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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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83話 強盗、狙われた黒森峰②

 ~その日の夜~


「やぁ、やっとゆっくり話せ…」


 ザグマーが言い終わる前に伊集院のチェーンがザグマーの目前を横切る。前髪をチッと掠り、もし当たっていたらとザグマーはぞっとした。


「お前宇宙海賊って言ってたな」

「そういう君は、宇宙海賊からあのロボを盗んだ連中かな?」


 まるで刺すようなギラギラした視線がザグマーに向けられる。しかしザグマーはもう過去のザグマーではない。信じてもらうためには、まず自分が人を信じること。ザグマー市の市民たちもわかってくれた。きっとこの子とだってわかり合えると、信じている。


「まず最初に、僕はもう宇宙海賊じゃない。宇宙海賊からこの星を守るためにこの地に降りたんだ」

「はいそうですかって信じろと?」


 一筋縄ではいかない。それもその筈。ザグマーに知る由もないが、ザグマー市の市民たちは力也が意のままに操れるように遺伝子改造したリキシタンたちの子孫である。血が薄まりその支配力も弱くなってるとはいえ、その影響はいまだ残っており、故に力也、そしてジェロニモの血族であるザグマーの言うことをすんなり信じやすい性質であるためだ。


 だが、伊集院は違う。異世界日本からやってきた彼に、その影響は皆無。さぁザグマー、ここが正念場だ。伊集院を納得させ、人生のステージをステップアップだ!


「信じてほしい。僕が持つ宇宙海賊ネオデビルクロスの情報は全て話すし、勿論宇宙海賊とも戦う」

「…あれ、直せるか?」


 伊集院が言うアレとは、他ならぬ宇宙海賊の戦闘ロボット。もともと宇宙海賊にカチコミをかけるため、そしてレイを救うためのものだったが、思わぬ戦闘により完全に破壊されてしまった。さらに伊集院の残りの魔力も残り200万円を切っている。


「宇宙海賊と戦うにはアレが必要だ…でも俺にはもうアレを直せない」

「うん、やってみよう。この街を調べたところ、ちょうど地下にロボットを整備するための施設があったんだ。あの力也のメンテナンスをしてたんだろうね。そこを使えば修理できるよ」

「…俺も一緒に修理するぞ。荷物運びくらいはできるはずだ」

「それは心強いね。ぜひ頼むよ」


 そして、力也教改めジェロニモ教の全面協力のもとで、神の器再建計画が始動した。ジェロニモ教の新たなる象徴を作る為、マッハ丸と力也を新たな神の器へと強化修繕するのだ。

 ・

 ・

 ・

「おい模試の結果どうだったよ?俺C判定だったわ」

「お前は5教科7科目の国立狙いだもんな。俺は私立の3科目だけだから…うわ、俺もCだ…」

「はっはっは、条件は全員同じだからな。科目が少ないからといって自分だけ楽なわけじゃあないもんな」


 予備校で配られた模試の結果に一喜一憂する塾生たち。そんな中、黒森峰高等学校2年の生徒たちはこぞってA判定をたたき出す。


「A判定か、よかった」

「国立狙いでAとかマジパネェ!さすが黒森峰だな!」


 黒森峰の生徒である彼は、塾からスカウトされて通っている。当然学費は免除だ。国立の合格者をこれだけ出しましたという宣伝のために、塾に通う必要のない頭脳の持ち主を塾生にして、実績にする。塾だって営利企業だ、仕方のないことなのだ。


 帰宅する黒森峰の生徒は、夜道に不審な尾行者がいつの間にかついて来ていることに気付いた。彼は男子だが、世の中には男子しか愛せない男性だっている。身の危険を感じ、駆け出す。曲がり角を曲がった直弩、ドンと対向者にぶつかった。


「す、すんません!」


 謝ったのに返事がない。夜の明りの無い道、相手の顔がよく見えない。


「あ、あの…」


 何が何だかわからないが、彼の本能が身の危険を警告する。逃げなければ不味い!それからは何も言わず走り出す彼の肩を、その男(?)がつかんだ。


「ひい!」

「出せ…」

「な…なに…?」

「偏差値を出せ…」

「は…?」

「偏差値だ!」


 急に怒り出したそいつは、男子学生の鞄を持ち上げ、ジッパーを開け、ひっくり返す。中身がバラバラとアスファルトに降り注ぐ。男子学生は財布が狙われたのか?いや財布ならポッケだし、ていうかなんでわざわざ開けるんだ?鞄ごと持って行けばいいのにと1秒未満で思考する。その思考の最中、そいつは一枚の紙を拾い、そしてそのまま学生がやってきた曲がり角の向こうへ消えていった。


「判定書…?」


 奪われたのは、模試の判定書だった。翌日、彼は学校で知ることになる。模試を受けた学生たちの多くが、模試の判定書を奪われていることに。

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