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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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79話 決壊、未来を嘆く涙⓷

「貴方がザグマーさまですか。私はザグマー市を治めてますアルメイダ23世です。えぇ、貴方はもしかしたらジェロニモ・ザグマーの子孫かもしれないとお聞きしております。ぜひお見せしたいものがありまして、jこちらです」


 訪れたザグマー市にて、ザグマーは領主アルメイダ23世に案内されるのは、地下。不穏な雰囲気を感じるザグマーであったが、何を聞いてもまずは付いてこいと言うばかり。少々イラっとしたザグマーであったが、現状根無し草な彼にはまず後ろ盾が必要である。そこでフィリップ伯から紹介されたのがアルメイダ23世だ。しかもザグマーの出自に関わるかもしれないとも言われたのだから、一先ず従うのが賢明だ。


 ザグマーは根無し草である。親の愛なんてものを受けたことも無く、宇宙のスラム、アステロイドベルトのコロニーで浮浪児をやっていた。当時から周りに無い不思議な力を持っていたたが、気味悪がられるのが嫌だったので隠していた。1人、打ち明けた友達がいたのだが、そいつはザグマーを利用して金儲けをしようという裏切りを見せたため、だ。


 親の愛を受けたことはないが、親はいた。母を死なせた憎むべき父が。ザグマーは父を殺し、スラムへ落ち延びる。ザグマーの名には、別に誇りも愛着も何もない、ただ個体を認識するためだけの記号にすぎない。ただ、自分を偽ることは許せなかったので名を変えなかった。


 父からの唯一の貰い物ともいえるザグマーの名。ザグマーが、そしてその父が受け継いできた、ザグマーの名。今まで脈々と継がれてきたザグマー家のルーツがこの地球にあるのかもしれないというのは、興味があった。ただ、それだけ。別に今更ザグマー家としてザグマー市に君臨しようなどとは思わないし、ただザグマー家の子孫だと証明されたらいろいろ便利かな、と、ただそれだけの気持ちだ。


「さぁ、これです」

「これは…」

「これこそザグマーの秘宝。ザグマー家の者のみがその封印を解けると伝わっています」


 それは地下の空間にあった。鉄だろうか、金属の…山。金属のパーツがたくさん集まって山みたいになっている、ではない。本当に、一つの塊の鉄。山の様に大きな巨大な鉄塊が、そこにあった。


(…たしかに、ザグマー家の秘宝、かもしれない。この30mはあろうかという鉄塊の、ちょうど人間の手の高さになる部分、ここに物質崩壊点がある」


 物質崩壊点。ザグマーの力は、この万物に存在する物質崩壊点に魔力とも微妙に違う気がするザグマーパワーを込めることでその物質を構成する命無き力を霧散させることができるのだ。


 それが何なのかわからない。でも、なぜかそれが正しいことだと確信し、ザグマーは物質崩壊点にザグマーパワーを込める。


 ゴゴゴゴゴ…!


「おぉ…!これは!今まで何人たりとも解明できなかったザグマーの秘宝が…!」


 興奮する領主。ザグマーも同じくドキドキ。そして鉄塊が零れ落ち、それは現れた。


「こ、これは…!」

 ・

 ・

 ・

 時は遡り、ネオデビルクロス本船ブラッディクロス号に潜入を試みた時空少女レイちゃん、死神イクスデス、そして伊集院英雄。空術の力なら何人いても楽々潜入できる。そのために死神イクスデスは彼女をスカウトしたのだ。…が、その潜入は直後に察知された。ビー、ビー、ビー、とけたたましく鳴り響く警報音。焦るレイは、すぐに退散しようと空術を使うが…ダメ!まったく使えない!


「何で!?空間ジャミングされてる!?」


 空間転移技術は宇宙海賊ネオデビルクロスにも存在する。その可能性を考慮しなかったのが、今回の敗因だ。戦闘員や怪人たちを何とか撃退するも多勢に無勢。見知らぬ船内をなんとか逃げるようと走る。奔る。疾る。うまく追跡を掻い潜り、伊集院の不思議なナビゲート能力でなんとかネオデビルクロスのメカ兵器が置いてあるデッキまで逃げる。


「あれは!とりあえず乗り込もう!」


 何か乗り物っぽいものがあったので、伊集院がそれに乗る。伊集院はそれが搭乗型のロボットだということがわかったからだ。全長は20mくらいあろうか、それが仰向けに寝ている。


「ええ…、何なのそれぇ…」

「早くしろって!」

「逃がさないわよ侵入者さん!私はネオデビルクロス最高幹部が四天王、美魔将カズミよ!」


 伊集院はロボットアニメが放送されている世界から来た人間なので直感的にわかったが、レイはそんな世界とは無縁の人だ。食べられたりしないか不安で乗り込めないでいる。そんなうだうだしてたら、ほらやって来た追手たち。


「早く来い…って!何だてめぇ!?」

「逃ガサン!我ハ四天王機魔将ズオー!」


 レイを乗せようと声を上げる伊集院のいるコクピットに飛び込んできたのは、でっかい機械人間!


「無駄ダ!コノロボハ主機ガ未搭載!動キヨウガナイワ!」

「まじかよ…!」

「やれやれ」


 絶体絶命の危機に、死神がズオーに抱き着く!


「死神!?」

「何ヲ!?」

「僕がこれをどうにかするからすぐにハッチを締めるんだ。そして君だけでも逃げたまえ」

「どうにかって…ってええ!?」

「何!?」


 ズオーの巨体が持ち上がる!そのまま後ろに投げっぱなしジャーマン!が、ズオーもただでは転ばない!その腹部に搭載されたスーパーソニック砲が発射される!


「まいったね、これは」


 ズオァ!と発射された一発が、死神の体の中心部を吹き飛ばす!胸部から上がコクピットに転がり落ちる!ぶん投げられたズオーが迫る!力を封じられたレイはカズミに囚われている!


「早く逃げたまえ」


 死神が言葉と同時にハッチを締める!ズオーがハッチにへばりつく!直後、残った死神の腰か下が爆発する!吹き飛ぶズオー!しかしこのロボ、主機が無い!動かないのだ!


「君にはあれがあるじゃないか。君の魂が。血液の代わりにガソリンを流す、鉄の心臓が」

「…!」

「クソオオオアアアアア!」


 ズオーが叫ぶ!


「逃がさないわよ子猫ちゃん。私は可愛い子が好きなのよ」


 カズミが舌なめずり。


「必ず!助ける!」


 ロボの中から届く叫び。それは伊集院の誓い。


「期待しないで待ってるわ」


 レイの返事は、届いたかはわからない。ただ、主機の無いそのロボは火を噴いて、デッキに大穴を開けて飛び出していった。空気が外に漏れだし、一緒に戦闘員や怪人たちも投げ出される。しかしレイはしっかりとカズミに捕らえられているため、飛び出さない。もし外に飛ばされていたなら、ジャミング外で王国に逃げることができたかもしれない。しかし、その大穴は緊急シャッターで閉ざされる。もはや逃げることは叶わない。レイは、自分が涙を流していることに気付いた。この後待ち受ける未来が、その涙を流したのだ。

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