78話 思惑、三者三様①
~アル邸~
「え、ちょっと待ってザグマー。お前も裏切ったの?」
「も?お前も?…うわしまった!オーラお前支給品持って来てるか!?」
「お、おぉ…。俺の得意なビーームソーードとビーームショットを使えるアームブラスター兵器、通称『オオカミ』を右腕に…あっ!」
言ってる途中で、ザグマーがオーラの『オオカミ』に手を伸ばし、そして『オオカミ』はガラガラと崩れ去った。
「テメェー!何てことしやがる!」
「お前はアホかデビクロの支給品は盗聴機能が付いてるんだよ!俺らの裏切りは筒抜けなんだよ!あー!しまったー!早とちりしなければー!」
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「というやりとりがあって。理由はよくわからんがアイツら裏切りやがった」
デビクロ首領の流した音声データ、それは紛れもなく二人の四天王、【ネオデビルクロス四天王一の知恵袋】海魔将ザグマーと、【ネオデビルクロス四天王の切れたチェーンソー】雷魔将オーラの裏切りの証拠。これを公開した首領の意図は、つまり。
「まぁ奴ら裏切り者はまぁどうでもいいけど、お宝はしっかり集めて来ぉー。奴らが邪魔すればまぁ殺すなり犯すなり好きにしなー」
「あら、寛大な判断ですわね首領。てっきり首を持ってこいって言われるのかと」
「ウム。シカシ裏切ッタンダケン、奴ラガ邪魔シテクルニ違イナカバイ」
「まぁそうだわね。…エス、貴方も何か言ったらどうなの?」
「…」
これまで言葉を発しないのは四天王最強の男、最強魔将エス。会話を振られるが、それでも彼は無言を貫き、あろうことか席を立つ。首領にすら背を見せるその非礼にカズミが叱ろうとするが、それを首領が制止する。
「貴方…!」
「よい、奴には奴の考えがあるに違いない。なにせ奴は最強よ」
「シカシ、マズ宝奪取ノ前ニアレヲ…奪ワレタアレヲ取リ戻サナケレバ…」
シュー、と会議室の扉が閉じる。エスの耳に首領たちの話し声はもう届かなくなった。ブラデディクロス号は防音もバッチリだ。それは個室も同じこと。そして盗聴器は外出時の行動チェックのために持たされているもので、個室内はプライベートも保障されている。ナニをしても、音が盛れることは無いのだ。
個室に戻ったエスは、すかさずベッドに身を投げる。エスが思うのは、裏切り者二人。ザグマーとオーラがいなくなった四天王のことを。今後のデビクロでの業務を考えると、胃が痛い。
「あいつら…俺を置いてくなよー…根無し草だからなぁ、あいつら…」
四天王の中で割と話相手になってくれたザグマーと、明るいキャラで場を和ますオーラがいなくなった。残ったのは四天王のお局カズミと、機械。お局は性格がきついから一緒にいてつらいし、機械と話すのはゲームの中の二次元のお嫁さんとお話してニチャア…みたいでなんか気が進まない。
「あー、何が四天王だよ…何が高収入だよ…数年星の海で働けばお金がいっぱい稼げるってよォー、確かに稼げるけどよォー、海賊船ってよりマグロ漁船じゃねぇか…地元で待つ彼女のためにいっぱい稼ぐって約束したけどもう帰りたいよォー…」
~一方、その頃~
「オラオラ、彼氏のとどっちがすごいんだ正直に言えよ」
「あぁんすごいいいいい!チャラ男くんの彼氏のよりゴリゴリして気持ちいいのおおおお!」
「かわいそうだな彼氏クン!すっかり俺様の女だぜ!」
エスと彼女のベッドの上、不倫で交わる彼女とチャラ男くん。シーツに残る染みは愛の証。彼女はチャラ男くんの上で、吹いた。
「いやいやいやいや!そんなことはない!そんなことは…!黒髪ロングで控えめな胸で清純派な彼女に限ってそんなことは!クソ!早く地球のお宝集めて帰りてぇ…!」