71話 老獪、長老の罠③
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「あいつの下駄箱はどこかなぁ…どこだろうなぁ…」
手紙を手に、意中の相手の下駄箱を探す黒森峰の男子学生が玄関をうろうろしていた。黒森峰の制服である学ランを纏うその男子、左耳にはピアスが4つぶら下がっている。髪型は中央部以外を剃り上げ、中央部にはシルバーの逆立つ髪が激しい自己主張をしている。所謂モヒカンと呼ばれるヘアスタイルだ。眉毛も完全に剃り落とし、右目の周囲にはかっこいいイラストが入っている。唇と鼻にもアクセントにピアスが入っている。
「お、あったあった。へへ、ここに気持ちを込めてお手紙を入刀だぜぇ」
目当ての下駄箱の蓋の隙間から、思いを綴った手紙を入刀しようとするモヒカン学生だったが、挿入直前に背後から声がかかる。
「君…君。そこのシルバーのモヒカンの君。そう、君だよ」
王国でも最大の偏差値を誇る黒森峰にしては個性的な彼を呼び止める声。彼は内心心臓がトクントクンと脈打つが、焦ると怪しく見えるので一所懸命平然を装い振り返る。
「えーっと、オレっすか?」
「君、どこの組の者だ?」
「うぇ…!?あの、その、3組っす!さわやか3組!」
でまかせを宣う男子学生。しかし、彼を呼び止めた男、生徒会長は既に確信している。彼が黒森峰の学生ではないということを!
「フフフ、それは嘘だね」
「な…なにを証拠に…!」
「わが黒森峰機械部が作り上げたこの測定器は誤魔化せないのさ」
生徒会長が取り出したのは耳に装着する機械。そこから片目に伸びるクリスタルなバイザーは、測定した対象の戦闘力を映し出すことができるのだ。
生徒会長は測定器を耳にセットし、スイッチを押し込む。ピピピ…と音を鳴らし、バイザー部分に対象…今回は目前のシルバーモヒカン男子学生の戦闘力を映し出す。
「戦闘力5…ゴミめ」
「う…なんでそんなインチキなものを持ってるんだよぅ」
「なぜなら私は生徒会長だからだ。そして君は…カス高の生徒だね」
「ぐぬぬ…だったら何だってんだよ!いいさ殺せ!くっころ!」
黒森峰学生への変装をインチキじみた機械で見破られたカス高生は、腹をくくってその場に座り込む。
「勘違いしてもらっては困るよ。その手紙、ナイトウへの果たし状だろう?」
「え…!?なぜそれが…!頭いいからか!」
「その果たし状は私からナイトウに渡しておこう。それを寄越せば見逃してやる。もちろんナイトウも目当ての場所に送ってやるから安心したまえ」
「え?まじで?じゃあオナシャッス!」
生徒会長に手紙を渡し、彼はそのまま一目散に黒森峰から退散した。
「昼休みにご苦労なことだ。さて、この手紙の内容は…ふむ」
ナイトウへの果たし状を立ち読みする政党会長…を、廊下からのぞき込む学生が一人。
「あのドス黒い悪意…生徒会長だったのか。…よし
図書室から急いでやってきたトッシュは、生徒会長の卑劣な企てを探るべく動きだした。