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復讐、始めました。  作者: 中島(大)
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75話 告白③

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「地獄って、なかなかアレな言い方だね」

「…ごめん。思考をうまく言語化できなくて…」


 爆発した鉄の箱から燻る煙が空へ昇る。それはまるでアカネの気持ちを象徴している。このお腹の子はアカネの苦い思い出。しかし、それはたった今、同時に幸せの思い出に変わった。たとえ地獄であろうとも、同じ道を歩むと決意したアルの気持ちが、アカネの諦めを覆してくれた。


「ううん、それはその通りだと思うから。いいの?私はもうこうなったらアルくんにめいっぱい甘えるけど」

「どんとこいだよ」

「…ありがと」


 年下の男の子に甘える…これはこれで楽しそう、とちょっと期待をしてしまうアカネだった。

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 ~猫カフェ・七代目 上田屋~


 アルが現在勤務している猫カフェ上田屋は200年の歴史を誇る老舗である。フィリップ伯の紹介でこの名門店での修行ができるようになった。このでの修行は無論名門故の厳しさもあるが、そしてコネでこの仕事に就いたという周囲の目、紹介してくれたフィリップ伯へ迷惑をかけられないというプレッシャーから、アルは人一倍頑張っていた。その努力の研鑽が認められ、今アルは猫さんのお昼ごはんを仕込み中である。


「アル!猫様のお昼ごはん用意まだ!?」

「ハイ!今あがります!」


 上田屋の猫さんの食事は一流の食材を使用している。当然仕込みや調理にも手間暇をかけて御作りしており、今日のお昼ご飯はハモの湯引きである。骨がいっぱいでそのままでは食べにくいハモの身を食べるために生まれたのが骨切りと呼ばれる技術である。これは1mm感覚で骨切りを入れる繊細な技量が求められるまさに職人の技。アルはわずか4時間で上級厨士レベルの骨切りができるようになったため、担当を任されるようになったのだ。


「それにしても最近町で猫見ないよね」

「あちこちで地域猫が姿を消してるらしいな。猫攫いマジなんかな」

「猫攫いに注意するようにって回覧も回って来たし、怖いなぁ」


 最近巷を騒がせているのが猫攫いと呼ばれる不審人物。その情報は老舗猫カフェ上田屋にも回ってきている。さすがに猫カフェにまで突っ込んでは来ないだろうが…とは思う従業員たちだったが、残念ながらそうはいかなかった。


 時は夕刻。秋から冬に変わるこの時期、外はすっかり夕闇に染まる頃、上田屋はそろそろ閉店時間が迫る。猫さんたちもお仕事からの解放を察し、落ち着かない様子だ。客足も上がり、ここまでかと思ったその時、店内に一人の来客があった。


「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」

「…」

「お客様…?」


 その客、明らかに異様だった。顔は目深に被った帽子、目元を隠すサングラス、口元はマスクで見えず、コートの襟を立て一層顔を見えなくしている。まるでコートの中は全裸かもしれないと想像してしまうその風貌。店員たちにも警戒が広がる。


 ぶわっと、その瞬間コートが開く。やはり変質者か!?股間に広がる密林の組成は100%マタタビ!まさに猫の楽園!変質者は股間から大量の粉末を放射する!


「ぎゃあああああああ」

「きたねええええええ」

「うげえええええええ」


 変質者に襲われる女性店員たちの悲痛な叫び!アルは緊急事態発生にすぐさま包丁片手に出撃!そこにいたのは変質者…というより怪人!


「うわーはっはっは!俺は怪人マタタビマン!ここの猫はすべて頂いていく!」


 店内にばらまかれたマタタビで猫たちはドンギマリ!もはや抵抗する力もなくマタタビマンの持つキャリーケースに放り込まれていく!


「させない!」


 アルはその見覚えのある怪人に包丁片手に襲い掛かる!だがマタタビマンの迎撃!マタタビの粉末を固めて圧縮した重量4kgのマタタビ球を股間から思いっきり射出される!それがカウンターの形でアルの下腹部に炸裂!これは痛い、しばらく動けない。従業員たちもサスマタ片手にマタタビマンを拘束しようとするが、その怪人パワーにサスマタはポキポキ折られてしまう。


「さて、噂に聞く花魁猫の龍之介くん(5歳♂)も回収っと。ではさらばだー」

「…!」


 退店するマタタビマンを逃がすまいとアルの作り出した糸がマタタビマンにひっつく。闘気を使って作り上げたインパルス・ストリング!物質化したときはあらゆる物体を引き裂き、霊体化した状態ではあらゆる物質をすり抜け月まで伸びる不可視の糸!当然今回は後者!これぞアルの持つ最強の追跡術だ!

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