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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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86話 秘宝、無限の心臓③

 王都トーマ。23時のもうすぐ明日になろうというこの時間。いつもなら酒場で盛り上がるおっさんたちや花街に繰り出すおっさんで湧いているのだが、すっかり閑古鳥が鳴いている。今日の夕方、黒森峰高校襲撃したテロリストが解決したあと、魔王の記者会見にて王国に迫る宇宙海賊の脅威が発表されたためだ。身の安全を守護るため、民はみな行動制限を遵守している。無論、守護らない者もいるが、そんな連中は堂々と街中を歩かない。ひっそりと営業する夜の店でしんみりと遊んでいるのだ。


 閑古鳥が鳴きわめく王都の中心、魔王城に到着した3人の人影。伊集院とビィとザグマーである。マッハソニックの主機及びパオロットに無尽蔵の魔力を放出するグランガイザスのコアを採用するために、グランガイザスの肉体を器にしている魔王軍のランに協力を要請するために2日かけて84.4kmもの道を移動してきたのだ。といっても徒歩ではなく、お馬さんなども使って、であるが。移動中の初日に瓦版で聞いた黒森峰高校の襲撃事件は、ザグマーはすぐに宇宙海賊によるものだとわかったので、魔王イクスにその報告も一緒にするつもりだったが、それに関してはザグマーが伝える前に発表されていたので、わりとゆっくりの移動になった。


 そして、魔王城。その入り口。ザグマーは宇宙海賊の気配を察知する。気配を察知する技能があるわけではない。ただ、入り口の異様な雰囲気は、間違いなく異常事態を伝えるものであり、ザグマーはそれが古巣の宇宙海賊によるものだと理解できたというだけの話だ。


「兵士さんが倒れてる!おい、しっかりしろ」


 かけよる伊集院を、ビィが止める。


「待って!これは下手に近寄ったらまずいかもしれない!」


 ザグマーが続ける。


「宇宙海賊だ…心当たりがある」

「…四天王のカズミってのかな?」

「さすがビィくん、よく覚えてる」

「おなじ毒使いだしね」


 毒使い。これはネオデビルクロス四天王の一角である美魔将カズミの戦術である。もともと科学畑の出身で、毒針やら毒ガスやらで数多の敵を制圧してきた恐ろしい将軍である・


「おいおい…いままでの四天王に比べてガチすぎるだろ…」


 戦慄する伊集院。急いで兵士の治療にかかる。彼の残り少ない魔力は一度減ったら回復することはない仕様だが、命には代えられない。まず筋弛緩剤による中毒を起こしているとの結果が出たため筋弛緩回復剤を投与する。すぐに治療効果が出るわけではないので、一旦その場に安静にし、王城内部へと急ぐ…しようとうする伊集院を、ザグマーが止める。


「カズミはマイクロモスキートドローンで毒を注入してくる。対策はあるか?」

「…」


 言葉に詰まる伊集院に代わって、ビィが答える。


「大丈夫、生活魔術の扇風の術でたぶん防げるだろうし」


 熱い時に使う旋風の術。周囲に風を起こして体温を冷却する夏場に欠かせない生活魔術である。魔術の才能が無いビィであるが、暮らしを便利にする生活魔術程度なら使用できるのだ。


「そうか、小さいから扇風機程度の風で吹き飛ばせるな」

「うん、なら行こうか」

 ・

 ・

 ・

 魔王城最奥部にて、同じく筋弛緩剤に苦しむ男が一人。魔王軍の支配者、そして今の王国をも支配する魔界の王、魔王イクスですら、毒には苦しむのである。


「うぐぐ…イクスシェイドよ…これはどういうことだ…」

「どうやら侵入者ですイクス様…どうやったのか我が空術の網を潜り抜け、人知れず王城内部に毒物を撒いたと思われます」

「うむ…私の体に力が入らん…今敵が来たら…わかっておるな?」

「もちろんですイクス様。どうやら敵の狙いはラン…いや、グランガイザスかもしれません。私はイクス様から離れられませんが…『彼』なら無事切り抜けてくれるでしょう。

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