81話 魔神、600年ぶり③
ザグマーの地に降り立つ白き巨人!いや巨神!それは魔神!大いなる神、力也なり!
「おお!あの白き巨体、まさか伝説の!」
「ありがたやありがたや…ナンマンダブナンマンダブ…」
「神が降臨なされた…ついにハルマゲドンの時が…」
「大いなる力也様がリキシタンをお救いになられるぞ!」
神の姿に大騒ぎのザグマー市民たちの脳に直接、全知全能の魔神力也のゴッドボイスが届く。
「600年ぶりに力也が降臨した!さあこの地に湧く我が信徒たちよ、今こそ祝福を与えようぞ!それはすなわち死!死に勝る安息なし!亡びよ!」
魔神が開口!その口内に蓄えられる高エネルギーを今まさに代理にゲロせんとする!困惑する市民たち、光景を、まるで自らの目で見ているように感じている元宇宙海賊・元海魔将ザグマーがいた。
(なんだこれは…。動けない…。これは僕なのか…?まるで巨人になったみたいだ…巨人?なんで僕が巨人に…そういえば、あの封印の中から出てきたっけか…)
その意識はぼんやり、まるで起きた後出勤前に1時間弱二度寝をしているかのようなまどろみ。現実と夢が混在したような意識の中、止めたくても止めれず、なす術なくザグマー市を滅ぼすしかないのかという無力感。その悲劇を食い止めるのは、勇者の仕事!
「やめろぉ!」
上空から急降下するマッハ丸の対地キックが力也の脳天に炸裂する!勇者のロボ、マッハ丸がザグマー市を守るためにやってきた!頭上から地面に向かって走る衝撃が、力也の頭蓋ごと上顎を閉じる!直後密封された状態で炸裂するエネルギーが力也の下顎を破壊、カバの反撃を受け下あごが破壊されてだらりとぶらさげたライオンのような痛々しい姿へ力也が変貌する。
「ちょっと!何アレ!王国って巨大ロボが量産されてるの!?すごいね!」
「いや違うし!俺もわからんけどアレはヤバい!なんとか止めないと!」
伊集院とキキが、マッハ丸で力也とタイマン!先ほどの顎破壊の衝撃と、その宇宙海賊時代から外観がマイナーチェンジされマッハ丸となったロボを見て、ザグマーの意識が覚醒する。
「ハッ!アレは奪われたっていう宇宙海賊ロボット!ていうかこれ!?腕が拘束されてる!足も!磔!?ちょとt、こういうのは女の子がされるもんだろうに!」
独り言で文句を言うザグマーに、予想だにしない返答が届く。
「そう文句を言うな。そなたは今や神の力を行使する神子なのだから」
「神子?ていうか僕はザグマーに来たばっかの元宇宙海賊なんだけど。神子とか知らんし」
「そう、そなたは600年前に宇宙へと去った一族の末裔。最後の神子。喜ぶがいい、今まさに神となったのだから」
「はあ!?俺がどうやってその末裔だって証拠だよ!?」
「我が封印を解いたあの力こそまさにその証明。魔力と闘気も違う一族のみに伝わる神通力。それこそが証拠。さぁ今一度神とシンクロするのだぁ」
せっかく取り戻した意識だったが、またもまどろむ。仕事が終わって食事して風呂入って一段落しゴロゴロする午後9時ごろのあの耐えがたい眠気のように、ザグマーの意識を心地よい眠りへ誘う。
「う…くそ…、奴が神通力とか言ってる僕の分解パワーは手のひらから発動するから、手首を拘束されたこの状態だと触れないから拘束を分解できない…」
「そう、おやすみ我が神子。今こそ我と一つになり果たせなかった600年前の悲願を果たすのだぁ」