87話 飛翔、音速の翼⑤
「うわあ…なにあのでっかいロボ…知った顔と知らない顔が乗り込んでたなぁ…置いてけぼりかぁ俺…」
何の情報も貰っていないため、ガチで宇宙海賊討伐から外されていることを察しトッシュ、ちょっと泣きそうになる。
「ふん、なら絶対自力で行ってやる!なぁネズミ!」
「ゲッギョ!?…う、うん…ゲギョ」
良くわからないのでとりあえず首を縦に振るネズミ怪人。トッシュはネズミ怪人ににっこりを笑みを見せ、ネズミ怪人は猛烈に嫌な予感がする。
「さてここにいたら殺されかねんから逃げるか」
「ゲギョゲギョ。どこ行くゲ…ギョ!?」
トッシュに聞きながらネズミ怪人、ゾクっと猛烈な殺気が迫るのがわかった。不安ですぐトッシュを見ると、トッシュも汗がだらり。
「やべぇ…はやく行くぞ!全速前進だ!」
トッシュたちがいたその場に、遅れて殺気の主がやってくる。
「トッシュ…どこ行きやがった~…」
トッシュに迫る殺気の正体。それはジャスティス(小)のものだった。ジャスティスの右手は、一人の気を失った少女の首根っこを掴んで引きずっている。吐しゃ物で汚れた少女のお顔は、かつて聖女と呼ばれたそれはそれは美しかった少女の面影はなく、今や完全にお間抜けなお顔に加えてパジャマまでゲロにまみれたまさにかつて聖女であったサンであった。
「あーもうサンが邪魔をするから…はぁ…」
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宇宙海賊の怪人どもが湧いたのを察知したトッシュは、泊ってた宿から海賊狩りに意気揚々と飛び出し、すぐにジャスティ(小)に制止され、直後サンがジャスティス(小)を制止した。
「ダメですお姉さま!お姉さままで死んじゃったらワダジイイイ!!」
「こら!ちょ、サン!放し…!」
「よっしゃサン!そのまま抑えててな!」
「ちょ…トッシュ!待ちなさい!」
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先日のテロの報告後、城ではなく宿にトッシュを泊まらせ監視していたジャスティス(小)…についてきた聖女サン。彼女はジャスティス(大)の死を聞き取り乱し、ジャスティス(小)から離れようとしない。それだけならうざいだけで構わなかったのだが、トッシュを守護ろうとするジャスティスの邪魔までしたのだからこれはもう許されざる所業、腹に一発グーパンは是非も無し。気を失い、自ら戻した吐しゃ物の中に沈む聖女サンであった。
「八卦の雷速…もう王都を離れたか…追いつけないわね」
ひとまずトッシュが向かう方向は自分のアパートの方角なので一先ずは良しとし、ジャスティスは王都へサンを引きずり戻るのだった。
一方その頃、マッハソニック号レッドスペシャルは王都のはずれにある無人の石切り場に18号を放り投げ、この場を決戦のバトルフィールドとした。
「さぁここで退治してやんよおばさん!」
「お…おば…!ランくん!かわいいお顔の癖に何てこというのかしら!絶対調教してやるんだから!」
宇宙海賊の科学が誇る巨大ロボと魔王国の魔術で復活した巨大ロボ!決戦の時!