84話 機人、ズオー①
突如学校に侵入してきたテロリストと思しき集団、さらに学校中から響く銃声。混乱する校長の元にも、その魔の手は伸びてきた。
ガラガラ!開いた扉から武装した兵士二人がなだれ込む。それぞれが配置に付き銃を構え校長の動きを止め、最後に入って来た3人目、指揮官らしき男が、ゆっくりとその目的を語り掛ける。
「君がこの学校の責任者かね。我々の目的は殺戮ではない。そちらが所持しているとある物さえ渡してくれれば命は保障しよう」
・
・
・
「オラ動くなよ、ミニ四駆みたいに肉抜きされたくなければなァ!」
兵士たちが銃口を向け教室内を威嚇する。その威嚇に無反応な者が一人。新任教師のマーサ先生だ。かつて魔王グランガイザスを討伐した勇者である彼女ならば、その兵士たちを静かに音もなく秒で殺すこともできようが、彼女は特にそうしようとは思わない。優秀な生徒は自分の組織に入れたいという目的の元、自分に好意を向ける王国王子のコネを使い潜入した学校であるが、全員をスカウトするつもりは無い。そして、今授業をしているこのクラスには目ぼしい人材はいない。というより、目ぼしい人材すらも惜しくはない。彼女の現在の興味は我が子トッシュのみに向けられているのだから。
「おい先生ヨォ、すました顔してんなァ!?こいつが目に入らねぇか!?」
興奮した兵士の一人が銃口を突きつける。しかしマーサ先生は動じない。冷めた視線を兵士に相も変わらず向けている。
(トッシュは無事かしら)
彼女の思考はそれだけだ。兵士の声も聞こえていないわけではない。ただ興味が向かない。道端の小石が目に入っても意識しないのと同じように、彼女にとってこの兵士その辺の小石と同じである。
「なんとか言えよオラァン!」
兵士は銃口をマーサの口に突っ込む。ここまでされたらさすがにマーサ先生と言えども意識はする。車のタイヤが弾いた小石が当ったときと同じだ。マーサ先生はイラっとする。
「ふぁに(なに)?」
ドキ!銃を咥えるマーサ先生の煽情的な姿に兵士の股間が熱くなる。こんな鉄ではなく肉の棒を咥えさせたい、兵士はマーサ先生を引っ張ってトイレに向かおうとする。その動きに他の兵士がなにやってんの?と止めて来るが、マーサ先生を連れていく兵士は宇宙傭兵・静音秒殺隊でも一番の乱暴者の男だ。うるせぇテメェらは仕事しとけと一蹴し、教室を後にする。
「チッ、まーただよ。あの野郎頭にもペニスが入ってんじゃねぇのか?」
「かもな。まぁいいさ、後で俺たちもJKを飽きるまで犯せるってもんよ」
・
・
・
「おい!何やってるうるさ…」
トッシュが兵士3人を秒殺した騒ぎを聞きつけ、隣の教室に配置された兵士がトッシュの教室の扉を開けた瞬間!扉の横に待機していたトッシュが兵士に跳び付き、兵士の頭を両脚で挟みむ!うるさいと最後まで言い終わる前そのような事態に困惑する間も無く、トッシュは空中で旋回する勢いのまま両脚を使って兵士の頭を地面に叩きつける!
ゴッ!という鈍い音。意識はあるが、声は出ない。トッシュがまだ首から両脚を放さないからだ。呼吸ができない兵士はそのまま意識を失う。落ちたな。
「ふう。んじゃ次行くか」
「トッシュ…お前…ナニモンだよおい」
「ハッハッハ、魔界で多少の修羅場は経験してるからな。ナイトウはここに残っててくれたまえ。俺があのテロリストを全員やっつけて来るからさ」
・
・
・
「フム、第一段階ハ成功カ」
後者の屋上で事態の進捗を確認する機械の男。宇宙海賊ネオデビルクロスの四天王の一人、機魔将ズオーだ。彼は宇宙傭兵・静音秒殺隊を雇い、この学校にあるお宝を狙っている。この学校が、それを一番持っているという情報の元、この襲撃を起こした。作戦名は偏差値奪取作戦。この王国位置の進学校、黒森峰高等学校に在籍する、偏差値70以上を誇る未来を支える優秀な人材たち。そんな連中が必死に集める偏差値は、さぞ貴重なお宝に違いない。それをいっぱい集めて宇宙海賊の首領、宇宙皇帝ドン・ホーⅡ世に褒めてもらうのだ。