70話 虎馬 タイガー&バニー②
お姉さま、ミツキの名前をミズキに変更しましたわ
午後6時くらい。ナイトウ宅。
「ナイトォ~…お前ボクの使用済み紙コップで何してたんだぁ~…?」
「んん…!?ご、誤解だナツキ、変なことはしていない!コップの淵をちょっとペロっとしただけで、ちゃんと一回だけで捨ててる…!変態扱いしないでくれ!」
「変態じゃねーか!」
「あひいいいい!ごめごめごめごめ!」
ゴシカァン!ガシャン!ぶりぶりぶりぶり。部屋の外まで響くナイトウとナツキのドタバタ騒ぎを、その外から見守っているのはタイガとバーニィ。彼らは悩んで…否、彼らの中で結論は既に出ている。
「なあ、ナイトウくんに言うのか?」
「…カス高の連中はナイトウくんがケガしてることを知ってるんだ。今なら勝てるとしゃしゃって来たに違いない。…ナイトウくんがやられれば、一般科の生徒がカス高のターゲットになってしまう」
「是非もなしか」
「あぁ。俺たちだけでカス高をやっちまおう。黒森峰はナイトウくんだけじゃねぇってな」
午後10時に、王都の南方、流通団地と呼ばれる倉庫街。そこでカス高の連中が待っている。カス高のボスをはじめ、20人は揃っているに違いない。数の上ではタイガとバーニィの二人だけでは圧倒的に不利だ。
「やれやれ、俺らもボコボコにされてるってのにな」
「言うなよタイガ。タイバニと呼ばれた俺らなら、連中のボスくらいはやれるさ。そうなりゃカス高は次のボスを巡って内乱で自滅するぜ」
「タイバニ…タイガー&バニーか。懐かしいな、西川中時代を思い出すぜ」
「北岡中に殴りこんで番長と裏番やっつけたなぁ。あんときみたいにやってやろうぜ」
「っしゃあ!行くか!」
「応!」
西川中。ゾーア市にあるその中学で、地元最強の武闘派コンビ『タイガー&バニー』として名を馳せていたのがタイガとバーニィだ。パワーだけでなく、勉強もけっこう得意でギリギリ黒森峰に合格するほどの高偏差値を誇る彼らは、力も学力も自分たちを上回るナイトウに1VS2で敗れた。自分たちは井の中のオタマジャクシだと思い知らされ、そしてナイトウに憧れた。
このままではダメだ!夕刻の乱闘で、彼らタイバニは誇りを思い出す。ナイトウに憧れているだけではいつまでたってもオタマジャクシのままだ。このままではナイトウと対等の友達になんてなれやしない。カエルになって、ナイトウの保護から外へ一人立ちしてこそ、友達だと。
誇りと、そして牙を取り戻した彼らは、一路流通団地を目指す。負けるとわかっていても、それでも逃げるのは自分自身の誇りが許さない。ただでは負けない。連中のボスも道連れにしてやる。強い決意でその手の得物を握りしめて。
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~18時間後~
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「お前ら…何やってんだぁ!!」
ナイトウは吠えた。その目に映る友の真っ赤に染まった姿に激昂して。その周囲には二人を赤く染めたカス高連中がいた。