入ってる脱出箱。その中身は齢40になろうかという少女が一人。宇宙海賊の美の化身、四天王の一角カズミちゃんです。マッハソニック号レッドスペシャルの必殺技ダイナミック斬からギリギリ脱出できた彼女は、宇宙海賊の根城である本船に命からがら逃げてきたのだ。本船から出されるガイドビーコンに従ってカズミちゃんは本船にINする。本船の使用人が数人集まって来るが、その中に付き人のしょうたくんはいない。
「しょうたくんはまだ戻ってないのかい…?」
「いえ、もう戻っています。研究棟におられるかと…」
「出迎えもなしだなんて傷つくねぇ、あの箱のお片付けよろしく:
「かしこまりました」
脱出艇を頭から入れたので、バックで入れなおす作業に使用人たちが取り掛かる。出る時はそっちの方が出やすいのだ。
「おやおや、敗けちゃったカズミさんじゃあないですか。お宝はどうしたんですかぁ~?」
「…なんかいつもとテンション違うわねエス、嫌なことでもあった?」
カズミちゃんにウザ絡みするのは四天王の筆頭、最強魔将エスである。彼女のために地球まで出稼ぎにきた彼の元に届いた彼女からのビデオレター、その映像を見てエスは…壊れた。
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『オラオラ彼氏のとどっちがすごいか言ってみろや!』
『あぁん彼のよりすごいのおおおお!間男クンのじゃないともう満足できないのおおおお!』
『全くおとなしそうな顔しといてこんなビッチだなんてかわいそうか彼氏だぜぃ!』
『んんんんんんんん♡!!だから間男クンのを…エスくんに移植するね♡』
『えっ!?』
ブシュウ!とカメラの前で広がる血の惨劇。陰茎をサクっと切断され苦しむ間男クン。を尻目に、彼女は愛おしそうにその黒々とした太いイチモツを恍惚と眺めながら、カメラに呟く。
『だから早く帰って来てねエスくん…これを移植するから…』
そこで画面はザー・・・!と砂嵐に切り替わる
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エスは知った。自分の将来を誓った愛する最高の彼女のサイコな本性を…。
「もうめっさ嫌なことがあった!まじ耐えられない!故郷にもう帰れない!けど俺は見つけた!あの星で最も美しいお宝を!あっはっはっは!」
「…お気の毒さまねぇ、言っとくけどお宝は本命の方は手に入ってるからね、それじゃバイバイ」
背中を見せ遠ざかるカズミちゃんのことなど気にせず、エスはまだ笑っていた。
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「あっ!カズミさま!おかえりなさい!言われたのを持ってきましたよ!」
研究棟に入ったカズミを、しょうたくんが案内する。そこには宇宙海賊本船にはいなかった男が一人、真剣な眼差しで何かを見つめていた。カズミのヒールが鳴らすコツコツコツという足音に彼は気付き、カズミの方へ視線を向けなおす。
「お忙しそうなとこを悪いわね、私があなたを呼んだカズミよ。はじめかして、これからよろしく」
「こちらこそよろしく。この船はすごいね、初めて見るものばかりで自分がいかに何も知らなかったのか思い知らされる。ここなら研究も格段に進歩するだろう。たった今も良い実験データが…おっとすまない、自己紹介が先だったね」
早口でまくし立てられそうだなと不安になったカズミの表情の変化を察知し、彼は自己紹介へと移る。
「ドクター・ギロチネスだ、よろしく」
「えぇ、よろしく」
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