77話 集結!四天王!⓵
最近巷で騒ぎを起こしている怪人騒動、その黒幕宇宙海賊ネオデビルクロス。先日の怪人の騒動はフィリップ伯に報告を出しており、それは魔王国の中枢まで伝わっている。が、彼ら海賊の怪人たちによる国民を狙った集団ストーカー行為、思考盗聴、統合失調工作、騒音をまき散らす電磁波犯罪で魔王国の情報が洩れていることは知られておらず、そこへの対処はできていない状況だ。そうして国民の個人情報を犯罪により集め、価値あるものを効率的に略奪する宇宙海賊の卑劣な組織的犯罪。その第一陣として四天王オーラによる猫の略奪が行われているのと同時刻、同じく四天王ザグマーが、アカネのもとへやってきた。
「デビクロの…!」
アカネはその鋼の義手義足からヒュっと鋼の糸を広げる。アルのインパルス・ストリンガーの元ネタになったのはアカネの糸である。その糸の精密動作性はアル以上だ。
「鋭い糸、危ないな」
「え?」
ザグマーが呟くと、突如アカネの義手義足がまるでジェンガのように崩れ去り、アカネはバランスを崩す。このままでは重力に逆らえず地面に激突してしまう!1mは一命取る!このままではお腹の子が!
直後、ふわっとした浮遊感をアカネは全身で体感した。バランスを崩して視界があさっての方向を向いたため、何が起きたかわからない。ただ、たくましい腕が自分の体を支えていることがわかった。落ちないようにやさしく受け止めてくれた。…その見知らぬ男、ザグマーが。
「な、なにおー!セクシャルハラスメントー!」
「ちょ、ごめんて!危ないて!」
ザグマーの両腕の中で、上腕の途中で切断された両腕と、太股の途中で切断された両脚、まるでマンチカンやダックスフンドのような短い手足をバタバタとさせてもがく。自分の体はもうアルにしか許るすつもりはないのだ。
「うわー、浮気かー」
「ん?」
「は!?」
そんなザグマーとアカネがわちゃわちゃしている様子を、いつの間にかその少年が観察していた。
「アルくん…いや、君はゼファーか」
その少年の顔は、先日モニターでチェックしていた少年アルと同じ顔。しかし目の前の彼は別個の存在だと一目でわかった。
「よくわかったね。同じ顔って言われるんだけどね」
「いやすぐわかるだろ。無表情なのがアルくん、お硬そうなのがビィくん、ムッとしてるのがレイちゃん、にやにやしてるのがゼファー。簡単だよ」
「ていうか揃いも揃ってなんでも俺だけ呼び捨てですかいねェ。こんなんじゃ俺アルに頼まれたのに放棄したくなっちまうよ」
アルは先日の怪人騒動で、アカネが怪人に狙われていると思った。けど、生活のためには仕事はしなければならない。というわけでフィリップ伯のもとでぬくぬくしてるゼファーを借りてきたのだ。余計な心配をかけないようアカネには黙って。
「まぁいいか。噂の宇宙海賊。手合わせお願いしたいね」
「…悪いけど、僕は戦いに来たんじゃないんだよね」
「おいおい犯罪者集団の海賊がつれないな。アンタをやって最高幹部を減らさせてもらうぞ」
「そうか、俺がいなくなっても四天王はあと四人いるぞ」
「じゃあお前は何なんだよ!四天王なのに5人かよ!」
「…俺は四天王じゃなかった…?」
「自分を見失うなよ」
「いい加減下ろしてくれない?」
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ちゃぶ台を囲む3人。アカネは義手義足が無いため、座椅子で座位を保持している。ゼファーが持ってきたせんべいを齧りながら、ザグマーがまず謝罪をする。
「いや、落ち着いて話をしたかったからその義手義足を解体したんだけど、後でちゃんと直しますんで。まじで」
「そー。で、何か用なの?」
「そう!僕は君に聞きたいんだ。僕が放った怪人の一人が盗聴した思考の中に君がいた。君のことを良く知る彼は確かラファエル」
「思考盗聴!?」
ネオデビルクロス脅威の技術、思考盗聴にアカネが身構える。
「…アイツが私になにをしたか、知ってるんでしょ。思い出したくもない…!思考盗聴できるなら勝手に盗聴してすぐに帰って」
「生憎、僕ら幹部は一人を除いて思考盗聴ができないんだ。アレは宇宙海賊が作った機械生命体の機能だからね」
ムッとした表情になるアカネを気にせず、続けるザグマーの様子に思考が読めないのかどうかはわからないが、空気が読めないことは確かなようだ。
「君が山賊たちに輪姦され懐胎させられたことは知っている!そしてその子を愛していることも!そしてわからない!なぜ君はその子をそんなにも愛することができるのか!教えてくれ!教えてくださいお願いします!」