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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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80話 前進、後悔してる時間はない②

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「おっシャア!できたぁ!」


 もう日が沈みつつある黄昏時、ついに海賊から奪取したロボの修復改造が完了した。まがまがしい黒いボディやあちこちにあるトゲトゲの意匠は撤去し、ワインレッドのボディが輝く武骨というか、言葉にするなら質実剛健、有言実行ってな感じのバリ渋い、ビッと決まったロボにできあがった。


「おおー!ついにできたかー!かっけー!」


 キキの驚きの声がまぁまぁ心地いい。


「はっはっは!こいつには全財産の3/5をぶっこんだからな!その程度の驚嘆じゃ物足りないくらいだぜー!」


 つまり3億円弱ぶちこんだ。残りの現金魔術の魔力は約2億円。もうこのロボの維持管理だけでも長くは持たないだろう。が、後悔は無い。伊集院には決意があるから。


 と、いうわけで、さっそくロボ…名前を決めていなかったのでおいおい考えるとして、すぐに宇宙にカチコミに行こうかとするが、キキが制止する。


「ちょっとちょっと、もう遅いし村で一泊してからにしなよ。ごはんも食べてないでしょ。無理はいかんて」

「…そう、だな」


 今の伊集院には疲労がある。一日かけてプラモデルを作ったかのような肩こりや腰の痛み。今日はしっかり休まなければロボの完全なパフォーマンスを発揮することはできないだろう。アニメでも言ってた。パイロットは休むのも仕事だと。急がば回れ。ここはしっかり体を休めようとキキの甘言に乗ることにした。


 そして、キキの村、キキの家。なぜキキの両親は得体の知れない見知らぬ伊集院を受け入れてくれたのだろうか。その理由は、その晩に判明する。


「アタシ、結婚するんだ…」

「…まじで?いくつだよお前」

「14…もうすぐ15だけど」

「旦那さんは?」

「53」

「は!?」


 よくある話だった。半年前、この地域を治める領主がたまたま一目見たキキを見初め、キキの両親にこの世界の一般サラリーマンが10年働いても作れないほどの金額をポンと寄越して、その夜を共にした。そしてキキが法律で結婚できるようになる15になる日に、迎えに来るという。


 思えばキキは美しい娘だ。艶のある緑がかった髪はまるで雄大な草原のようにすごい緑だ。日にやけた肌は元気な感じがするし、吸い込まれそうなブラウンの瞳はこう綺麗で、語彙力の無い伊集院にはうまく言語化できないが、とにかく美しい娘だ。権力者ならその権力を行使してそら抱きたいと思うのも無理はないだろう。


「今まで3回アイツが来て、大金を寄越して、抱かれるんだ…」

「…」

「アイツの下で、ただ楽しかったことだけを必死に考えて、でもアイツの顔が近づけて、アイツの臭い舌がアタシの口に入って来て…」

「もうやめろ」

「…」

「悪いが、俺はお前を連れて行けない」

「3日後…アタシは15になる…」

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 ~3日後~


 貴族の豪華な馬車に乗るキキ。隣には父親よりも年上の、この地域の領主。今日54歳を迎えた豪族バパール(54)がいた。同じ誕生日というのも運命を感じるバパールは、自らの第七夫人であるキキを先走って馬車の中でカーセックスに及ぼうとキキにのしかかる。


「や、やめてください…!」

「何を言うか!もはや辛抱たまらぬ!お前の初めてはすべてワシのものじゃ!お前の初カーセックスも!」


 ビリィ!キキのドレスを破るバパール!その握力は未開封のスチール缶を握りつぶすほどのパワー!


「ブヘヘ!ウェディングドレスは破れてこそ美しい!」

「いや!いや!伊集院ー!」


 キキの叫びの直後、ズゥン!と巨大な地響きが、バパールのへそまで反り返る股間のバパールにまで伝わった。馬車を取り囲む衛兵たちが突如の事態に悲鳴を上げる。


「何だー貴様ー!化け物かー!」

「ひいー!なんてでかさだ!10mくらいはあるぞー!」

「鋼・・・鋼の肉体だ!血の様に真っ赤な!」


 慌てて飛び出すバパール、胸元を抑えたキキも車外に飛び出し、それを目にする。


 それは元宇宙海賊ネオデビルクロスのロボ兵器にして、当代勇者である伊集院英雄の愛機。真紅に身を包む鋼のボディ。空冷4ストロークDOHC4バルブ直列6気筒の心臓エンジンを搭載した、排気量1047cm3のモンスターマシン。1Lで9kmを走破する音速の狂い飛天。伊集院の全財産の3/5をつぎ込んだ魂の化身。『烈怒レッド彌羅唖呪ミラージュ』!


「よおオッサン!良い女を連れてるな!俺にくれよ!」


 キキを『奪い』に、伊集院!大地に立つ!

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