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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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79話 決壊、未来を嘆く涙①

「ニャーン」


 ガサガサと茂みから猫が出てきた。かわいらしいお顔、かわいらいい声。オーラが宇宙海賊を裏切る理由となった、守りたい存在。それが猫だ。そのゆるい癒し効果抜群の声ににオーラはすぐ反応する。


「む!その声は…わが友李徴ではないか!?」

「ニャー」


 人懐こい猫さんだ。オーラの招く手に誘われてやってきた。犬とちがって柔らかいその体は抱っこしても収まりが良く、犬とちがってベタベタしていないその毛並みはフワフワで、犬と違ってベロベロ舐めてこないから汚くない。やはり猫だな。


「おーヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨーシ。どうしたどうした何か言い残したいことでもあるのか何言ってるかわからんぞ全く。完全にサバトラになってしまったか」

「山月記か…将来が不安なのは確かだな」


 猫といちゃいちゃしているオーラを見て、ザグマーが今後の不安を思い出す。


「オーラ、次は誰が来ると思う?」

「消去法でズオーだな。エスはあんまり動かないし、カズミもあんま前に出たがらないし」

「だなー。道具なしでどうやって闘うか。デビクロアイテムはリスクあるから処分したし」

「お前の『力』なら、ズオーに有効だと思うがね」

 ・

 ・

 ・

 ~アル邸にザグマーがやって来た日~


「で、この手足戻してくれるんでしょザグマーくん」

「ん、んー…」


 ザグマーがアル邸のアカネを訪ねて来た日、ザグマーはアカネと落ち着いて話をするために抵抗する力を無力化させた。アカネの失われた手足の先に装着されていた金属製の手足。その義手義足を、破壊した。


「ゆっくり話すために後で直すって言ったけど…ていうかそのつもりだったけど…ごめんこれは無理だ」

「えー!ちょっとどうしてくれるのよ!あたしトイレ行きたいんだけど!」

「…アル」

「お、おぉ…」


 ザファーに促され、アルがアカネを抱きかかえる。


「え、ちょ、何!?」

「…トイレ、行くんだろ」

「う、うううぅぅ」


 人前でトイレに介護されて連れていかれる羞恥心。察してくれたのかザグマーもゼファーもその場から席を外す。オーラは残っていたが、ザグマーに引っ張られてあっちに行った。


 チョロロロロ…」


「アルくん…」

「ん、終わった?」

「うん…入って来て」


 上腕から先、太股から先を失ったアカネは、自分でパンツを上げることもできない。トイレに座らせてもらったときと同じように、アルに着衣と、あとトイレを流すことをお願いする。トイレを流すことくらいは自分で出来るかと思ったのに、できなくて…辛い。


 ジャアアアア~


 極力見ないようにトイレを流し、アカネのおパンツを上げる。位置を微調整して、つぎはズボン。便座に座る前と同じ格好に戻ったアカネは、いつの間にか、泣いていた。


「うっ…ううううぅぅ~…」

「アカネさん、どうした?」

「…私、山賊に囚われて手足を奪われて、トイレも一人でできなかった…。あの時を思い出して…」

「…」

「どうして、いつも忘れようと思ったら、すぐに思い出させられるの!?あの時もラファエルが地元に来て、もうやだぁ!」


 アルの前でアカネがついに決壊した。


 その声は、別室のザグマー達にも聞こえていた。


「あーあ、ザグマーやらかした~」


 からかうオーラの声。ザグマーもどうしようか頭を抱えている。そんな二人を見ながら、ゼファーは話題を逸らすためにザグマーがアカネの義手義足を一瞬で分解した術について尋ねる。


「ところで。ザグマーくんはアカネの義手義足を一瞬でバラバラにしたけど、アレは何だい?」

「…!」


 それを聞いて、オーラも思い出した。


「そうだ!お前俺のもぶっ壊しただろ!あれは何だ!?手順を踏んで分解したじゃないぞあれは!同時に全部、こう解けるように崩れた!」

「あー、あれね。うん。今まで隠してたけど俺そういうのができるんだよ。こう、力を霧散させるっていうのかな。オーラのアレはこう、ビスの締め付ける力をこう緩めてバラバラにした感じ。あの子の義手義足はなんか中にあった妖力みたいなのを霧散させたらいきなりバラバラになってこっちも驚いてさ」

「それって、生物に触れたら生命力を霧散させて、最悪死に至らしめることもできるのか?」


 ゼファーの問いかけ。生命力を闘う術にしてるゼファーにとって、もしそれが可能なら天敵に成りえる。攻撃が通らないということになり、もし他に同じ力を使う宇宙海賊がいたら対策を練らなければならない。


「いや、それはできない。僕ができるのは命無き力だけだから。だから壊しても修理はできるはずなんだけど…あの金属の手足はなんか勝手が違って」


 魔界合金ハイパーチタニウム合金製の義手義足。それは内部に魔力を内包する金属故に、魔力を作用させることで自在に変形させ、つまり関節なども再現できるのだが、肝心な魔力が抜けきったためもはやうんともすんとも言わない。そして一度完全に魔力が尽きたハイパーチタニウムは完全に死に至る。もう直らないということだ。


「命じゃないのに、命みたいなんだな、魔力って」

「君たち宇宙海賊は魔力を持たないのか?…ザグマーくんのその力は、魔力だと思うけど」

「何!?ザグマー貴様妖術が使えたのか!?」

「…なのかなぁ」


 ガチャり。話し込んでると、部屋の入口が開く音。アルと、アルに抱きかかえられたアカネが戻ってきた。戻って来るなり、アルがゼファーに話しかけてくる。


「なぁゼファー」

「ん?」

「俺、インサラウム村に戻るよ」

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